安心 キケンのない社会をつくろう“7歳”を交通事故から守る「たいせつなことば」 

2022年4月5日事故 子ども 生活

子どもだけで行動する機会が増える“7歳”。

交通事故のリスクが最も高くなる年齢だと知っていますか。

なぜなのか?どうすれば事故を防げるのか?

新学期を迎えるこの時期、子どもたち、保護者の方に知ってほしいことがあります。

(首都圏局ディレクター 竹内はる香)

「ててて!とまって!」

「ててて!とまって!」
作詞:さとうまさかず / 作曲:サキタハヂメ
うた:うきょう(ミドリーズ)/ アニメーション:八百悟志

おはよう ともだち みつけたよ
はやく あって はなしたいな
いきたい きもちは わかるけど
まずは くるまを たしかめよう
くくく くくる! くるま!

あっちから くるまが やってきた
ぼくに きづいてくれるかな
うんてんしゅさんに てをあげて
とまって!の あいずを とどけよう!
ててて ててて! とまって!

この春、NHKが子どもの交通事故を防ごうと作った歌「ててて!とまって!」の歌詞の一部です。

歌詞は事故のデータ分析や全国の事故防止の知恵、交通安全の専門家のアドバイスもふまえて作られています。

特に歌を聴いてほしいのは7歳とその前後の年齢の子どもたち、そして保護者の方々です。

なぜ“7歳”なのか、それは残念ながら最も交通事故のリスクが高いというデータがあるからなんです。

歩行中の交通事故 最も多い“7歳”

2020年 交通事故の年齢ごとの死傷者数 (人口10万人あたり・歩行中)  
「交通事故総合分析センター 統計データ」「総務省統計局 人口推計」 より作成

歩行中におきた交通事故の、死傷者数(10万人あたり)を年齢ごとに折れ線グラフにしたものです。7歳を中心に極端に大きなピークがあるのがわかります。年齢別のデータを少し詳しく見てみます。

▼ 5歳=約25人
▼ 6歳=約46人
▼ 7歳=約70人
▼ 8歳=約62人
▼ 9歳=約46人
▼ 10歳=約32人

7歳をピークに、その前後8歳と6歳、9歳の順に多くなっています。おもに小学校の低学年の子どもたちの年齢が上位を占めているのです。

なぜなのか、そしてとれる対策はないか?取材を始めました。

なぜ“7歳”が? 3つの理由

なぜ、“7歳”の死傷者数がこんなに多いのでしょうか。

子どもの交通行動や心理に詳しい、日本自動車研究所の主任研究員、大谷亮さんがいくつかの要因を挙げてくれました。

大谷 亮さん

【理由1】行動範囲が一気に広がる

みんなでがっこうに

大谷さん
「7歳というのは、小学1年生から2年生のお子さんの年齢です。幼稚園や保育所の頃は保護者の方が送り迎えをしてくれていましたが、小学生になると自分の足で学校へ行き、家へ帰ってくるという状況になります。つまり、一人で行動する範囲が一気に広がるんです。その分、事故に遭うリスクが急激に高まってしまうことが考えられます」

【理由2】衝動的な行動をしがち

ともだちだ! おーい!

大谷さん
「また、この年頃までのお子さんは、何か魅力的なものを見つけると、そちらに向かうなど、衝動的な行動をしてしまう傾向にあります。例えば、道の向かい側に友だちやお母さんお父さんがいたら、安全を確かめずについ道路に飛び出して、車とぶつかってしまう、などのケースが多く見られます。

さらに理由1にも通じますが、“7歳”のお子さんたちは一人で歩くといった経験をし始めたばかりなので、『町じゅうのものが目新しく感じる』ことも関係していると考えられます。大人にとっては当たり前の風景でも、子どもにとっては“初めて見るもの”“興味をそそられるもの”でいっぱい。つまり、衝動的な行動につながってしまうきっかけが、そこかしこにある環境で歩いている、とも言えます」

【理由3 】「危険」の予測が難しい

みぎはとまってくれた! でも ひだりをみたらまたくるまだ どうしよう

大谷さん
「例えば、道路をわたろうとしているとき、大人からすると、車が近づいていていかにも危険な状況なのに、子どもは走ってわたろうとしたりすることがありますよね。これは、『いま道をわたると、近づいてきた車とぶつかってしまうかどうか』を適切に予測できず、誤った判断をしてしまっているからと考えられます。

実際に、大人に比べて子どもは、走ってくる車の速度や、自分のいる位置と車がどれくらい離れているかを、見極めるのが苦手だと指摘する研究もあります」

特に注意すべきは「道路横断中」

それでは、“7歳”の子どもたちにとって特に危ないのはどんな状況なのでしょうか。

それは「道路の横断中」です。

2020年のデータを円グラフにしました。

車との事故で歩行中に交通事故に遭った7歳の死傷者のうち、その7割以上が道路横断中でした。

データ:交通事故総合分析センター(2020年) 

なぜ横断中なのか。その背景には、「道路を“安全に”横断する」ためには複数の動作が必要だということ、そしてこの年頃の子どもにとってそれを実践するのが非常に難しいことが関係しているのではないかと、大谷さんは指摘します。

大谷さん
「想像してみてください。道路を横断するには、横断歩道を探して、右を見て安全を確認し、左を見て安全を確認し、交差点の場合では前や後ろも安全を確認し、周囲の安全が確認できたら、走らず、歩いてわたる。わたっている間も、安全を確認しながらなど、かなり多くの動作を行っていますよね。私も、小学校1年生向けに交通安全の授業をしたりするのですが、この動作の多さに苦戦している様子をよく見ます。

