木曽漆器の新たな挑戦 異素材とのコラボでアクセサリーに

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長野県の伝統工芸品「木曽漆器」。売り上げが減少する中、革の財布からバイクまで、さまざまな「異素材」に漆を塗る技術を開発しています。新たに取り組んだのが漆を塗ったガラスのアクセサリー。1年がかりで開発しました。

実は漆塗り ガラスのピアスやイヤリング

発売されたばかりのガラスのアクセサリー。茶色に透けて見えるところには、実は漆が塗られています。独特のつやがあるのが魅力です。

開発したのは、長野県塩尻市で漆器店を営む小坂玲央さんです。

アクセサリーを開発した小坂玲央さん

丸嘉小坂漆器店 小坂玲央さん
「お客様に手に取ってもらえるものを増やしていかないといけない。もっと若い人、特に漆器を知らない、漆を知らない方々に漆器製品を届けたい」

出荷額3分の1に 顧客開拓へ異素材とコラボ

塩尻市の木曽平沢地区には約100軒の木曽漆器の店が軒を連ねています。しかし、生活様式の変化などで出荷額は最盛期の3分の1ほどに落ち込んでいます。

地区につくった学校「木曽高等漆芸学院」でも職人を目指す若者が減っています。伝統工芸を継承していけるか、将来への危機感が高まっています。

新たな顧客を開拓しようと、地区では、皮やガラスなどさまざまな新しい素材に漆を塗る技術を開発してきました。

漆塗りの大型バイクも誕生しました。金属のタンクやハンドルにも漆が塗られています。

アクセサリー開発 2種類の筆で課題をクリア

小坂さんの工房でもガラスの食器に漆を塗った製品を開発してきました。しかし、コロナ禍で店を訪れる人が減少。苦境を乗り切るために取り組んだのがアクセサリーの開発でした。

これまでもガラスに漆を塗る技術は持っていたものの、アクセサリーのような小さなガラス玉に塗るのは初めてで、当初はつなぎ目がムラになってしまいました。

そこで極細の筆と平たい筆を組み合わせることで、開発開始から1年がかりで完成させました。

極細の筆でガラス玉のつなぎ目を丁寧に塗っていく

手に取ってもらいやすいよう価格は1万円前後にしました。また通信販売でも買ってもらえるようホームページのデザインにこだわりました。

迎えた販売初日。来店した女性客の1人が「すてきです」とアクセサリーを購入。「(漆のアクセサリーは)初めて。すごく新鮮で毎日使います」と話しました。また別の客は「(値段が)高いとか敷居が高い感じがあったが、ふだん使いできそう」と話しました。

漆器店経営 小坂さん
「まずは使い手に気に入っていただく。いろんな方々に手に取ってもらえる場所を増やしていきたい」

この地区では漆器を手に取って魅力を知ってもらいたいと、漆器の貸し出しも始めています。サービスの名前は「かしだしっき」。高級な漆器を数百円で借りることができるそうです。
(長野局 記者 川村允俊)
【2022年10月7日放送】
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