2022年5月25日
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【詳しく】北朝鮮 なぜこんなにミサイル撃つ?新型とは 思惑は

2022年に入り、かつてないペースでミサイル発射を続ける北朝鮮。3月24日に発射した弾道ミサイルについて、25日、新型のICBM=大陸間弾道ミサイル「火星17型」の発射実験に成功したと発表しました。北朝鮮が弾道ミサイルなどの飛しょう体を発射したのは、2022年に入って、ロケット砲を除いて11回目です。

相次いでミサイルを発射する北朝鮮の思惑とは。
「世界最大級の移動式ICBM」と言われる「火星17型」とは。

詳しく解説します。
(国際部記者 鈴木陽平)

※この記事は2022年3月25日に公開されたものです

2022年に入ってどれだけ発射?

北朝鮮は2022年に入って15発の弾道ミサイルを発射しています。キム・ジョンウン(金正恩)総書記の父親のキム・ジョンイル(金正日)氏のときに発射した弾道ミサイルが17年間で16発だったのをみても、いかに多いかが分かります。(※現在の金正恩体制になってからの通算では100発余りに上ります。)

25日付けの北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は1面で、「きのう、キム・ジョンウン総書記の立ち会いのもと、新型のICBM『火星17型』の発射実験に成功した」と発表しました。北朝鮮が「火星17型」の発射を発表したのは、これが初めてです。

4年もなかったICBM級の本格的発射 短期間に相次ぐ

このICBM級の弾道ミサイルの発射、実は一時、見られなくなっていました。2017年の7月から11月にかけては、いずれもICBM級の「火星14型」2発(2017年7月4日、7月28日)と「火星15型」1発(11月29日)が発射されました。

このあと4年余りの間、ICBM級の発射はありませんでしたが、北朝鮮は2022年の2月末から3月にかけて、今回の「火星17型」を含めて4回にわたって発射しました。

1回目は2月27日、首都ピョンヤン郊外のスナン付近から弾道ミサイル1発を発射し、北朝鮮は翌日(28日)「偵察衛星の開発のための重要な実験を行った」と発表しました。

2回目はその6日後の3月5日。同じスナン付近から弾道ミサイル1発を発射し「再び偵察衛星の開発のための重要な実験を行った」と発表し、防衛省はいずれも、ICBM級だったと分析しています。

続いて3回目は3月16日でした。同じスナン付近から弾道ミサイルと推定される飛しょう体を発射しましたが、直後に空中爆発して失敗したとみられていて、韓国軍は、ICBMに関連した発射だった可能性があるとの見方を示していました。

そして今回で4回目の発射です。北朝鮮は短期間で4回ものICBM級の弾道ミサイルを発射したことになります。

新型ICBM「火星17型」の発射にはどんな意味があるの?

今回発射された「火星17型」は、専門家から「世界最大級の移動式ICBM」と言われています。

これまで北朝鮮の最大のミサイルは、2017年11月29日に日本海に向けて発射したICBM級の「火星15型」でした。

片側9輪の移動式発射台から発射され、北朝鮮は「53分間にわたって飛行して、高度は4475キロに達し、飛行距離は950キロだった」と発表していました。韓国国防省は、射程が最大で1万3000キロを超え、アメリカの首都ワシントンまで到達可能だと分析していました。

また、2017年7月に発射されたICBM級だとする「火星14型」は、移動式発射台が片側8輪です。

今回の「火星17型」は、片側11輪の移動式発射台から発射され、北朝鮮は「最高高度は6248.5キロに達し、1090キロの距離を1時間7分32秒飛行した」と発表しています。

防衛省は、弾頭の重さにもよりますが、1万5000キロを超える射程で、アメリカの東海岸を含めた全土が射程に含まれる可能性があると分析しています。専門家は北朝鮮がアメリカに圧力をかけていると分析しています。

なぜアメリカに圧力をかけるの?

北朝鮮の非核化をめぐるアメリカと北朝鮮の間の交渉が行き詰まっていることが背景にあります。

史上初の米朝首脳会談の後、北朝鮮は非核化の措置を進める見返りに経済制裁を緩和すること、そして、米韓合同軍事演習の中止など「敵視政策」を撤回することを求めてきました。

しかし、バイデン政権は対話の再開を呼びかけつつもこうした北朝鮮の要求には応じず、1月12日には核・ミサイル開発などに関わったとされる北朝鮮の機関の関係者らに対する新たな制裁を発表しました。

こうした姿勢に北朝鮮は反発を強め、2022年1月19日の朝鮮労働党の政治局会議では、ICBMの発射実験や核実験の中止について、見直しを検討することを示唆していました。

北朝鮮は、アメリカとの史上初の首脳会談を前にした2018年4月にICBMの発射実験と核実験の中止を表明していましたが、今回のICBM級の本格的な発射は2017年11月の「火星15型」以来となります。北朝鮮が示唆したとおり、ICBMの発射実験の中止を見直したことが明確になった形です。

北朝鮮のねらいは?

