“絶対大丈夫”とひと言言って打席に、マウンドに入ってください

高津臣吾

野球

2021年シーズン、セ・リーグを6年ぶりに制し、日本シリーズではオリックスと連日熱戦を繰り広げ、20年ぶりの日本一に輝いたヤクルト。

高津監督は就任2年目の今シーズン、去年まで2年連続最下位のチームを立て直し、一気に頂点へと駆け上がった。

「勝ったことに対して、すごくほっとしている。今回の日本シリーズは毎試合すごく競ったゲームだったので本当に疲れたし、充実感でいっぱい」

今シーズンのヤクルトは、最初からすべてが順調だったわけではない。
開幕カードでは阪神に3連敗。3月末には青木宣親選手など、主力のベテラン3人が新型コロナの濃厚接触者となり、2週間離脱するアクシデントにも見舞われた。阪神、巨人と上位争いを繰り広げるが、なかなか首位に立てず、終盤戦まで2位と3位を行き来する展開だった。

転機となったのが3位で迎えた9月7日。首位、阪神戦とのカード初戦だ。試合前、高津監督が全選手を激励したときのある“ことば”が大きな話題となった。

「周りのチームメートを信じ、チームスワローズが一枚岩でいったら絶対崩れることはない。“絶対大丈夫”。どんなことがあっても僕らは崩れない。これでことし戦ってきた。“絶対大丈夫”とひと言言って打席に、マウンドに入ってください」

高津監督のこの呼びかけに選手たちは背中を押され、今シーズン初めて阪神との3連戦で勝ち越した。そして勢いに乗って9月下旬に初めて首位に立ち、最後まで首位を明け渡すことなくセ・リーグを制し、日本一も勝ち取った。
日本一を決めた直後、グラウンドで行われた優勝監督インタビュー。
高津監督は“ある人”の姿を思い浮かべこう口にした。

「本当に応援してくれたファンの皆さん、そして選手諸君、球団スタッフの皆さんに心から感謝、感謝、感謝です」

高津監督が3回繰り返した“感謝”。
これは、平成5年にヤクルトが日本一になった際、野村克也監督が優勝監督インタビューで語った言い回しと同じだった。選手時代、自分を抑えとして大きく成長させてくれ、2020年2月に亡くなった恩師への思いがあった。

「感謝していますし、野村監督のことばをお借りして述べさせていただいた。勝ったら言おうと思っていた」

高津監督は12月に行われた野村克也さんをしのぶ会でも弔辞を読み、たくさんの思い出をユーモアを交えて紹介。このときも「感謝、感謝、感謝」という言葉で締めた。

「ことし日本一になったこと、すべて野村監督が仕組んだことなのかな。(『感謝』は)簡単で短いがいろんなことが詰まったことば。心から褒めてくれないでしょうが、『おめでとう』と言ってくれると思う」

チームは短いオフに入り、年明け2月のキャンプからリーグ連覇に向けて動き始める。新シーズンも“野村イズム”を受け継いだ指揮官のひと言ひと言から目が離せない。

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