目指せ!時事問題マスター

1からわかる!新型コロナウイルス(2)感染拡大を防ぐにはどうしたらいいの?

2020年08月13日
(聞き手:勝島杏奈 田嶋あいか)

緊急事態宣言でいったんは収束に向かうかに見えた新型コロナウイルス。ところが、感染者は再び増加傾向に。感染拡大を防ぐにはどうしたらいいのでしょうか?引き続き医療や科学が専門の中村幸司解説委員に聞きました。

第2波を小さな山にするために

学生
勝島

どうして、また、感染が拡大しているんですか?これって、私たちの気の緩みから起きてしまうものなのでしょうか?

難しい質問ですね・・・

中村
解説委員

緊急事態宣言の時のように「外に出るのはやめましょう」、「仕事もできればやめましょう」ということをずっとやっているわけにはいかないですよね。

2020年5月3日 緊急事態宣言中、大型連休でも閑散とする東京 新宿

気が緩んでいなくても経済活動を回して、外に出て仕事などをする人が増えればリスクも高まります。

経済活動と感染リスクとのバランスが大事なんですけど、難しいですよね。

難しいですね。

重要なのは、感染拡大の局面はあることを想定して、患者を受け入れる医療態勢などの整備をしておくこと。

そして、感染拡大が大きな山にならないようにするために、早く察知することです。

学生
田嶋

備えておくことが大事なんですね。

仮に気が付いたときにすでに多くの人が感染していて、その人たちが周囲の人に感染させてしまうと対策が間に合わない。

感染者がでてきた段階で、濃厚接触した人たちを症状の有無に関わらず、PCR検査をして封じ込めするということを早くにやれば、山はあるかもしれないけど小さな山で済むと考えられます。

これからも付き合っていく

ほかの感染症で第2波がきた事例はありますか?

スペイン風邪という感染症が1918年にあって、「風邪」って言っても、当時の新型インフルエンザだったんですね。

1918年 スペイン風邪とみられる患者が療養する病院の様子 米コロラド州

知りませんでした。

第一次世界大戦の頃の話ですが、翌年の1919年の冬の方が感染が拡大しました。

今とは医療体制も違うし、ウイルスについてもよくわかっていなくて、戦争による混乱もあって上手く抑えることができず、第2波が大きくなったんです。

できる治療がわかってきた

もし医療崩壊が起きてしまったら危険なんですか?

医療崩壊の怖いところは、新型コロナウイルスの感染者だけじゃなくて、ほかの病気の患者さんも救えなくなるということです。

いま治療した方が絶対に良いという人の治療が後回しになって、本来、適切な治療を受ければ治る人がそうならない。

ある病院がその状態に陥ると、その地域のほかの病院にもしわ寄せがいって、結果として地域医療が機能しなくなってしまう恐れがあるんです。

今は感染した人はどういう治療を受けているんですか?

当初は対症療法と言って、熱が上がったら熱を下げるとか、脱水症状が進んだら、水分を補給するとか、症状を抑えている間に本人の体力で頑張ってもらおうということしかできなかったんです。

でも、いまは、はじめの頃に比べると、特に重症になる人たちの身体の中で何が起きているのか、どうやって治療すればいいかがわかってきたんですね。

そうなんですか。

2020年4月 集中治療室で新型コロナウイルスの重症患者の治療にあたる医療従事者

人の体は、ウイルスなど外から入ってきたものを攻撃しようとする機能を持っているんです。これを免疫と言います。その作用が過剰に出てしまうことがあるようなんです。

これを『サイトカインストーム』(免疫暴走)と言って、ウイルスも攻撃するんだけど、攻撃しなくてもいい自分の体の細胞まで攻撃してしまうので、そこで炎症が起きて重症化することがわかってきました。

あと、血管の中で血液が固まる血栓ができる人が重症化しやすいこともわかってきたんですね。

血栓ですか。

血栓ができて血管が塞がると、血液が通らなくなってその先の細胞に栄養がいかなくなる。特に肺の血管はすごく細かくなるので、その血管が詰まると肺の機能が低下して重症化する。

肺に影響が出るってよく耳にします。

血栓が脳の血管の狭いところで引っ掛かって止まると、脳梗塞みたいな症状を起こす人もいます。

肺が悪くなったり、脳梗塞になったり、心筋梗塞になったり、症状は多様だけれども、それは血栓が様々な臓器に飛んでいるからじゃないかと言われています。

なるほど。

免疫が過剰に出ないようにする薬や血栓ができにくくなる薬はあるんです。

さらにその免疫が強くなりすぎるか、血栓ができやすいかどうか検査で診断することができるんですよ。

診断できるんですね。

診断して重症化する可能性があったら、それぞれの薬を投与して重症化を抑えようと、今いろいろ治療の工夫が進められています。

だから、ワクチンや治療薬ができるまでの間、何にもできないかというとそうではないんです。

先回りして治療することで重症化しない、あるいは重症化しても命を落とさないという治療がだんだんできてきているのが現状ですね。

日本でPCR検査がすすまなかった理由

PCR検査は、なかなか検査が受けられないと言われていましたが、いまはどうなんですか?

●新型コロナウイルスの検査

PCR検査…病原体の遺伝⼦を検出する検査で、いま感染しているかどうかを調べる。精度はある程度高いが、検査結果の判明までに時間がかかる。

前よりは受けやすくはなったし、受ける体制も増えてきているのが実態です。

2020年5月 ドライブスルー形式の新型コロナウイルスのPCR検査の訓練の様子

日本は海外に比べてあまりPCR検査をやってないと言われますよね。

はい。

いくつか理由があるんですけど、新型コロナウイルスが見つかる前から、日本ではPCR検査をする機会が多くなかったんです。

どういうことですか?

日本には、PCR検査が必要なSARSやMERSも入ってこなかったですし、⽇本は簡易キットが普及しているので、インフルエンザでPCR検査はほとんどしません。

そうすると、PCR検査のキャパシティを増やす必要がなかったこともあって、そんなにたくさんできる状態じゃなかった。

それと、保健所の業務があまりにも多すぎたということもありますね。

PCR検査を受けるかどうか、どこで受けるかということもそうですし、感染した人が過去2週間に誰と接触したか、その中で濃厚接触者は誰なのかを調べて、その人のPCR検査をやるところまで全部やっていた。

大変ですね。

いまは、体制を徐々に増やしていますが、急速に検査体制を広げるところまでいっていないので、課題だといえますね。

病院の敷地内に設けられたPCR検査用のテント

検査できる数を増やしていこうとはしているんですか?

そうですね。さらに、抗原検査と組み合わせるなどして、検査を受けやすいようにしています。

抗原検査…病原体のタンパク質を見つける検査。結果が出るまでの時間が短く、コストも低いが、PCR検査に比べても精度は低い。インフルエンザの診断をする時に病院などで行われている検査がこれ。

抗体検査…過去にその病原体に感染していたかどうか、つまり免疫があるかどうかの検査。

韓国では検査が多いですが、2015年にMERSが院内感染で広がった時、政権が「対応ができなかった」とすごく批判されたんです。

その経験があるので、韓国はPCR検査などの感染症の体制をぐっと高めたというのがあります。中国もSARSの時の経験があります。

そうなんですね。

結局SARSもMERSも、日本に入ってこなかったのは良かったんですが、逆に言うと日本で危機感がなかなか高まらなかったんです。

対岸の火事ではなく、自分たちのこととして考えればよかった、これは大きな反省点ですね。

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