2022年9月29日
アメリカ中間選挙 トランプ前大統領 バイデン大統領 アメリカ 注目の人物

アメリカ中間選挙 勝敗を左右する激戦州は?各州の情勢は?

アメリカの中間選挙が11月8日に行われます。
中間選挙は大統領選挙の2年後に連邦議会の上下両院の議員や一部の州の知事などを選ぶものです。
バイデン政権の与党・民主党は苦戦が続いていて議会下院では野党・共和党が多数派を奪還するという見方が出ています。

一方で、上院は大接戦となっていて民主党が多数派を維持するのか、共和党が奪還するのかが焦点となっています。
なかでも全体の勝敗を左右する「激戦州」をどちらの党が制するかに関心が集まっています。

上院選挙の最新情勢は?

連邦議会上院は任期が6年。

100議席ですが、現在は無所属を含む与党の民主党系と、野党の共和党がいずれも50議席ずつとなっています。ただ、上院では民主党のハリス副大統領が議長を兼務し、採決で賛成と反対が同数だった場合は議長が票を投じることから民主党が事実上多数派として主導権を握っています。

上院の100議席のうちおよそ3分の1の議席が2年ごとに改選となる仕組みで、ことしは現職議員の引退に伴う補欠選挙を含めて35議席が改選されます。

政治情報サイト「リアル・クリア・ポリティクス」によりますと9月28日時点で民主党は非改選が36議席、安全圏にあるとされる議席が6議席で合わせると42議席となっています。

これに対して共和党は非改選が29議席、安全圏が15議席で合わせて44議席となっています。

残る14の議席のうち、民主党が優勢とされるのが4議席、共和党が優勢とされるのが3議席です。このほか7議席は最新の情勢調査から接戦となっていて事実上、これらの州の結果が、上院でどちらの党が多数派となるかを決することになります。

これらの7議席はアリゾナ州、ジョージア州、ネバダ州、ニューハンプシャー州、ノースカロライナ州、ペンシルベニア州、ウィスコンシン州です。これらに加えて、激戦となっているオハイオ州を含めた8州の情勢です。

アリゾナ州 トランプ氏の影響力を測る試金石の1つ

西部アリゾナ州では上院議員選挙や知事選挙などにトランプ前大統領が支持する候補者が立候補していて、トランプ氏の影響力を測る試金石の1つとして注目されています。

アリゾナ州はメキシコと国境を接し、アメリカ有数の景勝地、グランドキャニオン国立公園があることでも知られています。伝統的に共和党が強く、大統領選挙では1952年以降、おととしまでのおよそ70年間で民主党に1度しか負けたことがありませんでしたが、民主党への支持も広がっていておととしの選挙ではバイデン氏が勝利しています。

今回の中間選挙では上院議員選挙に
▼民主党から元宇宙飛行士で現職のケリー氏が、
▼共和党からはトランプ氏が支持する投資家のマスターズ氏が立候補しています。

さらに州知事選挙でもトランプ氏が支持する候補者と民主党の候補者が激しく争っていて、トランプ氏の影響力を測る試金石の1つとして注目されています。

また、選挙の実務を取りしきる州務長官の選挙にはおととしの大統領選挙で大規模な不正が行われたとするトランプ氏の一方的な主張に賛同する候補者が予備選挙を大差で勝ち抜き共和党の候補者となっていて、関心が集まっています。

ジョージア州 共和党の牙城と言われるも・・・

南部ジョージア州では民主党の現職の上院議員とトランプ前大統領が支持するNFL=アメリカプロフットボールリーグの元選手の共和党の候補者が激しい選挙戦を展開しています。

ジョージア州は州都アトランタとその近郊に大手清涼飲料水メーカーなどの大企業が本社を置いていて、アメリカ南部の経済の中心地となっています。州の人口はおよそ1080万人で、黒人の比率が33%あまりと黒人の割合が全米の州の中でも高い割合となっています。

保守層が多く、共和党の牙城とも言われてきましたが、都市部では民主党の支持者も増えていて、2020年の大統領選挙ではバイデン大統領が0点2ポイントの差で、トランプ氏に勝利しています。

今回の中間選挙では上院議員選挙に
▼民主党から現職のワーノック氏が、
▼共和党からはトランプ氏が支持するNFL=アメリカプロフットボールリーグで活躍した元選手のウォーカー氏が立候補しています。

ウォーカー氏が知名度も生かして議席を獲得できるか、それとも前回、現職を破り、ジョージア州初の黒人の上院議員となったワーノック氏が議席を守れるのか、最終盤まで激しい選挙戦が続くものと見られます。

