大雨や地震などの災害で広範囲に被害が出たとき、その全体像をいかに早く正確につかむかが課題となります。そこで、空からさまざまなデータを収集して被災者の救助などに役立てようと、ベンチャー企業が動きだしています。
上空から被害情報を取得 データを一元化
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福島県南相馬市に研究開発拠点を置くベンチャー企業「テラ・ラボ」は、航空機やドローンなどを使った新たな災害対策事業を目指しています。
代表は松浦孝英さん。会社は2025年の実用化を目指して、空から集めた情報を一元化するシステムの開発を進めています。
災害が起きた時、速やかに情報を収集して解析する管制室もあります。
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松浦さんたちでは、災害が起きた現場にも実際に駆けつけました。2021年7月に大規模な土石流が発生した静岡県熱海市では、上空から現場を撮影しました。
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開発中のシステムは、撮影した航空写真を、災害発生前の建物や道路などのデータと重ね合わせることができます。被害の把握や速やかな救助活動に役立てようとしています。
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こうしたシステムを自治体などに売り込み、災害対策のコンサルティングなどを事業化する計画です。
ベンチャー企業 代表取締役 松浦孝英さん
「災害で必要なのは迅速さ。今ある現況を、より広く幅広に最短で処理して、それを共有するところまでやらないといけない」
被災地だからこそ 災害対策の「先端的モデル」発信
愛知県に本社がある松浦さんの会社が、南相馬市に拠点を設けたことには理由があります。市が、東日本大震災からの復興に向け、災害対策などに生かせる最新技術を持つ企業の誘致に力を入れているからです。
松浦さんは市の支援を受けながら、システムの運用の実証実験を進めています。
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取材した日、松浦さんは、温度差を表示できる赤外線カメラを大雨による浸水被害の把握に役立てられないか、市の担当者と意見を交わしました。
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松浦さんは「浸水があった場所は水を吸っているので温度が上がっていない。浸水したエリアを可視化することも可能なのかな」と提案。市の担当者は「避難して屋上に上がっている人を判断しやすい。そういう使い方も見えてくるかな」と意見を述べていました。
南相馬市ロボット産業推進室 安藤正太郎 室長
「震災を経験して、どういう状況だった、こんなことがあればよかったとか、知見をうまく発信できれば」
松浦さんの会社は今後、市内を定期的に飛行して、データの取得と解析の精度やスピードを検証していく計画です。
松浦さん
「先端的なモデル自体を南相馬でつくっていく。(このモデルを)全国の自治体で同様に使えないか。これが世界の災害対策を変えていくという認識を持っている」
南相馬市では、取得したデータを、まちづくりの計画など災害対策以外にも活用できるのではないかと期待しているそうです。
(国際放送局 ディレクター 石川正義)
【2022年10月18日放送】
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