また、動作の順序を覚えられても、今度は動作をするだけで精いっぱいになってしまって、いちばん肝心な『安全の確認』ができないんですね。『右左右!』とすばやく首を振った後、車が近づいてきているのに道をわたろうとしてしまうお子さんもいます」

歌って覚える 道路横断3つの基本 「ててて!とまって!」

取材を進めて見えてきた、子どもたちの事故リスク。

7歳前後の子どもたちに、特に事故が多い横断時の動作を身につけてもらうにはどうすればいいのか・・・

NHKの交通安全ソング「ててて!とまって!」は、道路をわたるときの基本を3つのフレーズで伝える歌です。

お子さんたちにぜひ覚えてもらいたいのは、この3つです。

フレーズ1 「くくく くくる! くるま!」

横断歩道をわたるとき、まずは車が来ているか来ていないか、見てみよう。
「安全の確認」などのあいまいな表現を避け、「“車”という具体的な対象が、いるかいないかを確かめよう」という、子どもにもわかりやすい行動をフレーズにしました。

フレーズ2 「ててて ててて! とまって!」

車が来ていたら、手をあげて「とまって!」の合図を届けよう。

目的はわたる前に、車を必ずとめること。

手をあげることが目的にならないように。

車がとまらなければ、わたらない。という要素も盛り込みました。

フレーズ3 「サンキュー!」

とまってくれたら、運転手さんにお礼をしてわたろう。
この3つの歌詞を繰り返し歌ってもらい、安全に横断歩道をわたる術を身につけて欲しいと願っています。

全国の成功事例「とまって」「サンキュー」を歌に

こんなシンプルな手順でほんとうに安全にわたれるの?と思った方もいらっしゃるかもしれません。
この「とまって!」「サンキュー!」は、全国の交通安全指導の現場で評価されている最新の取り組みなどを参考にしています。

「とまって!」の元となったのは、三重では「ハンドサイン」、京都では「合図横断」と呼ばれる取り組みです。どちらも、「信号のない横断歩道では、横断前に手をあげ、ドライバーに合図をしてわたる」というもので、こうした活動が各地で始まっています。

信号のない横断歩道に人がいるとき、車はとまらなければならないのがそもそものルールですが、JAF(日本自動車連盟)の調査によれば、実際に停止している車は3割程度しかないことが分かっています。少しでもとまる車を増やし、歩行者がより安心して道路をわたれるようにと、この取り組みが広がっています。

手をあげる効果については、三重県警が信号のない横断歩道で調査しています。歩行者が手で合図をしなかった場合の車の一時停止率は37.4%でしたが、手で合図をしたときには85.1%まで上がったといいます。

運転手に横断の意思を積極的に伝えることで、車がとまってくれる確率が大幅に上がり、より安全に道をわたれることを示す結果となりました。

また京都では、「運転手さんに手のひらを向けて合図しよう」と、府内40以上の幼稚園や保育所などの子どもたちに教えて回りました。各園の職員や保護者などからも合図の有効性が評価され、子どもに継続して教えていきたいと評判を呼んでいます。

データ:JAFの全国調査(2021年)

一方、「サンキュー!」の元となったのは、長野の事例です。

長野県は、JAF(日本自動車連盟)が実施している「信号機のない横断歩道における車の一時停止率」の調査で、例年日本一になっています。その長野で古くから根づいているのが、「横断歩道で車がとまってくれたら、おじぎをする」文化です。

小さい頃から「どうぞわたって」「ありがとう」というコミュニケーションを運転手と行っているため、大人になって自分が運転手になった時にも「どうぞ」と自然に道を譲りたくなる。そんな良い循環があるそうなんです。

全国の事例を取材していく中で強く感じたのは、交通事故を防ぐために、「歩行者とドライバーのコミュニケーション」はとても大事だということです。道路をわたるとき、子どもは合図することで、ドライバーに自分たちの存在に気付いてもらう。それを積み重ねていけば、ドライバーの側も常に子どもたちの存在を意識しながらハンドルを握るようになるのではないか。そんな環境が広がってほしいと願い、この歌でも「ありがとう」のコミュニケーションを呼びかけています。

子どもたちのために 私たち大人こそ

子どもたちが交通事故から身を守るため、今回は歌をご紹介しました。

一方で事故を減らすためにはハンドルを握る大人こそ、取り組まなければならないことがあります。

去年6月、千葉県八街市で児童5人が死傷した事故では交通ルールを守って一列で歩いていた子どもたちが飲酒運転のドライバーにはねられました。子どもたちにはどうすることもできません。

当然のことですが運転する人は飲酒運転や居眠り運転、信号無視などを絶対にしないこと。そして、忙しい時でも子どもたちのことを思い浮かべながらスピードを緩め、歩行者が横断歩道の前で待っている時はとまること。そうしたひとりひとりのドライバーの変化が大切です。

NHK首都圏局では、これからも、この「ててて!とまって!」を活用した子ども向けの出前授業を行ったり、ドライバーである大人向けにも、放送やWEB記事などで情報を発信したりしていきます。また特設サイト「その通学路 安全ですか」では危険な通学路や対策を引き続き発信していきます。

子どもたちのためにできること。一緒に考えていただけたらうれしいです。

まずは… ててて! とまって!

「ててて!とまって!」の歌の動画はこちらでご覧いただけます

  • 首都圏局 ディレクター 竹内はる香 2010年入局。
    長崎局、制作局を経て首都圏局。
    首都圏局では通学路の安全などについて取材。小学1年生の時、ななめ横断をしたが親にバレて、とっても怒られました。