ネバダ州 新型コロナ対策や経済政策が争点に


世界有数の観光地、ラスベガスがある西部ネバダ州では、上院議員選挙で民主党の現職が議席を維持できるのか、それともトランプ前大統領が支持する共和党の新人が議席を奪うのかが焦点となっています。

ネバダ州は選挙のたびに有権者の動向が揺れる「スイング・ステート」と呼ばれる州の1つで、2020年の大統領選挙ではバイデン大統領が2ポイントの差でトランプ前大統領に勝利しています。

今回の選挙では
▼民主党の現職コルテスマスト氏が、
▼州の前の司法長官でトランプ氏が支持する共和党のラクサール氏の挑戦を受ける形になっています。

選挙戦では、州の主要産業の観光業や娯楽産業が新型コロナウイルスの影響による観光客の激減で打撃を受ける中、バイデン政権の新型コロナ対策や経済政策の是非が大きな争点となっていて、両者が激しく競り合っています。

州の人口は白人の割合が46%、ヒスパニック系が29%、黒人が10%、アジア系が9%と多様な人種で構成されていて、伝統的に民主党の支持基盤とされてきたヒスパニックなどマイノリティーの民主党離れの傾向も各地で指摘される中、有権者がどのような判断を示すのかにも関心が集まっています。

ニューハンプシャー州 リベラル色の強い州

リベラル色の強い東部ニューハンプシャー州の上院議員選挙では2年前の大統領選挙の結果を否定する発言をしていた共和党の候補者の動向に注目が集まっています。

アメリカ建国時の独立13州のうちの1つのニューハンプシャー州はもともとリベラルな土地柄として知られていますが、近年はさらに民主党への支持が強まり、2年前の大統領選挙では7ポイント以上の差をつけてバイデン大統領がトランプ氏に勝利しました。

今回の中間選挙の上院議員選挙では、
▼民主党の現職、ハッサン氏に
▼共和党の新人で退役陸軍准将のボルダック氏が挑む形です。

新人のボルダック氏は共和党の候補者を選ぶ予備選挙に向けた討論会で、バイデン大統領が勝利した2年前の大統領選挙について、「勝利したのは本当はトランプ氏だった」と訴え、穏健派とされる州の上院議員の候補者を僅差で破り、注目を集めました。

その後、ボルダック氏は過去の発言を撤回しましたが、民主党側は「選挙を否定する人物を選んではならない」などと攻勢を強めています。

ノースカロライナ州 中絶容認訴える団体が候補者を全面支援

南部ノースカロライナ州では上院議員選挙で、州の最高裁判所長官を務めた民主党の候補者と、トランプ前大統領が支持する共和党の候補者が激しく争っています。

ノースカロライナ州は東海岸のほぼ中央に位置し、たばこなどの伝統産業で知られる一方、有数の金融都市として知られる最大都市シャーロットや、大学とハイテク産業が連携する「リサーチ・トライアングル・パーク」と呼ばれる全米最大級の研究開発拠点があります。

伝統的に共和党が強い保守の地盤でしたが、都市部の人口増加に伴い近年では激戦州となっていて、2020年の大統領選挙ではトランプ氏が勝利しましたが、その差はわずか1ポイントあまりでした。

今回の中間選挙の上院議員選挙では現職の共和党議員の引退を受けて新人どうしの争いとなっていて、
▼民主党からは前の州最高裁判所長官のビーズリー氏が、
▼共和党からはトランプ氏が支持する連邦議会の下院議員のバッド氏が立候補しています。

選挙戦では、連邦最高裁判所がことし6月に人工妊娠中絶は憲法で認められた権利だとしたおよそ50年前の判断を覆したことを受けて、中絶容認を訴える団体が民主党のビーズリー氏に多額の献金を行うなど支援を強化しています。

事前の世論調査ではビーズリー氏がバッド氏を支持率で追い上げていて、上院の大勢を左右する州の1つとして注目を集めています。

ペンシルベニア州 上院選、知事選ともに激戦

東部ペンシルベニア州ではトランプ前大統領が支持する共和党の候補者と、民主党の候補者が上院議員選挙と知事選挙でそれぞれ激しい選挙戦を繰り広げていて、全米の注目を集めています。

