追跡 記者のノートから陸上自衛隊ヘリ事故 飛行ルートや当時の状況 手がかりは

2023年4月12日事故

陸上自衛隊のヘリコプターが沖縄県の宮古島の周辺で消息を絶った事故。

ヘリコプターには師団長など10人が乗っていて、自衛隊や海上保安庁が捜索を続けています。

飛行ルートや当時の状況、手がかりなどについてまとめました。

飛行ルートや当時の状況は

防衛省によりますと、航跡が消えたのは、陸上自衛隊第8師団の第8飛行隊に所属しているUH60JA多用途ヘリコプター1機です。

足取りをまとめました。

【6日15:46 離陸】
ヘリコプターが航空自衛隊宮古島分屯基地を離陸。周辺の地形を確認するため上空を飛行したあと、午後5時5分、同じ基地に着陸する予定だったということです。

【6日15:54 最後の交信】
ヘリコプターは航跡が消える2分前の6日午後3時54分に、伊良部島に隣接する下地島の空港の管制官と交信していたということです。

【6日15:56ごろ レーダーから消える】
宮古島と伊良部島の間の海上を飛行中にレーダーから航跡が消失。当時、宮古島周辺の風速や視界などの気象状況に問題はなかったとしていて、目視で飛行していたということです。

ヘリコプターに搭載されていた燃料は、離陸から4時間後の午後7時46分ごろにはなくなる量だったことなどから、航空事故と判断したとしています。

現場での手がかりは

飛行ルートと機体の一部らしき漂流物

海上保安庁によりますと、ヘリコプターの航跡がレーダーから消えた位置は、宮古空港から北西におよそ18キロ、宮古島と橋でつながる伊良部島の北端からは北東におよそ3キロの場所で、水深はおよそ100メートルあります。

航跡が消えた海域は水深約100m 捜索方法は

海上保安庁の装備で潜ることができるのは水深60メートルまでですが、海上保安庁によりますと、ヘリコプターの航跡が消えた海域の水深は、およそ100メートルあるということです。

仮に機体が海底に沈んでいた場合には、水圧に耐えられるよう高い圧力に体を慣らした状態で潜水を行う「飽和潜水」といった特殊な潜水方法や、無人の潜水艇を用いての捜索となるため、簡単ではないとしています。
海上保安庁が巡視船を出して捜索したところ、ドアや救命ボートなど機体の一部らしき漂流物が複数見つかっています。

発見されたものを時系列でまとめました。

機体の一部らしきもの

【6日18:24 機体の一部らしきもの】
6日午後6時24分にレーダーから消えた海域の周辺で、機体の一部らしきものが見つかりました。

折りたたまれた状態の救命ボート

【6日18:30 救命ボートを発見】
6日午後6時半ごろレーダーから消えた位置から北に4キロほど離れた海域で「陸上自衛隊」と書かれた、折りたたまれた状態の救命ボートが見つかりました。
(【7日8:16】もう一つの救命ボートを発見)

機体の一部とみられる窓枠

【6日17:03 窓枠を発見】
さらに3キロほど北の海域では機体の一部とみられる窓枠が見つかりました。

「陸上自衛隊」と書かれたドア

【7日02:00すぎ ドアを発見】
7日午前2時すぎには、救命ボートが見つかった場所から北に7キロほど離れた海域で「陸上自衛隊」と書かれたドアが見つかりました。

回転翼の「ブレード」

【7日03:30ごろ 回転翼の一部を発見】
午前3時半ごろにはその南の海域で回転翼の「ブレード」が新たに見つかり、引き揚げられたということです。

捜索ではこのほかにもヘリコプターに乗っていた隊員のヘルメットや、機体の燃料タンクの一部なども見つかっています。

いずれも伊良部島の北の海域で見つかったということです。

目撃情報も “低空飛行”の証言複数

宮古島の北側にある池間島の住民の中には、陸上自衛隊のヘリコプターの航跡がレーダーから消えた時間帯に、低空で飛行するヘリコプターを目撃したり大きな音を聞いたりした人がいます。

【6日15:00~16:00】
(漁業者の男性 池間漁港で)
「午後3時から4時の間だったと思いますが、友達と作業をしていたら大きな音がして低空飛行で飛ぶヘリコプターが見えました。沖縄本島から伊良部島の方向に飛んでいて、もし、島に落ちたら大変なことになっていたと思います」

【6日16:00ごろ】
(漁業者の男性 池間漁港南側の自宅で)
「午後4時ごろにかなり大きい音がしたので、びっくりしてベランダに出ました。ヘリコプターが消息を絶ったというニュースを見て、『このヘリコプターが落ちたのか』と思いました。あまり聞かないようなかなり大きい音だったので、低空飛行をしていたのではないかと思います」

【6日16:00ごろ】
(男性 池間島南側の自宅で)
「6日午後4時くらいだったと思いますが、車を家の敷地に入れたあと、車の外に出ると、ヘリコプターが東から西に飛んでいくのが見えました。高度は低く家の真上を飛んでいました。大きな音がして、色は黒のように見えました。乗っていた皆さんの無事を祈っています」

「UH60JA」とは

「UH60JA」について、陸上自衛隊で東部方面総監などを務めヘリコプターの運用に詳しい磯部晃一さんによりますと、「陸上自衛隊では主に人員輸送などに使われている。乗員5人を含めて15人ほどを乗せることができる。エンジンを2つ搭載しているため一方にトラブルがあってももう一方でしばらく飛行し、近くに着陸することができる機体だ」としています。

また、陸上自衛隊や三菱重工のホームページなどによりますと「UH60JA」は陸上自衛隊では1999年度に配備が開始された多用途ヘリコプターで、各地の駐屯地などに配備されています。

今回の事故を受けて、陸上自衛隊は全国に配備している同型機の飛行を見合わせていますが、急患輸送を含む「災害派遣」などの任務は見合わせの対象から除外されています。