Q.「心筋炎」や「心膜炎」の報告、ワクチン接種との関係は?

A.
モデルナとファイザーの新型コロナウイルスのワクチンはいずれも「mRNAワクチン」と呼ばれるタイプのワクチンで、接種したあとに、ごくまれに「心筋炎」や「心膜炎」を発症するケースが報告されています。

これについてモデルナやファイザーは「接種との因果関係は不明」としたうえで、胸の痛みや呼吸困難などが起きた場合は、速やかに医療機関を受診するよう添付文書で注意喚起を行っています。

心筋炎は心臓の筋肉=心筋に炎症が起こるもので、どうきや息切れ、胸の痛みなどの症状が表れることがあり、重い場合は心不全や不整脈などにつながることがあります。

ワクチン接種後の心筋炎については接種が比較的早く始まったイスラエルやアメリカから報告が寄せられました。

このうちアメリカのCDC=疾病対策センターによりますと、2021年10月27日の時点で新型コロナのワクチンを接種したあとに「心筋炎」や「心膜炎」になったという報告は1784件となっていて、ほとんどがmRNAワクチンで特に若い男性で多いということです。

2021年10月6日までのデータで「心筋炎」などの発生率を計算すると、男性の場合、いずれも接種100万回当たりで
▼ファイザーのワクチンの2回目の接種後では
▽12歳から15歳で39.9回
▽16歳から17歳で69.1回
▽18歳から24歳で36.8回
▽25歳から29歳で10.8回
▼モデルナのワクチンの2回目の接種後で
▽18歳から24歳で38.5回
▽25歳から29歳で17.2回だったということです。

一方、女性では、
▼ファイザーのワクチンの2回目の接種後で
▽16歳から17歳で7.9回
▼モデルナのワクチンの2回目の接種後で
▽25歳から29歳で5.7回などとなっています。

国内については、厚生労働省によりますとワクチンの接種後に「心筋炎」などが報告された男性は、いずれも100万人当たりで2021年10月3日までに
▼ファイザーでは
▽10代で3.7件
▽20代で9.6件
▽30代で2.8件
▼モデルナのワクチンでは、
▽10代で28.8件
▽20代で25.7件
▽30代で4.4件などとなっています。

この「心筋炎」などとワクチン接種の関係はまだはっきりとは分かっていません。

アメリカの科学雑誌「サイエンス」は、2021年6月1日付けのオンライン記事で、原因は明らかになっていないとしたうえで、ワクチンによってできる抗体の量が多いため免疫が過剰に働いて心臓に炎症が起きるのではないかという考え方を紹介しています。

こうした心筋炎について、厚生労働省はウェブサイトで「軽症の場合が多く、心筋炎や心膜炎のリスクがあるとしても、ワクチン接種のメリットの方がはるかに大きいと考えられている」としています。

そのうえで、10代と20代の男性に対しては心筋炎などのリスクについて情報提供をしたうえでファイザーかモデルナかを選択してもらえるよう自治体に周知しているということです。

この際、1回目にモデルナのワクチンを接種した人も、2回目はファイザーに切り替えることができるということです。

また、日本循環器学会も2021年7月の声明で、ワクチンを接種したあとの心筋炎の発生率は極めて低く大半は軽症だとして、ワクチン接種による利益は心筋炎のリスクを大幅に上回るとしました。

日本循環器学会の新型コロナ特命チームの委員長で佐賀大学の野出孝一教授は、心筋炎による症状は人によってさまざまだとしたうえで「ワクチンを接種したあとに動悸や息切れ、胸の痛みなどが出た場合や体のだるさ、胸の圧迫感などの症状が1週間近く続くなどふだんと違う症状や違和感がある場合は、かかりつけ医などを受診してほしい。心筋炎が起きたとしても多くの場合は軽症で、薬を服用したり安静にしたりすることで収まっていくと考えられる」と話しています。

(2021年11月5日時点)