ペンシルベニア州はかつて栄えた重工業が衰退し、さびついた工業地帯=「ラストベルト」と呼ばれる一帯に位置しています。選挙のたびに有権者の動向が揺れる「スイング・ステート」で、2020年の大統領選挙ではバイデン氏とトランプ氏が最終盤まで競り合った末、バイデン氏が勝利を収め、選挙の大勢が決まりました。

今回の中間選挙では上院議員選挙には
▼民主党から州の副知事を務めるフェターマン氏が、
▼共和党からトランプ氏が支持する、医師でみずからの名前を冠したテレビ番組の司会者を務めてきたオズ氏が立候補しています。

また、知事選挙には
▼民主党から州の司法長官のシャピーロ氏が
▼共和党からトランプ氏が支持する、元軍人で州上院議員のマストリアーノ氏が立候補しています。

上院議員選挙、知事選挙ともに全米の注目を集めていて、とりわけ、トランプ氏の支持を得て予備選挙を勝ち抜いた共和党の2人の候補者の動向に関心が集まっています。

このうち、上院議員を目指すオズ氏は予備選挙後、「トランプ色」を前面には出さなくなっていて、無党派層の取り込みを狙う戦略をとっていると見られています。

また、知事を目指すマストリアーノ氏は2021年1月に選挙結果などに不満を持つトランプ氏の支持者らが連邦議会に乱入した際、みずからも議会に足を運び、扇動した疑いなどで調査を受けた人物で、投票の厳格化や人工妊娠中絶の禁止などを訴えています。
一方の民主党側は、共和党の候補者の、トランプ氏との強い結びつきや資質を批判する戦略をとっています。

バイデン氏、トランプ氏ともにペンシルベニア州内に足を運んで大規模な集会を開いており、激しい選挙戦が繰り広げられています。

ウィスコンシン州 選挙のたびに結果が変わる


中西部ウィスコンシン州では上院議員選挙、州知事選挙ともに接戦となっています。

五大湖のひとつ、ミシガン湖に面する中西部ウィスコンシン州は、世界的な大型二輪車メーカー「ハーレー・ダビッドソン」の本社があるほか、酪農業が盛んなことでも知られます。

2016年の大統領選挙では共和党のトランプ前大統領が制し、おととしは民主党のバイデン大統領が勝利した、選挙のたびに結果が変わる、いわゆる「スイング・ステート」です。

今回の中間選挙では上院議員選挙に
▼民主党からウィスコンシン州副知事のバーンズ氏、
▼共和党からトランプ氏が支持する現職のジョンソン氏、

州知事選挙に
▼民主党から現職のイーバーズ氏、
▼共和党からはトランプ氏が支持する会社経営者のマイケルズ氏がそれぞれ立候補し、いずれも激しい選挙戦となっています。

このうち州知事選挙はその勝敗が有権者の投票権の行方にも影響を与える可能性があるとして注目されています。投票権をめぐっては共和党が投票条件の厳格化を求めているのに対し、民主党は抑圧につながるとして反発しています。

ウィスコンシン州では不在者投票での本人確認の徹底などを盛り込んだ法案が州議会で可決されたものの民主党のイーバーズ知事が署名せず、法律は成立しませんでした。今回の選挙で共和党のマイケルズ氏が勝利した場合、2024年の大統領選挙に向けて、投票条件を厳格化する方向で州法の改正が進められるのではないかという見方が出ています。

オハイオ州 トランプ氏支持のベストセラー作家に注目

中西部オハイオ州ではトランプ前大統領の支持を弾みに予備選挙を勝ち抜いたベストセラー作家の共和党の候補者に注目が集まっています。

オハイオ州は選挙のたびに有権者の動向が揺れる「スイング・ステート」とされていますが、最近の大統領選挙では2016年、2020年ともに共和党のトランプ氏が勝利しています。

今回の中間選挙では上院議員選挙に
▼民主党から連邦議会の下院議員のライアン氏が、
▼共和党からトランプ氏が支持する作家で、政治経験がないバンス氏が立候補しています。

このうちバンス氏は6年前、かつて重工業が盛んだった「ラストベルト=さびついた工業地帯」に暮らす白人労働者層の実像を描き、ベストセラーとなった「ヒルビリー・エレジー」の作者として知られています。
かつてはトランプ氏を批判していましたが、選挙への立候補にあたり、過去の発言を撤回してトランプ氏の支持を獲得。混戦模様だった共和党の予備選挙を勝ち抜きました。

今回の選挙ではライアン氏とバンス氏が激しく争っていて、トランプ氏の影響力を占う上でも有権者の判断に関心が集まっています。

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