2022年5月25日
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北朝鮮 なぜこんなにミサイル撃つ? 思惑は 【11月24日改訂版】

2022年に入り、かつてないペースでミサイル発射を続ける北朝鮮。
11月3日には、ICBM=大陸間弾道ミサイル級の可能性がある弾道ミサイルを発射し、その2週間後の11月18日には、新型のICBM級の「火星17型」の発射実験に成功したと発表しました。
北朝鮮が弾道ミサイルなどを発射したのは、2022年に入って30回以上。
相次いでミサイルを発射する北朝鮮の思惑とは。詳しく解説します。

(国際部記者 近藤由香利 / 中国総局記者 石井利喜)

2022年に入ってどれだけ発射?

韓国軍の発表をもとにまとめると、北朝鮮は2022年に入って弾道ミサイルなど少なくとも85発以上を発射しています。キム・ジョンウン(金正恩)総書記の父親のキム・ジョンイル(金正日)氏のときに発射した弾道ミサイルなどが17年間で16発。その5倍あまりのミサイルを発射したことになります。

日本政府や韓国軍によりますと、10月4日には、北部ムピョンリ(舞坪里)付近から弾道ミサイル1発が発射され、青森県付近の上空を通過したあと、日本の東およそ3200キロのEEZ=排他的経済水域の外側に落下したと推定されています。

北朝鮮の弾道ミサイルが日本の上空を通過するのは、2017年9月以来、およそ5年ぶりでした。

これについて韓国軍は、発射されたのは中距離弾道ミサイルで、飛行距離がおよそ4500キロ、高度はおよそ970キロ、速度は音速の17倍にあたるマッハ17に達したと発表しました。防衛省は中距離弾道ミサイル級の「火星12型」と同型の可能性があるとしています。

北朝鮮はアメリカの原子力空母を展開して共同訓練を行った日米韓3か国に警告を送るため、10月9日までの15日間、キム総書記の立ち会いのもと、戦術核運用部隊が弾道ミサイルを7回発射する訓練を行ったと発表しました。

日本の上空を通過した弾道ミサイルについては「新型の地対地中長距離弾道ミサイル」だったとした上で、4500キロ先の太平洋上に設定された目標水域を攻撃したと発表しました。

さらに11月3日には合わせて6発の弾道ミサイルが発射され、このうち午前中に首都ピョンヤン郊外のスナン(順安)付近から発射された1発について、日本政府はICBM級の弾道ミサイルの可能性があるとしています。

北朝鮮は11月5日までの4日間、米韓空軍の大規模訓練に対応する「軍事作戦」を行ったとした上で「敵の作戦指揮システムをまひさせる、特殊機能弾頭の動作の信頼性を検証するため、重要な発射実験を行った」と発表しました。

「労働新聞」に掲載された 「火星15型」に似たミサイル

北朝鮮のメディアは、2017年11月に発射した「火星15型」に似たミサイルの写真を公開したのに対して、韓国軍は「火星17型」が正常に飛行せず失敗したと分析しています。

そして11月18日もICBM級の弾道ミサイル1発が通常より角度をつけて高く打ち上げる「ロフテッド軌道」で発射され、最高高度はおよそ6000キロに達し、およそ69分間飛行したあと、北海道の渡島大島の西、およそ200キロの日本のEEZの内側に落下したとみられています。

北朝鮮は翌日、「火星17型」の発射実験に成功したと発表しました。キム総書記は、リ・ソルジュ(李雪主)夫人と、「愛するお子様」として、初めて公開された娘とともに発射実験に立ち会った写真も公開されました。

キム総書記は、アメリカの核戦力などで同盟国を守る「拡大抑止」の強化などを非難した上で「敵が威嚇を続けるならば、核には核で、正面対決には正面対決で応える」と述べ、 アメリカや韓国などへの対決姿勢を強調しました。

「火星17型」を発射する北朝鮮のねらいは?

