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“平尾誠二の思いを実現していく”日本ラグビー協会 土田会長

「彼の思いを実現していく」

そう語るのは日本ラグビー協会の土田雅人会長(60)です。

「彼」とは、盟友で53歳の若さで亡くなった「ミスターラグビー」平尾誠二さん。大学の同期で、その後も常に土田会長の相談相手でした。

9月にフランスで開幕するラグビーワールドカップまで、およそ5か月。前回大会、自国開催で盛り上がりを見せた日本に、さらなるムーブメントを起こそうと、土田会長は平尾さんの思いを胸に刻んでいます。
(スポーツニュース部 記者 小林達記)

目次

    W杯フランス大会まで5か月

    ラグビーのワールドカップは、ことし9月8日にフランスで開幕します。

    2022年10月 ニュージーランド戦

    前回の日本大会で史上初のベスト8進出を果たした日本代表は、それを上回るベスト4進出を目指しています。

    前回大会からチームを率いるジェイミー・ジョセフヘッドコーチのもと、日本代表は昨シーズン、イングランドやフランス、それにニュージーランドといった強豪とのテストマッチを重ねてきました。

    Q.ワールドカップを控えた心境は?

    日本ラグビー協会 土田雅人 会長

    (土田雅人 会長)
    「本当にワクワクしています。ジェイミー・ジョセフヘッドコーチが8年目を迎え、いまチーム自体は本当にいいチームになってきています。コロナの影響で試合ができない期間もありましたが、去年はフランスと3試合、オールブラックス、イングランドと試合をしました。負けはしましたが、いい戦いでした。ただ、イングランド戦のように8万人の観客が入るアウェーになると、ホームだった日本大会のようにはいかないことを目の当たりにしました。やっぱり怖さはあると思っています」

    Q.1次リーグは、イングランドやアルゼンチンといった強豪と同じグループ。今の日本代表の実力をどう見ているか?

    日本代表 リーチ マイケル選手など

    (土田雅人 会長)
    「競れば互角に戦えるチャンスはあると思っています。スクラムとラインアウト、キックオフが安定すれば本当にいいゲームができる。ただ去年のイングランド戦のようにスクラムで押されると40点、50点と差をつけられてしまう。まだまだ安定感がない。ジェイミー・ジョセフヘッドコーチはじめチームスタッフはわかっているので、9月の試合までに仕上げてくれると思います。特にセットプレーからのサインプレーはいま、トニー・ブラウンコーチがいろいろ作戦を練っていると思います」

    Q.2015年、2019年のワールドカップと比較すると今の日本代表はどうか?

    ラグビーW杯で初のベスト8進出(2019年 日本大会)

    (土田雅人 会長)
    「2015年の時は、エディー・ジョーンズヘッドコーチのもと、すごく練習をしていましたが、リザーブの選手が出てくると力が落ちました。2019年はリザーブぐらいまでは力がありましたが、新しい選手が出てくるまでの力はなかった。今回はだいぶ新しい選手も出てきましたね。スタンドオフの李承信選手は去年の時点で、まだ21歳ですか。彼は本当にすばらしい活躍をしていました。去年はこういう選手をかなり使いました。キャップ数が10未満の新しい力と、堀江選手やリーチ マイケル選手のような多くのキャップを持つベテラン選手が混ざり合った、いいチームになることを期待しています」

    Q.ワールドカップ1次リーグの4試合、どんなイメージを持っているか?

    (土田雅人 会長)
    「初戦のチリ戦をいい形で勝つことが重要だと思います。試合の間隔が空くスケジュールになっているので、休息はとれると思います。相手を見てどういう戦い方をしていくか。ジェイミーヘッドコーチとトニー・ブラウンコーチが一生懸命、戦略を考えている。ここが彼らの得意なところだと思うんですよね。強みを出せれば本当にベスト8、ベスト4に行くんじゃないかなと思っています」

    ワールドカップ再招致は?

    日本ラグビー協会は、ワールドカップを再び日本で開催しようと、ラグビーの国際統括団体、ワールドラグビーなどにアピールを続けています。

    2月にはワールドラグビーのビル・ボーモント会長が来日し、日本で再びワールドカップが行われる可能性について「もう1度、開催できないという理由はどこにもない」と述べ、期待感が高まっています。

    (土田雅人 会長)
    「2月にはワールドラグビーの方々と本当にいろいろな話をしました。いまは世界中のラグビー協会の会長や、CEOと会って日本をアピールし、世界における立ち位置を確認しているところです。忙しいですが日本ラグビーの発展のためには必要なことだと思っています。世界のいろいろなところに行くと『日本大会は本当にすばらしい大会だった』『日本のおもてなしがすばらしかった』とみんなが言ってくれます」

    Q.2035年以降のワールドカップ再招致、可能性は?

