強くならないと、けがする前の自分を超えられない

宇良

大相撲

角界の人気者がどん底からはい上がり、3年ぶりに関取に復帰した。28歳の宇良、持ち味はなんと言っても多彩な取り口だ。身長1m75cmの小柄な体で珍しい技を決めてきた。平成29年初場所、十両の土俵で見せた「たすき反り」は、十両以上で初めての決まり手。初土俵から2年で新入幕を果たし、幕内3場所目では横綱 日馬富士を破る金星を挙げた。

土俵を沸かせ人気もうなぎ登り、順調な土俵人生を歩むかと思われた。しかし…。
そのわずか2か月後、右ひざの前十字じん帯を損傷する大けがをして手術。さらに2019年、再び右ひざの大けがをして2回目の手術を受けた。番付は序二段まで下がった。

「精神的にはきついところがあった。ひとつの修行だった」

厳しい修行にくじけそうになっても決して諦めなかった。地道にリハビリを重ね少しずつ相撲を取れる体に近づけていった。再起を目指す中、心の支えとなったのが同じひざのけがから復活し、2018年の初場所で優勝した栃ノ心の姿だった。

「栃ノ心関もけがをしたんだ、自分の中で頑張ろうという気持ちが強くなった。励みになった」

自分よりもはるかに上の地位の力士が歯を食いしばって相撲を取る姿に気持ちが奮い立った。再び番付を上げ関取に復帰した2020年の11月場所。宇良の両ひざは3年前とは大きく変わり、テーピングが巻かれ分厚いサポーターも着けられていた。

「土俵に足をつけて、一歩、一歩、力を込めた相撲が取れている」

着々と白星を重ね5日目には、十両では27年ぶりとなる「居反り」、14日目には「後ろもたれ」を決めた。“業師”らしく「自然に体が動いた」という取り口を何度も見せた。十両13枚目で臨んだ場所は9勝6敗で勝ち越し、関取のままでいるという最低限の目標はクリアした。

「運がよかったとしか思わない。まだまだ力が必要だと思う。また稽古を頑張りたい」

ひと安心した表情を見せ幕内復帰へ最初の一歩を踏み出した。宇良のさらなる目標は"けがする前の自分を超える"こと。次の初場所で、より強くなった体でふた桁白星を狙う。

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