11月18日取材

北朝鮮情勢に詳しい南山大学の平岩俊司教授は、11月13日に行われた日米韓3か国の首脳会談で、アメリカが「拡大抑止」を強化するなどとした共同声明を発表したことへの対抗措置として発射したのだろうと分析しています。

北朝鮮のチェ・ソニ外相は発射の前日、日米韓3か国の首脳会談を非難する談話を発表し「アメリカが同盟国への『拡大抑止の強化』に執着し、朝鮮半島や周辺地域で挑発的な軍事的活動を強化すればするほど、われわれの軍事的対応はさらに猛烈になる」として、強くけん制したばかりでした。

北朝鮮情勢に詳しい 南山大学 平岩俊司教授

平岩教授
「アメリカの『拡大抑止』の強化の動きに関して、北朝鮮とすれば、当然警戒を強めて、『自分たちは一歩も引かない』と、むしろアメリカを中心とする国際社会がより強く出れば出るほど、北朝鮮としてはより強硬な形で緊張感を高めて行くということで、ICBMの発射実験もその一環として考えるべきだろう」

また、対話を呼びかけるアメリカのバイデン政権に対して、米韓合同軍事演習の中止や経済制裁の緩和などが望めないなか、2021年1月にキム総書記が打ち出した「国防5か年計画」に従って、ミサイルなどの発射を繰り返しているという見方を示しました。

この計画では、短距離弾道ミサイルなどの射程の短い兵器で相手の軍事拠点などを攻撃する「戦術核兵器」や、ミサイルに複数の弾頭を積む「多弾頭化」の開発、アメリカ全土を射程にできる、長距離弾道ミサイルの1万5000キロ圏内の命中精度の向上などを盛り込んでいます。

平岩教授
「北朝鮮としては、いまはアメリカのバイデン政権と交渉するという状況ではないと判断していて、国防力の強化に全身全霊を傾けているタイミングなのではないか。北朝鮮がことし3月に『火星17型』の発射実験に成功したと発表していたが、成功したかどうか含めて懐疑的な見方があるなか、より安定的に運用できるような形での技術開発の目標もあったのだろう」

どんなミサイルを開発しているの?

北朝鮮は「最強の軍事力を確保しなければならない」として、朝鮮労働党の創立から80年の節目にあたる2025年までの「国防5か年計画」を打ち出し、これに基づいて、新型兵器の開発を進め、ことしに入ってさまざまな種類のミサイルを発射しました。

中距離弾道ミサイル「火星12型」

液体燃料を用いるとみられ、北朝鮮が「アメリカ太平洋軍の司令部があるハワイと、アラスカを射程に収めている」と主張する中距離弾道ミサイルです。

防衛省は射程が最大で5000キロに達すると分析しています。首都、ピョンヤンを中心に半径5000キロの円を描くと、アメリカ軍の拠点があるグアムに加え、インドの首都、ニューデリーもその中に含まれます。

「戦術誘導弾」だとする短距離弾道ミサイル
(1月14日・17日・27日発射、9月29、10月1日、10月6日、11月2日・3日・5日発射か)

従来のミサイルより高度が低く、変則的な軌道で飛行し、迎撃するのが難しいと指摘されています。ロシアの短距離弾道ミサイル「イスカンデル」の改良型やアメリカが保有する「ATACMS」(エイタクムス)という短距離弾道ミサイルに類似しているという指摘が出ています。

1月14日の発射は「鉄道機動ミサイル連隊」による列車からの発射で、移動式の発射台では難しい山岳地帯などからも発射できるようになります。

北朝鮮は、10月9日までの戦術核運用部隊による訓練で、敵の主要な軍事指揮施設への攻撃を想定して戦術弾道ミサイルを発射したと発表しました。

また、11月5日までの米韓空軍の大規模訓練に対応するための「軍事作戦」では、敵の空軍基地などへの攻撃を想定して、戦術弾道ミサイルを相次いで発射したと発表していて、「戦術誘導弾」と似たミサイルの発射やミサイルを島に撃ち込む写真を公開しました。

長距離巡航ミサイル(1月25日・10月12日発射)

放物線を描く弾道ミサイルとは異なり、低い高度で長時間飛行し、レーダーで捉えるのが難しいうえに命中精度が高いとされるミサイルです。

1月25日の発射では内陸部から相当な距離を飛行したとされていて、北朝鮮は「2時間32分17秒飛行し、1800キロ先の目標の島に命中した」と発表しました。

10月12日には、西部ピョンアン(平安)南道から朝鮮半島西側の黄海に向けて2発が発射され、北朝鮮は「だ円や8の字の軌道で2時間50分34秒飛行し、2000キロ先の目標に命中した」と発表しました。また、戦術核運用部隊に戦術核の搭載を想定して実戦配備されていると主張しています。