    (土田雅人 会長)
    「そう言っていかないと来ないですよ。2031年がアメリカで、早ければ2035年。今回、フランスは2007年に開催して、16年後の2023年に開催する。フランスはいま、プロラグビーがすごく発展している。地方のチームの試合でもフルに観客が入る。こうなったのは次のワールドカップが来ると16年間盛んに言ってきたからです。日本もそうなるためには、2019年の開催から16年後にやるべきだと言っていかないといけない。応援してくれる人を作っていくためにも『2035年に来るかも』と発信していくべきだと思っています。応援団が必要です」

    盟友 平尾誠二さんへの思いを胸に

    同志社大で大学選手権3連覇 平尾誠二さん(1985年1月)

    土田会長は、2016年に53歳で亡くなった「ミスターラグビー」平尾誠二さんと同志社大の同期です。

    苦楽をともにしてきた平尾さんの存在が、いまも会長の支えになっているといいます。

    日本代表で主将・監督も

    (土田雅人 会長)
    「2015年に協会の理事を拝命したわけですが、そのときは大学の同期の平尾誠二から『一緒にやってくれ』と言われて。僕はその時サントリーフーズの社長をやっていたので無理だと言いました。だけど平尾から『自分が一生懸命やるから支えてくれ』と言われたので、一緒にやるつもりでラグビー協会に入りました。でも彼は2016年に53歳で亡くなるわけです。亡くなるまでの1年間、彼と一緒に闘ったような形で病院を行ったり来たりしたりしていました。亡くなる最期まで彼は『ジェイミー・ジョセフどうだ』とか『試合見てどうだ』とずっと言い続けていたんですね。そういう意味では彼の思いを実現していくことが、私の仕事のひとつかなと思っています」

    Q.改めて土田会長にとって平尾さんはどんな存在か?

    平尾誠二さん(2013年 撮影)

    (土田雅人 会長)
    「本当に高校3年ぐらいから、ずっと苦楽をともにして、遊びもラグビーも仕事の時も、何かあるたびに一緒に相談しながらやってきました。自分がいきなり『監督やれ』と言われてサントリーの監督をやった時も、平尾に相談しに行きました。彼には何でも話ができたし、彼も私に相談してきた。そういう意味では、人生の友なんですよね。彼が2015年に私を日本ラグビー協会に誘ったのは、彼がいずれ会長になって私がそれを支えていくためなんだろうなと思っていました。本人は、そんなこと言ってないですけど、そういう思いで私も手伝ってきた。本当は彼が元気であれば、彼が会長をやって、僕は支えていたんだろうなと。ジェイミー・ジョセフヘッドコーチを選んだのも僕と平尾だし。日本代表を強くしていこうって、ずっとやってきた感じですね」

    会長として成し遂げたいこと

    Q.土田会長は日本ラグビー界をどのように導いていきたいか?

    (土田雅人 会長)
    「いちばんは、もう1回ワールドカップを日本に持って来ること。そのために代表が強くなる、オリンピックに出て7人制が活躍する、こういう環境をまず作っていきたいと思っています。いちばん大事なのは稼ぐ力。日本では、いま普及で年間2億円ぐらいしか使ってないんです。それがヨーロッパでは20億円、30億円を子どもたちへの普及のために、ファンを作るために使っているところもある。そういう意味では、まだまだ勝てない。そのぐらいやっていかないといけないと思っています」

    Q.ラグビーが文化として日本に根づくには、どんなことが必要か?

    (土田雅人 会長)
    「見にくる人、やる人が増えることだと思います。サッカーがお手本ですけど、各エリアでラグビースクールだったり、シニアの試合をやって、その試合を見にくる。おじいちゃん、おばあちゃんと、お孫さんが見にくる。そういうシーンを作っていきたい。そのためには地域にラグビー場があって、そこにみんなが来る。サッカーに30年ぐらい遅れていると思っていますが、いまはスクールを持ったり、小学校にボールを寄付したり、そこで小学生に教えたり、スタジアムを造ろうとしているチームも出てきています。協会とすれば、もっと地域でそういう事ができないかなと思っています」

    日本代表 ジェイミー・ジョセフヘッドコーチと

    Q.リーグワンの試合を観戦する子どもたちが増えた印象がある。

    (土田雅人 会長)
    「まだ2シーズン目で手探り状態のチームもあります。頑張っているチームは、どうお客さんに来てもらおうか考えながらやっている。トップリーグの時は1万人入っても半分が企業で『来てください』と言って、無理やり入れていた試合も数多くあったと思います。でも今は、チケットを売って子どもたちにも来てもらう、創意工夫して、いろいろなイベントをやり始めている。いま勉強中だと思います。Jリーグが30年かかったことを、いかに早くやるかが勝負だと思っています」

    日本ラグビー協会 土田雅人 会長

    Q.土田会長の夢は?

    (土田雅人 会長)
    「ラグビーのおかげでいろいろな国に行けたし、いろんな人にも会ったし、平尾にも会うことができました。そういう意味で恩返ししたいという思いで会長になりました。ラグビーが日本に根づくように、もう1回ラグビーワールドカップを持ってくる。もう1回ベスト8以上に入る。最高はやっぱり優勝です。そのための組織を作って、マネジメントをしていきたい。世界一のラグビー協会になって、世界一のチームを作りたいですね。ここからの私の努力だと思っています」

    日本代表