2023年1月12日
韓国 朝鮮半島

どうなる?2023年の日韓関係 「徴用」は?安全保障協力は?

戦後最悪と言われるまで冷え込んだ日韓関係は2022年に韓国でユン・ソンニョル(尹錫悦)政権が発足して以降、韓国側が関係改善に向けた意欲を見せていて、11月にはおよそ3年ぶりとなる日韓首脳会談が行われました。

太平洋戦争中の「徴用」をめぐる問題をはじめ懸案が山積する中、2023年の日韓関係はどうなるのか。

2人の専門家に展望を聞きました。

(国際部記者 近藤由香利)

日韓関係の展望をどう見るか?

慶應義塾大学 西野純也教授
「特に日韓の懸案である、いわゆる徴用工をめぐる現金化の問題については、2022年11月の日韓首脳会談で早期解決を目指すということで一致をしているので、できるだけ早い段階での妥結を目指すのではないかと見ています」

静岡県立大学 奥薗秀樹教授
「ユン政権になってから、明確に韓国側の姿勢が大きく変わりました。日韓関係がいよいよ本来の正常な軌道に戻っていくための動力が少しずつ働き始めているという状況なので期待したいと考えています」

「徴用」をめぐる問題は早期解決できるか?

慶應義塾大学 西野純也教授
「ユン政権は国際社会での韓国の役割を重視する政権で、日本との問題を与野党対立や韓国政治には使わないということが特徴です。
国内政治的には少数与党であり支持率が低いものの、就任してから半年以上、一貫して日韓関係の改善に力を注いでいるというところは率直に評価をした方がいいと思います。
ここまで難しい国内政治の状況で、非常に敏感な日韓関係の改善を力強く訴えて努力をしている政権が誕生しているということは、日本にとっても非常に意味のあることなので、この機会を逃してはいけないと思います」

静岡県立大学 奥薗秀樹教授
「問題への対応は若干、急ぎすぎかなという気がしていています。これ以上速度を上げると転倒しかねないと心配しています。
力ずくで妥結する形になってしまうと(2015年の)『慰安婦合意』の二の舞ですから、そこは慎重に、あまり前のめりになりすぎずに、双方が国内でそれなりの説明が出来るような妥結をはかることが大事です。
ことしの早い段階で何としても妥結しないといけないという形で急ぎすぎるのは、個人的にはいかがなものかなと思っています」

「徴用」をめぐる問題、両政府に求められていることは?

慶應義塾大学 西野純也教授
「合意や解決方法を導いていく今の外交プロセスも重要ですが、むしろ妥結をした、あるいは解決案が提示された後の国内的な説得や説明のプロセスが重要になると思います。いわゆる『慰安婦合意』が不幸な形になってしまった教訓から、再びそうならないように、とりわけユン大統領が国内で丁寧に説得や説明をする努力が必要になると思います。
また、日本側は、韓国の政治状況が非常に厳しい中で、ユン政権がこれだけ改善に力を尽くしているというところを評価して、岸田総理大臣が政策を決断していく必要があると思います」

静岡県立大学 奥薗秀樹教授
「最も重要な鍵となるのは、韓国の国内の分断をいかに克服するかだと思います。
ユン政権はわずかな差で勝利して当選した大統領であり、国会は少数与党で非常に厳しい条件の中なので、韓国側が日本に押し切られて全面譲歩したというようなイメージ、日本が一方的にひとり勝ちしたというようなイメージを与えないよう、日本側も協力しながら妥結しなければだめだと思います。
韓国の野党勢力が納得はできないけど受け入れざるを得ない、これは認めざるを得ないみたいな形を韓国国内でいかに作るかが求められます」

両国の安全保障協力はどのように進めていくべきか?

慶應義塾大学 西野純也教授
「日本も韓国もアメリカも、今の状況のなかでいわゆる防衛力と抑止力の強化に努めざるを得ないと思いますし、共同訓練といった動きは今の状況のなかでは適切な措置であると思います。
ことしもこの流れは基本的に続いていくと思います。しかし、外交オプションは捨てるわけにはいかないですし、今後は防衛抑止の側面だけでなく、対話にいかに引き出すのか、あるいはどういう形で北朝鮮を非核化の道に戻すのかという政策についても3か国が協力をして、より包括的な対北朝鮮政策を協議して作っていく必要があります」 

静岡県立大学 奥薗秀樹教授
「両国とも、北朝鮮の状況を考えるとなんとかしないといけないという認識は間違いなく共有しているので、歴史問題も含めて日韓関係はいろいろ摩擦もありますが、安全保障は別だと双方が肝に銘じるべきだと思います」

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