このほか、北朝鮮は北東部ハムギョン(咸鏡)北道から「戦略巡航ミサイル」2発を、韓国南東部ウルサン(蔚山)の沖合80キロ付近の公海に向けて11月2日に発射したと発表しました。北朝鮮は「南が公海上に空対地誘導弾や滑空誘導爆弾で射撃した」ことへの対抗措置だったと主張しています。一方、韓国軍はこのミサイルについて「探知していない」としています。

「極超音速ミサイル」と主張する弾道ミサイル(1月5日・11日発射)

極超音速ミサイルとは音速の5倍にあたるマッハ5以上、東京ー大阪間をおよそ5分で移動する速さで飛行できるミサイルです。

長時間、低い軌道でコースを変えながら飛ぶため、探知や迎撃が困難になり、アメリカや中国、ロシアなどが開発にしのぎを削っています。

韓国軍による初期の分析では、2021年9月に初めて発射実験を行ったときは飛行距離は200キロに満たず、速度もマッハ3前後にとどまったとみられています。

しかし1月5日のミサイルはマッハ5以上だったと韓国メディアは伝えたほか、1月11日のミサイルについては最高速度マッハ10前後、飛行距離も700キロ以上だったとして、韓国軍は「技術的に進展している」としています。

新型ICBM「火星17型」発射の意味は?

「火星17型」は専門家から「世界最大級の移動式ICBM」と言われています。

アメリカの東海岸を含めた全土が射程に含まれる可能性があるミサイルを発射することで、アメリカに圧力をかけていると専門家は分析しています。

北朝鮮によるICBM級の発射は2017年以来、4年余りの間ありませんでした。アメリカとの関係が行きづまる中、2022年2月末(すえ)から11月までの間にICBM級やその可能性がある弾道ミサイルを7回にわたって発射。

このうち、開発を強化しているとされるのが「火星17型」です。北朝鮮は、3月24日に最高高度が6000キロを超え、これまでで最もない71分飛行する弾道ミサイル1発を発射し、翌日、「火星17型」の発射実験に初めて成功したと発表しました。そして11月18日にも発射実験に成功したと発表し「世界最強の戦略兵器としての威力ある性能が検証された」と誇示しました。

「火星17型」は、片側11輪の移動式発射台から発射され、エンジンのノズルが4つあるのが特徴です。2017年7月に発射されたICBM級の「火星14型」は片側8輪、2017年11月に発射された「火星15型」が片側9輪の移動式発射台に搭載されているのと比べるとより大型化しています。射程についても「火星15型」が韓国国防省は最大で1万3000キロを超えるとしているのに対して、「火星17型」は1万5000キロを超え、アメリカ全土が射程に含まれると推計されています。

ただ、大気圏の再突入の技術など課題は残されていると指摘されていて、2月と3月に「偵察衛星の開発」のためと発表された弾道ミサイルや、5月に発射された弾道ミサイル1発についても「火星17型」とみられ、専門家からは発射を繰り返すことで技術の向上を図っているという見方が出ています。

今後の焦点は?

11月18日取材

核と弾道ミサイルの開発をいわば車の両輪として進める北朝鮮がいつ7回目の核実験を行うかです。

平岩教授は、北朝鮮の後ろ盾であり、これまで核実験に反対してきた中国で共産党大会が終わり、北朝鮮が効果的なタイミングを見計らっていると指摘しています。

南山大学 平岩俊司教授
「北朝鮮の国防力強化の方針の中にICBMの多弾頭化も目標に入っているので、北朝鮮とすれば、この火星17型の技術向上を目指していて、その先に当然、多弾頭化を実現するためには7回目の核実験が必要になってくるとみられていて、今の国際情勢を見ながら、どこかのタイミングで核実験を行ってくるのだろう。その危険性を国際社会は十分注意する必要がある」

一方、その国際社会について、平岩教授は「今の国際情勢、とりわけ国連の安全保障理事会はロシアのウクライナへの軍事侵攻をめぐる対立で機能不全に陥っているので、北朝鮮に対して国際社会が共同して強い立場で臨むということができない。そしてこうした状況は、北朝鮮からすればさまざまな実験や訓練を行うのにやりやすい環境になっている」と

として、アメリカと中国・ロシアの対立が深まる中、北朝鮮の核開発に一定の歯止めをかけてきた国連安保理で一致した対応が取れてないことへの影響を懸念しています。

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