北朝鮮政治が専門の慶應義塾大学の礒崎敦仁教授は、北朝鮮が相次いでミサイルを発射している背景について「3回もの首脳会談を行ったトランプ政権が終わり、現在のバイデン政権はどうやら北朝鮮の問題に関心がないとわかってきた。北朝鮮としては、何に対しても遠慮することなく軍事力の強化を進めていると考えられる」として、アメリカに対する抑止力を強化することが目的だとしています。

そして、「国防力の強化を掲げる北朝鮮にとっては既定路線の行動だ」と指摘したうえで、2021年1月に打ち出された「国防5か年計画」に沿って今後も発射実験を継続して、核・ミサイル開発を強化していくとする見方を示しました。

今回の「火星17型」の発射について、キム総書記は「強力な核戦争抑止力を質・量ともに持続的に強化する。アメリカ帝国主義との長期的な対決に徹底して準備していく」と述べ、アメリカを強くけん制しています。

ウクライナ情勢の影響も?

また、礒崎教授は、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻との関連について、「北朝鮮はウクライナ情勢を非常に注意深く観察している」とする見方を示しています。

そのうえで「核兵器を持ち、軍事力を強化してこそ、国外からの侵略から自国を守ることができるとの思いを強くしたことは間違いない」と述べ、ウクライナ情勢が北朝鮮の軍事力強化の姿勢を一層、後押ししていると指摘しました。

どんなミサイルを開発しているの?

北朝鮮は2021年1月の党大会で、「最強の軍事力を確保しなければならない」として「国防5か年計画」を打ち出しました。それに基づいて、新型兵器の開発を進め、2022年に入ってさまざまな種類のミサイルを発射しました。

※「戦術誘導弾」だとする短距離弾道ミサイル(1月14日・17日・27日発射)

従来のミサイルより高度が低く、変則的な軌道で飛行し、迎撃するのが難しいと指摘されています。

1月14日の発射は「鉄道機動ミサイル連隊」による列車からの発射で、移動式の発射台では難しい山岳地帯などからも発射できるようになります。

※長距離巡航ミサイル(1月25日発射)

放物線を描く弾道ミサイルとは異なり、低空かつ飛行中に経路を変えることができる、命中精度が極めて高いミサイルです。

1月25日の発射では内陸部から相当な距離を飛行したとされていて、北朝鮮は「2時間32分17秒飛行し、1800キロ先の目標の島に命中した」と発表しました。

※「極超音速ミサイル」と主張する弾道ミサイル(1月5日・11日発射)

極超音速ミサイルとは音速の5倍にあたるマッハ5以上、東京ー大阪間をおよそ5分で移動する速さで飛行できるミサイルです。

長時間、低い軌道でコースを変えながら飛ぶため、探知や迎撃が困難になり、アメリカや中国、ロシアなどが開発にしのぎを削っています。

韓国軍による初期の分析では、2021年9月に初めて発射実験を行ったときは飛行距離は200キロに満たず、速度もマッハ3前後にとどまったとみられています。

しかし1月5日のミサイルはマッハ5以上と韓国メディアは伝えたほか、1月11日のミサイルについては最高速度マッハ10前後、飛行距離も700キロ以上だったとして、韓国軍は「技術的に進展している」としています。

※中距離弾道ミサイル「火星12型」

液体燃料を用いるとみられ、北朝鮮が「アメリカ太平洋軍の司令部があるハワイと、アラスカを射程に収めている」と主張する中距離弾道ミサイルです。

防衛省は射程が最大で5000キロに達すると分析しています。

今後もミサイル発射は続くの?

北朝鮮は、4月11日にキム総書記の朝鮮労働党トップへの就任10年、4月15日にはキム総書記の祖父キム・イルソン(金日成)主席の生誕110年などの重要な節目を控えています。

さらに北朝鮮が反発する米韓合同軍事演習も近く行われる見通しです。

3月11日付けの「労働新聞」は、キム総書記が北西部トンチャンリ(東倉里)にある「ソヘ(西海)衛星発射場」を視察し、偵察衛星などを「大型運搬ロケット」で打ち上げられるよう、施設の改修や拡張を指示したと伝えました。

北朝鮮が2018年5月に坑道などを爆破し閉鎖したとしていた北東部プンゲリ(豊渓里)の核実験場について、アメリカの専門家は、3月4日に撮影された衛星写真を分析した結果、新たな建物を建設するなど復旧作業とも受け取れる動きを見せていると指摘しています。

これらのことから、北朝鮮が「偵察衛星の打ち上げ」と称してICBM級のさらなる発射などを強行する可能性も指摘されていて、関係国の警戒が一段と強まっています。

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