《ジョセフHC・日本ラグビー協会 岩渕専務理事に聞く》
ジョセフ ヘッドコーチ 新年の意気込み【一問一答】
前回大会で日本をベスト8に導き、今大会もチームを率いるジェイミー・ジョセフヘッドコーチに新年の意気込みを聞きました。
Q.2023年、いよいよワールドカップイヤーを迎える。
A.ワールドカップに向けてチームは非常にいい方向に向かっていると思っています。選手たちはリーグワンを戦っていますが、本当にやる気に満ちあふれています。
今シーズンは自分たちが与えたフィードバックを生かして、それをリーグワンでしっかりと出してもらいたいです。
そして6月、7月、8月と合流したときに選手たちが成長している姿を見てワールドカップに向かっていきたいと思っています。
Q.チームの課題を克服していくために今後どうしていくか?
A.2022年シーズン、選手たちは※ティア1のチームと数多く対戦し本当に成長したし、特に若い選手たちにとっては、とてもエキサイティングなシーズンになったと思います。
(※「ティア1」=世界の強豪10チーム)
ただ、私たちは強豪チームに比べてフィジカルの部分では足りないところもあります。それを克服するためにも高い強度の試合をたくさんしていくことがとても重要です。
リーグワンでも高いレベルの試合をしていくことが代表チームにとって大事だと思っています。
今後、数多くのテストマッチが組めないことを考えると、そこの部分が一番のチャレンジになると思っています。
Q.リーグワンで選手たちに期待したいことは?
A.日本代表ではないチームでプレーして、もちろんコーチも違う。各チームに散らばるのでスタイルも違うと思いますが、そこの中で選手たちがしっかりそのチームに対応していかなければいけないと思っています。それは日本であっても世界のどの国でも同じだというふうに思います。
その中でも求められるスキルやベースは今までと変わらないので、1つか2つここはしっかりやらなきゃいけないという部分をしっかりとワールドカップまでやっていくことが重要だと思っています。
私たちスタッフは外から観察していきたい。そして日本代表に戻ってきたときには、また私たちからも指摘できればと思っています。
Q.日本代表のラグビーというのはどういうものか?
A.スキルやフィットネスを使っていくという部分はうまくいっていると思いますし、そこは一貫性を持って変わってないというふうに思っています。
ラグビーのレベルは高いところにあり、アタックの部分に関しては、昨シーズン、テストマッチのなかでしっかりチャンスを作れることを証明できたと思っています。
ただフィジカルの部分では、まだ体の大きい相手に対してもっともっと成長していかなければいけないと思っています。
ディフェンスの部分が自分たちにとってのチャレンジです。11月のイングランド戦がそうだったように、スクラム、ラインアウトのところでプレッシャーを感じてしまう。
特にスクラムのところでプレッシャーを感じてしまい、フィジカルの部分で受け身になってしまいました。そうなるとなかなか自分たちの勢いを作っていくことが難しくなってくると思っています。
Q.チームはワールドカップでベスト4を目指していると思うが、そこに向けての自信は?
A.自分たちとしてはそこを目指していかなければいけませんが、まずはしっかりとベスト8に入らなくてはいけないと思っています。
しっかりと1試合1試合、いい試合をしていくということ。
そして、まずしっかりベスト8に行くということを目指して頑張っていきたいと思っています。
日本ラグビー協会 岩渕専務理事 新年の意気込み【一問一答】
選手の強化や競技の普及など日本ラグビー界のかじ取りを担う日本ラグビー協会の岩渕健輔専務理事。新年の意気込みやワールドカップイヤーの展望、さらにはラグビー界の未来についても聞きました。
Q.ワールドカップイヤー、日本代表が勝っていくために一番重要なポイントはどこになるか?
A.選手やスタッフにはいろいろな考えがあると思うんですけど、2015年や2019年のワールドカップを見ても、一番大切なのは選手のメンタル面でのピーキングだと思っています。
2015年も2019年も直前までの試合の結果は前向きではなかったですが「自分たちはやれる」というメンタル的なコンディションが徐々にいい流れになっていったという部分があります。
今回のワールドカップはアウェー開催なので、特に前回と違って移動もあるし環境も大きく変わる。そういう意味でメンタル的なコンディションがピタッと合っていくかがすごく大事だと思っています。
選手は間違いなくいいトレーニングをするし、スタッフもいい準備をするだろうし、そういう意味での心配というのは全然していません。
一番はチームとしてのメンタル面がいかに充実していくかなので、空気感みたいなものをいっしょになって作っていくことが大切だと思っています。そのために協会としてのサポートをしっかりしていきたいです。
Q.2022年はワールドカップに向けて強豪とのテストマッチも経験した。
A.ジョセフヘッドコーチともずいぶん話をして、2022年はとにかくゲームをしっかり行って2023年に向かっていこうという方針でした。ジョセフヘッドコーチは「タフな1年にしたいんだ」と私にも言っていました。
そういった意味では強豪チームと望むようなスケジュールでゲームが組めました。当然勝ち負けについてはいろんな課題もあるし、内容についてもいろんな反省があります。
ただ、大きな意味でのプログラムとしては、代表チームとして年間11試合を行い、選手起用などを含めて前向きにできたと思っています。
Q.一方、2022年は※ティア1のチームとのテストマッチで、なかなか勝つことができなかった。そこをどう捉えているか?
