福島県でロケット開発 宇宙産業で復興に追い風を

東日本大震災発生から3月11日で11年。福島県では原発事故で打撃を受けた地域の復興を図るため、新たな産業を育てる国家プロジェクトが行われています。

その1つが南相馬市の「福島ロボットテストフィールド」。最新技術を実用化するための実験施設がつくられ、2年前から本格運用が始まっています。2022年2月には、堀江貴文氏が創業した宇宙ビジネスを展開するベンチャー企業が地元企業と新たな事業を始めました。

ロケット開発でタッグ ベンチャー×南相馬の製造業

宇宙ビジネスを展開するベンチャー企業「インターステラテクノロジズ」が21年7月に打ち上げたロケット。23年度までに人工衛星の搭載を目指しています。

この宇宙ベンチャーが22年2月、南相馬市と協定を結びました。地元企業と連携してロケットの開発に取り組もうというのです。

植松千春 社長室長

「(南相馬は)製造業のすそ野が広い。ロケットの製造に必要ないろんな製造業の方々がそろっている」

南相馬はもともと製造業が盛んでしたが、原発事故で多くの住民が避難を余儀なくされました。震災発生から11年、製造業の事業所数は震災前の7割ほどに。地元に戻らない若い世代も多く人手不足は深刻です。

地元の精密部品加工会社 ロケット部品製造参入を目指す

今回のプロジェクトに参加する精密部品の加工会社「小浜製作所」は、1985年創業で自動車部品の製造などで高い技術を誇ってきました。宇宙ベンチャーと手を組むことで会社の成長につなげたいと考えています。

会社はもともと東京電力福島第一原子力発電所の20キロ圏内にあったため内陸側に移転。受注できない時期もあり、経営は一時、悪化しました。

現在は売り上げが震災前の水準まで回復しつつありますが、人材確保が大きな課題になっているといいます。

川岸邦彦社長

「本当に助けていただいて、なんとか今こういう形で再建できている。ただ南相馬市自体が若い世代の方が少なくなってきている。今の悩みはそこがいちばんです」

川岸さんはプロジェクトで、新たに開発するロケットの本体とエンジンをつなぐ部品の製造を担いたいと考えています。部品は打ち上げの成否にかかわる重要なパーツ。アルミを細かく削り、試作品を作りました。

取材した日、ベンチャー企業が試作品の品質を評価するためにやってきました。

試作品を前に「きれいに仕上がっている。きれいすぎる」と笑顔を見せるベンチャー企業の植松さんたち。評価は上々で、川岸さんは「うちの担当も喜ぶと思う。少しでも携われることが本当にうれしい」と話しました。

「夢のある仕事」宇宙産業で街に活気を

川岸さんは宇宙産業に参入できればビジネスチャンスが広がるだけでなく、有望な人材の確保ができると期待しています。

川岸社長

「ロケットを製造する企業が南相馬市の中でもあるんだよと知ってもらうことで、子どもたちが夢のある仕事ができる。南相馬市自体が活気あふれる街になっていくんじゃないか」

今回のロケットプロジェクトには地元から5社が参加しています。被災地と宇宙ベンチャーの新たなタッグから生まれる可能性に期待したいと思います。    

(福島局 記者 潮悠馬)

【2022年3月11日放送】