見てもらえるまでやり続ける

古橋亨梧

サッカー

サッカー日本代表の古橋亨梧。ワールドカップカタール大会に向かう日本の攻撃のキーマンとして、大きな期待を集めて臨んだ2022年6月の強化試合は、3試合に出場して無得点に終わった。

「まだまだパスが出てこないので、もっともっとコミュニケーションをとって、しっかり動きながら僕のプレーを理解してもらわないといけない」

27歳の古橋は、相手との駆け引きから一瞬のスピードでディフェンスの背後に抜け出す動きと卓越したシュートテクニックが持ち味。昨シーズンからスコットランドの強豪、セルティックに所属し、移籍1年目から攻撃の中心として、リーグ3位の12得点をマークした。

古橋が自身の運命を変える出来事になったと振り返るのが、4年前、J1のヴィッセル神戸への移籍。世界屈指の司令塔、アンドレス・イニエスタとの出会いだ。
大学まで、ケガもあって、目立った実績を残せず、プロのキャリアもJ2のクラブからだった。
ヴィッセルでは、古橋の数秒先の動きを読んだかのようなパスがイニエスタから出てくる。そのパスを受け続ける中で、抜け出しの動きを磨き上げ、ゴールを量産。日本選手屈指のストライカーへと成長を遂げたのだ。

古橋はイニエスタのことを“兄貴”と慕い、6月の強化試合の代表活動を終えたあとも神戸まで会いにいった。

「動き出しのところの駆け引きは神戸で学んだことがセルティックでも武器になっている。イニエスタ選手と一緒にやれたことで自信がものすごくついた。自信を持ってプレーをできているからこうやって少しずつ結果を残せていると思う」

イニエスタとは「言葉を交わさなくても心が通じているようだった」という古橋。
セルティックでも味方の理解を得てゴールを重ねたが、日本代表ではまだその持ち味を生かし切れていない。

6月の強化試合の第2戦、最も重視されたブラジル戦。
先発起用された古橋は味方がボールを持つと相手のディフェンスの背後への動きを繰り返したが、パスは出てこなかった。ボールを持つ選手とタイミングが合わず一度も決定的な場面は作れなかった。

そして、ほかの試合でも、同じような状況が続き、出場した3試合を通じてシュートはたった3本だった。
実は古橋はことし2月と3月の最終予選はケガのため出場できず、今回の強化試合がおよそ半年ぶりの代表活動だった。代表で持ち味を出すために足りないのは“時間”だった。

「いくら口でコミニケーションとっても試合でプレーで見せないと分かってもらえないと思っている。なかなかボールが来ないことが多かったとしても何回も走り出して、ちょっとでも視野の端っこでもちらっと動くように見えたらそれは一歩前進だと思っているので、時間は短いが見てもらえるまでやり続けないといけないなと思った」

ワールドカップまで残された時間は限られている。
その中でどれだけ味方と“心を通わせられるか”が古橋にとっての鍵となる。

「ワールドカップをまだ僕は経験したことがないですけれど、行けば自分の人生が変わると思うので何がなんでも行きたい」

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