BCPとは・・・ あなたの企業は?どうやって作る?

地震や水害で企業が被災すると、企業そのものが存続の危機にさらされるだけでなく、地域にも大きな影響がでます。一方で、BCP(事業継続計画)の策定率は全国で2割弱(2022年・帝国データバンク調査)。BCPがなぜ必要なのか、どう考えて作ればいいのか。
目次
BCP(事業継続計画)とは?

BCPとは、Business Continuity Planの略で、企業などが「自然災害や感染症など緊急事態が発生した際、重要な事業を継続させること、もし中断しても可能な限り短い期間で復旧させるための方法や体制を示す計画」のことです。想定される事象は災害だけではなく、感染症やテロ、システム障害なども含まれます。また、人命の保護を目的とした「防災計画」とも異なり、目的は「事業の継続」となります。
策定は法律で義務づけられているわけではありませんが(介護事業所では、2024年4月からBCPが義務化)、大規模な災害が発生するとサプライチェーン(製品の供給網)が破綻し、自社だけでなく全国の企業にも大きな打撃となるため、必要性が叫ばれています。 実際に過去の災害ではサプライチェーンへの影響が出ています。
BCPを作る 考えておくべきこと
では、BCP策定において、企業はどのようなことを考える必要があるのでしょうか。
それは、「守るべきもの」を事前に決めておくことです。

✅従業員の安全最優先でルール作り
BCPは人命の保護を目的とした防災計画と異なりますが、実は事業継続においても最も大切なのは従業員の命と安全の確保です。当然のことですが、従業員がいなくなったり、長期間働けなくなったりすれば事業自体の継続は難しくなります。
企業は、従業員に対し「安全配慮義務」を負っています。しかし、具体的なルールは定められておらず災害時に従業員をどう出社・帰宅させるかはそれぞれの会社で判断するしかないのが現状で、過去の災害では従業員が仕事中に命を落としてしまう事態も発生しています。仕事中はもちろん、出社や帰宅も含め、災害時のルールを作っておくことが重要です。
✅重要業務の選別・方針作り
仮に被災し、平時のように100%の業務が出来ない場合でも、自分の会社にしかできない重要な業務、会社を存続させるために優先的に行う業務を選別しておく必要があります。また、サプライチェーンの破綻を防ぐために、取引先が被災した場合の業務のあり方や方針を考えておくことが大事です。
✅地域貢献の方針作り
多くの企業は雇用や消費など、地域との関係性が深く、企業ダメージは地域へのダメージにもつながります。災害時には地域住民への施設の開放や物資の提供、復旧・復興作業への協力など何が出来るのか、平時のうちに考えておく必要があります。
「BCPをつくろう!」ガイドブックはこちら

NHKでは、BCP策定のはじめの一歩に使えるガイドブックを、専門家とともに作りました。会社、そして従業員みなさまの命と暮らしを守るために、ご活用ください。
BCP 参考になる事例を紹介
過去の災害時などには、事前の備えが役立った事例があります。また、いざという時に備えてBCP作りを進めている企業も。事例をBCP策定の参考にしてください。
「70人の従業員を守る」宮城県の水産加工会社

2011年、東日本大震災の発生で大津波警報が。この会社の社長は従業員に、高台の体育館に避難するよう指示を出した。避難中、ある行動を起こそうとした従業員を、社長は体を張って必死で止めた・・・。
「静岡×北海道で災害乗り切る」静岡県の機械メーカー

南海トラフ巨大地震で設備が壊れたら・・・。業務がストップするリスクを回避するため、静岡県の会社が連携しているのは北海道の会社。 どうやって1000km以上離れた会社と連携を深めたのか?
「震災発生翌日に弁当を販売」仙台市の弁当製造販売会社

東日本大震災で被災し停電や断水でライフラインが途絶えたが、震災翌日には3000食の弁当を販売。その後1日も休まず弁当を製造し、被災地に提供し続けた会社はどんな備えをしてきたのか?
⇒「震災発生翌日に弁当を販売」はこちらで(NHKアーカイブス)
「ビール工場が住民の避難所に」仙台市のビールメーカー

東日本大震災で 「津波避難ビル」に指定されていたビール会社の工場には、近くの住民100人以上が避難してきた。自衛隊の救助が来るまで一夜を過ごす中、住民の命を守るために従業員たちはどう対応したのか?
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