2022年12月12日
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【詳しく】アメリカ中間選挙 トランプ氏は?保守派重鎮が語る

「トランプ氏は後ろを向いている。みんな前を向いていきたいのだ」

共和党の政策に絶大な影響力を持つNRA=全米ライフル協会の元会長デビッド・キーン氏のことばです。
2024年の大統領選挙への立候補も取り沙汰されるトランプ前大統領。“トランプ氏の共和党”はどこに向かおうとしているのか。
半世紀にわたってワシントンの中枢で政治を見てきた重鎮に聞きました。

※この記事は2022年11月4日に公開したものです

デビッド・キーン氏とは

1970年代、ニクソン政権で副大統領をつとめたアグニュー氏の政治アドバイザーとしてワシントンでのキャリアをスタートさせたデビッド・キーン氏。


当時、20代前半で「最も若いホワイトハウスのスタッフとして就任し、退任する時もまだいちばん若かった」と言います。

その後、レーガン氏の選挙戦で地域の責任者となったほか、1980年のブッシュ氏の選挙戦では政策責任者を務めました。

NRA=全米ライフル協会 デビッド・キーン元会長

キーン氏
「かなり長い時間を過ごしているが、とても楽しい。アメリカ人は政治に関心がないし、下に見る人は多いが、ワシントンには正しいことをしようとしているいい人がたくさんいる。難しい仕事だが、おもしろくもある」

いちばん長く務めたのが、保守派集会「CPAC」を運営する政治団体の代表。

その後、オバマ政権時代には、NRA=全米ライフル協会の会長も務めました。

今も共和党の候補者に対して政策や選挙面でのアドバイスを行うなど、半世紀にわたって、ワシントンの中枢で政治をみてきた保守派の重鎮に2022年10月、首都ワシントン近郊にある自宅でインタビューしました。

※以下、キーン氏の話

トランプ氏が新たな支持層を獲得した?

トランプ氏は思った以上に大統領として成功した。実効性のある税制法案を通し、最高裁判所だけでなく連邦裁判所にも保守派の判事を多く任命できた。

私が若い頃は、共和党は銀行や工場を経営するようなビジネス関係者。民主党は労働者層や移民などを代表していた。現在はがらりと変わってウォール街や多くの大企業は民主党を支持。共和党は忠実な民主党員だった労働者から支持を得ている。

ただ、両党のリーダーはこの変化を理解できていなかった。だから民主党の政治家は今もいかに労働者を支援するかについて話をするし、共和党は銀行員やビジネス関係者を代表しているかのように話し続けている。

そんな時にトランプ氏が共和党の候補者となった。何が起きていたかというと、党の支持層は変わったのに、リーダーは誰も変化に対応できておらず、有権者は不満を募らせていたのだ。トランプ氏はこうした人たちに訴えかけることができ、だから人気が続いていると思う。

トランプ氏の弱点は?

彼の問題は、政府の仕組みを十分に理解できていなかったことだ。近年のほかのどの大統領よりも政府内で反対の立場をとるスタッフを残した。

「大統領になったのだから、今度はみんな私のために働く」と言っていたそうだが、政府はそのようには動かない。民間企業とは違うのだ。

トランプ氏はオバマ元大統領が指名した人物を多く残したが、その結果、政策を実行する責任者の中にも彼に敵対心を持つスタッフが残った。

“ワシントンの一部ではない”ということがトランプ氏が支持された理由だったが、それこそが彼がワシントンに対応できなかった理由なのだ。彼はワシントンのことを全く理解できていなかった。

トランプ氏で党内分裂?それとも?

確かに共和党内は分裂している。なぜならトランプ氏のことを好きな人もいれば嫌いな人もいるからだ。しかし、それはレーガン政権の時もそうだしブッシュ政権の時もそうだった。これが政治の摂理なのだ。政治の中にいる人間の間には競争があり、いつも“つまらないけんか”をしているものだ。

レーガン一派が共和党に入ってきた時、それまで党の中心だった人たちは「これは最悪だ」と言っていたが今やレーガン一派が共和党をまわしている。

トランプ前大統領

こうした新しい勢力は政党が何をできるのかも分からずに入ってくる。だからこんなことを達成したい、しかもそれをすぐにやると意気込む。しかし、思ったよりも難しいことが分かるのだ。それで脱落する人もいるし、自分が嫌いだったはずの人のようになってしまう人もいる。だが一部は残り、どうやってこの仕組みの中でやっていくのかを学んでいく。

トランプ氏らは未熟だったのだ。彼らはワシントンが難物で、問題を解決するのが難しいことが分かったため、多くの人はより洗練されてきている。中間選挙の候補者らもじきに伝統的な党に溶け込んでいくだろう。そして新しい支持層に効果的に訴えることができる党となるのだ。

中間選挙の結果はどうなる?

共和党が議会下院で多数派を奪還することはほぼ確実だろう。そしてかなりの票差になるはずだ。バイデン大統領の支持率が低く、それは歴史的にみて、野党、今の場合は共和党が議会下院で多くの議席を獲得するということを意味している。

だから、来年1月には共和党が議会下院で主導権を握り、民主党のペロシ氏ではなく共和党のマッカーシー氏が下院議長となるだろう。

選挙後に必要なことは?

私が問題だと思っているのは、ここ最近のアメリカ政治ではみんな相手を捜査したがるということだ。共和党が政権についている時は民主党が共和党の大統領を弾劾したいと思い、刑務所に入ってほしいと思っていた。そして共和党が力を持ったら、「われわれにしたんだから、今度はこっちがやってやる」と言う。ワシントンではこういうことが起きるのだ。

しかし、地方に行くと人々は経済を再生させてほしいし、投票した理由である問題に対応してほしいと思っている。必要なのに捜査するべきではないとは言わないが、共和党はインフレなど社会が懸念していることに対応しなければならない。

そうすれば2024年の大統領選挙は共和党にとって期待できるものとなるだろう。しかし、そうしなければ政治家に向けられる有権者の目は厳しくなる。なぜなら、どちらの政党が勝ったとしても自分たちが懸念している問題について政治家は注目してくれず、問題に対応するよりも政治家どうしの争いに忙しいと感じるからだ。

トランプ氏は2024年立候補するのか?

トランプ氏が立候補するかどうか分からない。
そして立候補して候補者に選ばれるかも分からない。
ただ、立候補すれば、“最も大きな支持”から始まるとは思う。

トランプ氏はもう何年も公の場で戦ってきているが、『彼は絶対正しい』と言っていた人たちでさえ、戦いをやめたいと思っている。そしてこれがほかのなによりも、彼が直面する弱さになるだろう。

大統領や大統領候補は控えめにしなければならない時があるのだ。人々は大統領候補には前を向いてほしいと思うものだ。トランプ氏は後ろを向いている。彼やその周辺の話を聞くと、過去を見ている。みんな前を向いていきたいのだ。そして、すでに新しい世代の時代にも入ってる。

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