2022年12月2日
アメリカ大統領選挙2024 アメリカ中間選挙 トランプ前大統領 アメリカ 注目の人物

終わらない“トランプ劇場” 突然の立候補表明? そのとき何が?

「アメリカを再び偉大かつ栄光ある国にするため立候補する」
日本時間の11月16日、2024年の大統領選挙への立候補を表明したトランプ前大統領。
実はこの1週間ほど前にも立候補を表明するのではないかという情報があり、現場は緊張感に包まれていた。メディアの注目を集め続ける“トランプ劇場”の現場とは。

(国際部記者 山下涼太)

一報は何気ない会話から

「きょうトランプ氏が立候補を表明するかもしれないらしいよ」

一瞬、耳を疑ったその内容を聞いたのは中間選挙の投票を翌日に控えた11月7日。

激戦州の1つ中西部オハイオ州でトランプ氏の応援演説が行われる会場にいたトランプ支持者の会話だった。

急いでニュースなどを調べると「トランプ氏が、2024年の大統領選挙への立候補を“この集会”で発表するかどうか近しい関係者と相談した」という内容の記事が数時間前に出ている。

世論調査の結果などから、最終盤になって共和党に勢いがあるという見方が広がっていた今回の中間選挙。

そうした中「トランプ氏が14日にも大統領選挙への立候補表明を検討」といった報道も出るなど、にわかにトランプ氏の動向に注目が集まっていた矢先のことだった。

「立候補表明?」の現場とは

「ラストベルト(さびついた工業地帯)」と言われるオハイオ州。

トランプ氏は民間空港近くに設けられた会場で自身が支持する上院議員候補でベストセラー作家のJ・D・バンス氏の応援演説を行う予定となっていた。

民主・共和の支持者がきっ抗し、選挙のたびに結果がかわる「スイング・ステート」として知られるオハイオ州だが、2016年、2020年の大統領選挙ではいずれもトランプ氏が勝利。

トランプ氏にとっては縁起のいい場所でもあり、中間選挙前の最後の演説が予定されていたのだ。それだけに前倒しの立候補表明もあるのかもしれない。そう思うと、一気に緊張感が高まった。

“トランプ大統領”待望する支持者たち

トランプ氏の演説開始予定時刻は日本時間の8日午前中だったが、朝の番組での中継対応などもあり演説開始の8時間前には会場に到着。

会場はトランプ氏の決めぜりふ「Make America Great Again(アメリカを再び偉大に)」と書かれた帽子や「MISS ME YET?(そろそろ俺が恋しいだろ?)」と書かれたTシャツなど、トランプグッズを身につけた人たちで埋め尽くされている。

支持者
「トランプ氏こそが私たちの代表。早くトランプ氏に政権に戻ってもらいアメリカをよくしてほしい」

会場で話を聞いた参加者からは異口同音にトランプ氏への信頼に満ちあふれた言葉が出てきた。

ついに現れたプライベートジェット

日本時間の8日午前10時すぎ(現地時間の7日午後8時すぎ)。

演説開始の予定時刻を10分ほど過ぎたところで「TRUMP」と全面に書かれたプライベートジェットが滑走路に降り立ち、会場の真後ろに止まった。

そのままトランプ氏の登場を待っていると歓声が次第に大きくなる。

飛行機から降りてきたのか。人垣でなかなか見えなかったが、背を伸ばし目をこらすとかろうじてトレードマークのヘアスタイルが見えたような気がした。

初体験の“トランプ劇場”とは

壇上に上がり支持者の大歓声を受けながら演説を始めるトランプ氏。

立候補表明がいつ何時きてもいいようにカメラマンなどと段取りを確認して神経を集中させて演説を聞く。

トランプ氏の演説を直接現場で聞くのは初めてでその主張を聞く観衆の高揚はまるでスターが出演したショーのようだった。

演説するトランプ前大統領

トランプ氏
「これまでで最悪だった大統領を5人選んで全員まとめても、バイデンがこの国に与えたほどの損害はなかった」
「2020年の大統領選挙で自分は負けていない」

1時間以上しゃべり続けるがなかなか「そのとき」はやってこない。

トランプ氏の口から出てくるのはこれまでも聞いたことのあるバイデン政権に対する批判と前回の大統領選挙の話ばかり。

風が強くなり気温も下がって体が震えるほどの寒さになる中、会場にいた支持者ですら1人また1人と帰り出す人も出始めた。

演説の最後に語ったのは・・・

演説開始からおよそ1時間半。

きょうは発表はないのか。

緊張の糸が切れかけたところに突然スクリーンにアメリカ国旗が映し出された。

「来週火曜日、今月の15日に重大な発表をする」

「ついに立候補の表明か」と身構えたところでトランプ氏が語ったのは“次回予告”のみだった。

トランプ氏は結局、はっきりと自身の立候補について話すことはなくおよそ1時間40分にわたった演説は終わった。

ただ、立候補表明を聞けずに落胆しているかと思って周りを見てみると、トランプ氏の支持者たちは“次回予告”だけでも十分満足、と言わんばかりの笑顔で大いに喜んでいる様子だった。

支持者
「公式には発表しなかったけど、2024年の大統領選挙に立候補するということだと思う。本当によかった」
「中間選挙が終わるまで待って大統領選挙への立候補を発表するんだろう。トランプ氏のもとに政権が戻るときだ」

波は来ず それでも続く“トランプ劇場”

この日の会場の雰囲気はまさに“レッド・ウェーブ”。

共和党が大きな“赤い波”に乗って大きく勝利するのではないかという予感も抱かせるほどの盛り上がりだったが、結果は上院では多数派はとれず下院の多数派をなんとか奪還するにとどまり、予想されていた勢いはみられなかった。

中間選挙で圧勝し大統領選挙に向けた主導権を握りたいという思惑は外れたのではないか。トランプ氏は本当に立候補を表明するのか。選挙後にはそんな見方すら出始めていた。

それでも予告していた15日。

トランプ氏は大統領としての実績を強調し、予告通り2024年の大統領選挙への立候補を表明した。

大統領選挙への立候補を表明するトランプ氏(2022年11月15日)

トランプ氏
「われわれは史上最も強力な経済を作り上げ、中国やロシア、イラン、北朝鮮を抑え込んでいた。われわれの指導力のもと、アメリカは偉大かつ栄光ある国だった。アメリカを再び偉大かつ栄光ある国にするため、大統領選挙への立候補を表明する。アメリカを破壊しようとする過激な民主党を打ち破る」

早めに立候補を表明し強気の姿勢を示し続けることで、党内の争いで機先を制したい。そんなねらいもうかがえる演説だった。

共和党内では今も根強い“トランプ人気”が続いているのは事実だが、ほかの有力な候補者の名前も取り沙汰され始めている。 2024年の大統領選挙に向けてトランプ氏は共和党の候補者選びを勝ち抜けるのか。今後も“トランプ劇場”から目が離せそうもない。

国際ニュース

国際ニュースランキング

    特派員のスマホから一覧へ戻る
    トップページへ戻る