“日本は本番に強い”
ワールドカップ開幕前の8月、日本代表がイタリアで直前合宿を行っていたときのこと。
練習を終えたリーチ選手は、上半身裸になってバスケットボールコートで体を動かしていた。
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そして、近くにいた私たちに近寄ってきてあいさつを交わし、去り際にこう言った。
リーチ マイケル選手
「日本は本番に強いから」
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その頃、日本は、直前のテストマッチでイタリアにダブルスコアで敗れ、不調に苦しんでいた。
それでもリーチ選手の表情は自信たっぷりに見えた。
そのことばどおり、日本はワールドカップで試合のたびに調子を上げてきた。
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リーチ選手も、初戦のチリ戦、3戦目のサモア戦でトライを決めるなど大活躍。
ここまでの3試合はほぼフル出場し、チームを引っ張っている。
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アルゼンチンとの「10.8」決戦を前にしたインタビューでは、チームの成長と自身の調子のよさを強調した。
「チームとして初戦のチリ戦から成長できています。その点をポジティブに捉えています。個人的にも調子がよく、ゲーム全体を通してよりたくさん動くことができています」
意識してきた運動量
好調の背景には、けがを乗り越えてからこだわってきた運動量への意識がある。
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4大会連続のワールドカップ、そして過去2大会ではキャプテンを務めたリーチ選手だが、実は2019年の前回大会以降は満身創痍の状態だった。股関節を手術するなど、一時は引退を考えるほど追い込まれていた。
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それでも“ベスト8で敗れたワールドカップで雪辱を果たす”と必死のリハビリを続け、昨シーズンのリーグワンに「絶好調」といえる状態で戻ってきた。
スタミナを強化するため、練習後も居残りでひたすらタックル練習を繰り返す。
疲労がたまっても、強く、激しく、当たり続けられる体を作ってきた。
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そして、34歳で臨んだ昨シーズンのリーグワン。
ボールを持って前進した回数はリーグ最多の196回。
本人も「奇跡」と語る復活を遂げ、ワールドカップに臨んでいる。
「本当に不調で、まさかここまで復活すると思っていませんでした。手術したあとに、なかなかやりたいプレーができなくて、ラグビーをやめようと思っていました。それでも、どうにかして頑張ってここまで来られたことは本当に奇跡だと思います」
いざ「10.8」決戦 アルゼンチン戦へ
アルゼンチンとの「10.8」決戦を前にした10月7日、リーチ選手は35歳の誕生日を迎えた。
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大会期間中にワールドカップ通算出場試合を「16」に伸ばし、トンプソン ルークさんが持っていた14試合を更新して、日本代表として歴代単独最多となった。
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15歳のとき、ニュージーランドから来日した78キロのきゃしゃな体つきの少年は、およそ20年のときを経て、いまや日本代表として唯一無二の存在となっている。
リーチ選手は、みずからの歩みを「不思議な感じ」としつつも、さらなる高みを目指して「10.8」決戦での勝利を誓う。
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リーチ マイケル選手
「自分がどこから来たのか、いまどこにいるのかを振り返ると、それはすばらしい旅であり、その旅はまだ終わっていません。いまはアルゼンチン戦に向けてワクワクしています。この試合は日本が新しい歴史を作るチャンスです。海外で開かれたワールドカップで日本はベスト8に入ったことがないので、まずはそれを達成したいです。ディフェンス面が大変になると思いますが、自分たちのやるべきことをしっかりやっていきたいです」
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※豆知識※ プロ野球「10.8決戦」とは
1994年(平成6年)10月8日にナゴヤ球場で行われた、プロ野球 セ・リーグの優勝をかけた中日と巨人の一戦。69勝60敗の同率首位でシーズン最終戦を迎えた。
巨人・長嶋茂雄監督(当時)が「国民的行事」と語った試合は、巨人が6対3で勝って優勝を決めた。中日の監督は高木守道 氏(当時)。