(※「ティア1」=世界の強豪10チーム)
A.昨シーズンはフランス、ニュージーランド、イングランドと、トップ10に入るチームと5試合のテストマッチを行いましたが勝利することはできませんでした。当然いろんな反省はありますし、プログラムの中身を分析して前に進もうとしています。
強豪チームに勝つのは簡単ではないと認識しながらも、今後われわれとしては強化の体制をしっかり作って代表チームを支え、その結果をシビアに見ていける状況を作っていく必要があると思っています。
それは何かというと、毎年のように昨シーズンのようなプログラムを組んで強豪に勝っていくというのを当たり前にしたい。昔だったらフランスだ、ニュージーランドだといったチームと対戦となると「勝ったらいいね」という目線で見られていたと思うんですけど、今は「勝ってないよね」という見方になる。
そういう意味でシビアにご覧頂けるようなレベルにまでなってきているというのは、いい意味で日本のラグビーが前に進んでる証拠だと思います。
ここから先は戦績をシビアに見ていく仕組みとか環境を作っていくってことが大切だと思っています。
Q.世界と比較してどこが足りないなと感じたか?
A.圧倒的にそういったシビアな目で見られる環境、シビアな戦績が求められる環境がまだまだ少ないと思っています。
ヨーロッパの強豪チームは年間10試合程度必ず厳しい目で見られる状況があるわけですよね。結果によって例えばヘッドコーチがどうなるとか、チーム全体、協会はどうなんだと見られる環境がある。
毎年ここで必ずこういうタフなゲームがあって、そこでの勝ち負けが今後のチーム運営につながる、シビアに評価される。そういったカレンダーや環境を作っていくというのが必要だと思っています。
Q.ワールドカップに向けた強化を考えると、今シーズンのリーグワンがかなり重要になると思う。ただ、世界の強豪チームがふだん戦っているレベルから落ちる部分はないか。強化の面で不安な点や課題は?
A.そもそも2019年のワールドカップが終わったあとに、リーグワンに踏み切った一番の理由は、今まさに言っていただいたように、今後ずっとサンウルブズをやり続けるのが難しいといった面もあります。本当に世界一を目指すには国内リーグのレベルを高くすることが間違いなく最重要になります。
サンウルブズ的な強化とか、2015年、2019年までにやっていたようなスタイルの強化というのを未来永劫続けていくのは難しく、そうした短期的、プロジェクト的な強化ではなく、本当に腰を据えた強化をしていかなければいけない。
そのためには国内リーグのレベルを高めることが大切です。そこでの試合やトレーニングがナショナルチームのレベルと差がなくなり、極端な話、リーグワンの決勝がワールドカップの試合と同じような強度にできるかというのが今後の日本のラグビーの大きな課題だと思っています。
現時点で言えば、おっしゃるように、例えばイングランドのトップの試合とリーグワンのトップの試合は差があるかもしれませんが、リーグワンには現在、世界トップの選手たちが来て、世界トップの指導者が来て、確実に以前のトップリーグから大きく進化しています。
おそらく1試合とか2試合の短期的な試合であれば、スーパーラグビーのチームとか、プレミアシップのチームにリーグワンのチームが勝つことは十分起こりうると思っています。そこの差というのはどんどん縮まってきてますし、現時点で私自身は悲観していません。
Q.今回のワールドカップに向けた強化は10年、20年、30年先を見据えたときの一歩目とも言えるか?
A.そうですね。リーグワンに踏み切って、今、代表チームがなんとか世界のトップのチームにもうちょっとで勝てるというところまで来ています。
そういう意味でこの2023年で、ベスト8以上という成績を残し、もう一歩先に進んでいきたいというふうに強く思っています。
Q.ベスト4がターゲットになると思うが、そこに向けての手応え、自信は?
A.代表チーム、ヘッドコーチがいいトレーニング、いい準備をしていて、確実に2019年、2015年の時よりは世界のトップ4に近づいていると思います。
ただ、例えば前回アルゼンチンがベスト8に入ってないわけですね。前々回の大会でベスト4に入ったチームですら、ベスト8に入るというのは難しいものなんです。
目標を達成するためには、今のトップ8の国に負けない環境を作って、選手やスタッフが日々過ごせるかどうかということが大切です。
そういった意味では、少なくともプログラム上はかなり前向きなプログラムが組めていると思います。もちろん足りない部分はあると思うので、そこは2023年以降、埋めなきゃいけないとこでもありますけど、前には進めているという手応えは持っています。
Q.2023年はワールドカップに向けてどのような強化をイメージしているか?
A.今回はフランスでのワールドカップでアウェーでの戦いになります。代表チームは日本を離れて試合をしに行きますけど、リーグワンが終わって日本を出るまでの間はなるべく多くの試合を日本で行って、いい環境の中でトレーニングさせたい。できる限り負担のない形にしていきたい。
国内でやるのが一番負担が少ないと思うので、なるべくそういう環境を作って、いろんな準備を代表チームにさせたいと思っています。
Q.改めて新年の目標を。
A.代表チームはワールドカップをターゲットに、そこでとにかく結果を出そうとやっていきます。ひとつひとつのゲームとか練習が彼らにとって本当に大切です。
われわれラグビー協会のスタッフも、ひとつひとつの仕事を丁寧にやって、代表チームの結果につなげたいと思っています。私自身だけではなく、職員みんながひとつになってワールドカップを迎えたいと強く思っていますね。