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「特別警報」命に関わる非常事態 正しく理解を

気象庁の「特別警報」。平成30年7月の「西日本豪雨」で発表されるなど、ことばをご存じの方も多いと思います。通常の警報と何が違うのか、どんなときに発表されるのか、発表されたときどう行動すればいいのか。命を守るために重要なこの情報について、詳しく解説します。(社会部記者 森野周・内山裕幾)

「特別警報」とは

平成30年7月の「西日本豪雨」。西日本を中心に川の氾濫や土砂災害が相次いで、犠牲者は200人を超え、平成で最も犠牲者が多い風水害となりました。この時、11府県に出されたのが大雨の「特別警報」です。

西日本豪雨災害 (左上 右上:岡山)(左下 右下:広島)

「特別警報」は気象庁が平成25年8月に導入しました。通常の「警報」の基準をはるかに超えるような重大な災害が起こる危険性が非常に高い時に発表されます。「多くの命に関わる非常事態」になっていることを端的に知らせるための情報です。

これまでの災害では、「西日本豪雨」のほか、平成29年7月の「九州北部豪雨」、平成27年9月に茨城県の鬼怒川の堤防が決壊するなど大規模な浸水の被害が出た「関東・東北豪雨」などで発表されました。平成31年4月1日現在、8回発表されています。

(左)九州北部豪雨 (右)関東・東北豪雨

なぜ、通常の「警報」だけではだめなのか

導入の背景には過去の大きな災害の際、「大雨警報」や「土砂災害警戒情報」など従来の防災情報を繰り返し発表しても避難や被害防止に結びつかなかった教訓があります。
特に、平成23年の「紀伊半島豪雨」では各地で総雨量が1,000ミリを超える記録的な大雨になりましたが、地元の自治体からは「雨量の数値だけを聞いてもどのくらい危険な状態なのかがわからなかった」という意見が相次ぎました。

気象庁は強い危機感をわかりやすく伝え、身を守ってもらうために平成25年、法律を改正して「特別警報」の新設を決めました。

「特別警報」は災害の種類ごとに発表されます。
気象分野では「大雨」「大雪」「暴風」「暴風雪」「波浪」「高潮」の6種類です。

「50年に1度」で発表

「特別警報」が発表される「重大な災害の危険性が非常に高い」とはどのような状況なのか。それは、「その地域で50年に1度あるかないかの現象」が起きている場合、または予想された場合です。

「西日本豪雨」「九州北部豪雨」などの大雨以外にも、台風で重大な災害が予想される場合、接近する前に暴風や高波、高潮のおそれがあるして発表されることもあります。これまで沖縄県で2回発表されているほか、過去の台風災害では東海地方が高潮に襲われ、5,000人を超える犠牲者が出た昭和34年の「伊勢湾台風」が該当します。

伊勢湾台風

「特別警報」に該当する災害では多くの場合、甚大な災害につながっています。国の調査では大雨の特別警報が出た市町村のおよそ51%で被害が発生しました。「特別警報」は、全国的に見ても、1年に1度あるかないかの極めて“まれ”な現象で、発表された場合は最大級の警戒が必要なのです。

「特別警報」2つの問題

一方、私たちが避難などの行動につなげるために、大雨の特別警報には2つの大きな課題があることを知っておく必要があります。

1つは重大な災害につながる大雨でも発表されないケースがあることです。
例えば、39人が犠牲になった平成25年の伊豆大島の土砂災害、77人が犠牲になった平成26年の広島市の土砂災害では特別警報は発表されていません。

(左)伊豆大島 (右)広島市

西日本豪雨でも、愛媛県では肱川の氾濫など大きな被害が出た7月7日の時点で、特別警報は発表されていませんでした。(翌日の8日に発表)。
理由は、特別警報が府県単位など、ある程度の広がりがある地域で、大規模な災害のおそれがあるときに発表されるからです。重大な災害につながる大雨でも狭い範囲だと判断された場合は発表されないケースも多いのです。

もう1つの課題が平成29年の「九州北部豪雨」のようなケースです。
気象庁は午後5時50分ごろに福岡県に、午後8時前に大分県に大雨の特別警報を発表しましたが、実は発表した時点で、すでに各地で川の氾濫や浸水の被害が広がっていました。特別警報が発表された段階で状況が悪化し、危険な状態に陥っているケースもあるのです。

九州北部豪雨

この2つの課題から言えることは、大雨の際に「特別警報」の発表を待っていては、身の安全を確実に守ることは難しいということです。

結論 「特別警報発表前」に行動を

それでは、命を守るために何が大事なのか。
それは「特別警報」を待つのではなく、早めの避難を心がけることです。
ことし運用が始まる国の防災情報を5段階のレベルに分ける取り組みのうち、大雨の情報を例に説明します。この中で特別警報は最も高い「レベル5」とされています。

この前に4つの段階があります。
レベル1とレベル2。数日以内に大雨が予想される段階や大雨の注意報が出される段階です。
レベル3。大雨の「警報」が出されます。自治体の「避難準備の情報」もこの段階で出され、「高齢者などの早めの避難」が必要だとされます。
レベル4。土砂災害の危険性が非常に高くなり、「土砂災害警戒情報」が発表されます。各市町村はこうした情報が出た段階で、「避難指示」や「避難勧告」を発表します。
注意が必要なのは「レベル5」、つまり特別警報の発表される段階は、すでに災害が発生している状況であるとされていること。

つまり、警報などの情報が発表された「レベル3」や「レベル4」の段階から早めに安全な場所に避難しておくことが身を守る上で最も重要なのです。

「特別警報」があるからと言って通常の警報が軽いわけではありません。「まだ『特別』じゃないから、大丈夫」という誤解は非常に危険です。「特別警報」が発表される前に避難を完了しておくようにしてください。

しかし、どうしても避難が間に合わず特別警報が発表される状況になった場合、いま置かれている環境の中で「できる限り安全を確保する」ことが必要となります。
周りを確認して、外へ避難ができる状況であれば、直ちに避難所などの安全な場所へ避難してください。ただ、周囲で浸水が始まるなど外に出るのが危険な場合は、頑丈な建物の2階以上に上がるなどの行動をした方が、助かりやすくなる場合もあります。

さらに大事なこと 「事前の準備」を

命を守るために、さらに大切なことがあります。事前の準備です。

自分の住む場所などがどのような災害の危険があるのか、どこに安全な避難場所があるのかを日ごろから確認しておくと、いざというときの行動につながります。

こうした情報は、地元の自治体の防災マップなどで確認できます。その上で、台風や大雨などの際には、テレビやラジオ、インターネットなどで「警報」など最新の情報を確認し、避難につなげてください。

災害から命を守るうえで、「特別警報」は万能ではなく、防災関係者の間では「最後の一押し」と呼ぶ人もいます。大事なのは「最後の一押し」の前に安全を確保しておくことです。

どのような情報が発表されれば危険が迫っているのか、改めて確認し、早めの避難や行動を心がけてほしいと思います。

森野 周
社会部記者 災害担当
森野 周
内山 裕幾
社会部記者 災害担当
内山 裕幾