追跡 記者のノートから陸上自衛隊ヘリ事故 第8師団長 坂本雄一陸将とは

2023年4月25日事故

4月6日、陸上自衛隊のヘリコプターが沖縄県の宮古島の周辺で消息を絶った事故で、陸上自衛隊はこれまでに死亡が確認されている5人のうち1人の身元について、熊本市に司令部を置く第8師団の前の師団長の坂本雄一陸将と確認されたと発表しました。

DNA鑑定の結果 坂本陸将と確認

今回の事故では、当時の第8師団長の坂本雄一陸将(55)などヘリコプターに乗っていた10人が行方不明となり、これまでに5人が海底から引きあげられ、死亡が確認されています。

坂本陸将など10人が乗っていたヘリコプター

陸上自衛隊はこのうち1人の身元について、DNA鑑定の結果坂本陸将と確認されたと21日、発表しました。

今回の事故で、亡くなった隊員の身元が確認されたのは、20日に公表された第8師団司令部の幹部2人に続いて3人目ですが、見つかったときの状況や死因については、事故調査にかかわる内容だとしていずれも公表されていません。

陸上自衛隊は、ヘリコプターに乗っていた10人のうち、死亡したほかの2人の身元の確認を進めるとともに、海底で見つかった隊員とみられる1人の引きあげと行方が分かっていない4人の捜索を急いでいます。

防衛省幹部「一見厳しそう とても心優しい人」

陸上自衛隊によりますと、坂本雄一陸将は北海道旭川市出身の55歳で、3月30日に熊本市に司令部を置く第8師団トップの師団長に着任したばかりでした。

平成3年に陸上自衛隊に入隊し、地上での戦闘などを担う「普通科」の幹部隊員として、北海道の部隊などに配属されてきました。

アメリカ軍との調整などを行う統合幕僚監部の防衛班長や、全国の陸上自衛隊の部隊を一元的に運用する陸上総隊司令部の運用部長など主要なポストを歴任し、先月、同期の隊員の中では最も早く階級が最上位の「陸将」に昇任しました。

第8師団長の着任に際しては「厳しい安全保障環境のなかで戦い方そのものが変化している。変化や進化を意識して、挑戦することを心がけてほしい」と隊員に訓示していました。

また「地域に信頼され、愛される第8師団に育成していきたい」と抱負を語りました。

防衛省幹部の1人は「一見厳しそうではあるが、気さくで周囲への気遣いができ、とても心優しい人でした」と話しています。

師団のナンバー3も

20日、死亡が確認された庭田徹1等陸佐(48)は3月30日に第8師団のナンバー3の幕僚長に着任したばかりでした。

職種は、重機を使って陣地の構築などにあたる「施設科」で、新潟県内の部隊の指揮官を務めていたときには、災害派遣の要請を受けて大雪の対応などにあたりました。

防衛大学校ではラグビー部の主将も務めたということで、防衛省幹部の1人は「職種と同じく縁の下の力持ちという印象で、芯が通った人だった。とにかく残念だ」と話しています。

ヘリに乗っていた10人 8人は幹部

防衛省関係者によりますと、今回の事故でヘリコプターに乗っていた10人のうち、8人は幹部だということです。

幹部のうち、氏名が公表されているのはこちらの4人です。

・第8師団の師団長坂本雄一陸将
・第8師団司令部の庭田徹1等陸佐
・第8師団司令部の神尊皓基3等陸佐
・宮古島駐屯地の司令で、宮古警備隊の隊長を務めていた伊與田雅一1等陸佐

庭田1佐は、師団のナンバー3の幕僚長で、神尊3佐は、防衛警備の計画などを担当する「第3部」と呼ばれる部署で実務を担う防衛班長です。

防衛省関係者によりますと、ヘリコプターにはこのほかに、第8師団司令部の幹部2人や、第8飛行隊の操縦士の幹部2人と整備員の陸曹2人が乗っていたということです。

第8師団は熊本、宮崎、鹿児島の3県の防衛警備や災害派遣などにあたり有事の際には機動的に対応する「機動師団」として沖縄県など南西諸島への展開も想定されていて、今回の事故で中核を担う幹部5人が死亡や行方不明となっています。

坂本陸将は20日時点で死亡が確認されていませんでしたが、陸上自衛隊は21日付けで第8師団長の職を解き後任を充てました。

また、宮古警備隊長も、南西諸島防衛の中核を担う幹部で伊與田1佐は行方不明となっていますが、同じく21日付けで職が解かれました。

陸上自衛隊は2人の交代の理由について、安全保障環境や捜索状況などを考慮して総合的に判断したとしています。

海底の機体 早ければ今月末にも回収作業開始

今回の事故では水深106メートルの海底で胴体部分とみられる損壊した機体の一部などが見つかっています。

陸上自衛隊は、民間業者に委託して機体の回収を行うため、21日入札を行った結果、東京に本社がある大手サルベージ会社のグループ会社が10億円余りで落札し、契約したということです。

この会社は、去年1月に航空自衛隊のF15戦闘機が石川県沖の日本海に墜落した事故などでも、機体の捜索や引き揚げにあたっているということです。

陸上自衛隊は天候条件などがよければ今月末にも作業を始め、胴体部分のほか、散乱している残骸も回収して機体を調査するとともに、フライトレコーダーも回収して事故原因の究明を進めることにしています。

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