種明かしをしゃべるようなことはできない

宇良

大相撲 #やっぱ好きだなぁ

9月の大相撲秋場所、土俵を盛り上げている力士の1人が平幕の宇良だ。
4日目には幕内では平成14年の朝青龍以来、20年ぶりとなる「伝え反り」を決めて業師としての本領を発揮。

6日目には横綱・照ノ富士の懐に潜り込んで寄り切りで勝ち、5回目の挑戦で初勝利。

実に5年ぶりの金星となった。

殊勲の星を挙げたあと大相撲の中継でインタビューを受けた宇良。
「考えていた相撲は取れたか」と聞かれて答えた。

「ちょっと分からないです」


取組の狙いを尋ねられても「分からない」「覚えていない」とはぐらかし取材者を困らせる。それが宇良の場所中のインタビューだ。

本当に覚えていないのか。
秋場所前の取材でその話題になった時、宇良は遠慮がちにこう話した。

「めちゃくちゃ覚えているんですよ。僕も困っているんです。種明かしをしゃべるようなことは自分にはできないですね」

そのことばから見えたのは相手に対して少しも隙を見せず、勝負に徹する姿勢だった。

「野球で『ストレートを投げます』と言うのと一緒ですよ。相手が『押していけばよかった』と言っていたら僕は、次は攻めの姿勢で来るだろうなと思ってよけますからね。自分は言えないです」

勝負に徹する姿勢を貫いてきたのはインタビューだけではない。
得意ではないと語る「食トレ」もその1つだ。
宇良は多彩な技を持ち味に、初土俵から2年で新入幕を果たしたが、たび重なるひざのけがで一時、序二段まで番付を下げた。

再起を期す中「力でも対抗できるようにしたい」と重点的に取り組んだのが、体重を増やすことだった。たんぱく質を効率的に取りたいと、大手ハンバーガーチェーンのチーズ入りのハンバーガーを日々、食べ続けた。

「2回目のけがをしてから、いちばんよく食べたかもしれない。大変ですよ。稽古も食事も同じくらいしんどい」

その結果、秋場所前の身体測定では自己最高の151キロを計測。大学生だった20歳の時から10年で80キロ以上も増えた。

「自分の身長的にも人としての限界を迎えたかな。勝てないとしても体重のせいではないと思えるようになりましたね。この体重に慣れていけば、いちばん強いと思う」

宇良はこの秋場所、前頭3枚目と、初めての三役が見える位置につける。
しかし、秋場所初日まで1週間を切っても理想とする力で押す相撲に満足できていなかった。

「三役、三役と言われるようになってまだ、気持ちがついていない感じもありますし、力がないのが露呈している。稽古をして実力とともに番付を上げられたらいいと思っている」

力で押す相撲では実力不足を痛感。

ただ、持ち前の技を駆使して勝負に徹する姿勢は決して忘れない。

「勝負に徹するという意味では小細工は悪いことではない。勝ちにいきますよ」

大相撲 #やっぱ好きだなぁ