日本のスタートアップ企業 成長のカギは

スタートアップ企業の成長をどう促すかは、日本の長年の課題です。国は投資を後押しする税制改正を行うなどして支援を強化しています。

世界的な企業を生み出すには何が求められるのか。起業支援のプロに聞きました。

1兆円企業を目指す起業家が求められること

東京・文京区の「FoundX」という起業を支援する「インキュベーション施設」。ここからは、200人以上の起業家が生まれています。

施設は東京大学が運営していて、在籍する人は全員卒業生や在学生です。

この施設の代表で東大の教員、馬田隆明さんは、日本マイクロソフトを退職したあと8年前から東大で起業家の支援をしています。国の起業家育成プロジェクトの委員も務めています。

馬田隆明さん

施設では起業家との交流会が定期的に開かれています。

「そういう取り引きがあるんですね」などと情報交換
名刺交換する人たちも

馬田さんは起業家に対して、経営のアドバイスとともに徹底して“あること”を求めています。

東京大学 FoundX ディレクター 馬田隆明さん
1兆円の企業をつくっていこうとすると、世界の課題を解決しなければそれぐらいの大きな企業にはなれない。気候変動の問題とか貧困の問題とか、より大きなアイデアが求められている

スタートアップ成長へ国が求められること

馬田さんが期待を寄せるスタートアップ企業の一つは、特殊なシートの上であればどこでも充電できるシステムを開発しました。工学部出身の起業家が研究成果を社会で役立てたいと取り組んでいます。

「この上に乗っていればどこでも充電できる」

これを車の下につければ走りながら充電できたり、駐車場のどこにとめても充電できたりするといいます。

しかしこうした企業は短期間で利益を生み出しにくく、投資家から敬遠されがちです。

馬田さんは、国が補助金などを投じてイノベーションの芽を育てることが重要だと指摘します。

馬田さん
破壊的な“多産多死”かもしれないが、より跳ねるかもしれないイノベーションにきちんとお金・人、あるいはモノをつけていく。というふうな配分を考えていく。本当に当たるかは分からないが、これをやらないと日本は死んでしまうので『これをやります』というところに対する納得感は(国が)きちんと生んでいくべきかなと思う

中高年世代の起業も期待

もう一つ馬田さんが期待しているのが、中高年世代による起業です。これまで培った知識や技術にイノベーションを生む可能性があるといいます。

馬田さん
いま資金的な環境も整ってきたので、自分たちの業界知識が必要とされている領域で40・50代あるいは60代、定年退職された方が起業する、スタートアップする。挑戦していく人が増えていくといいなと思う

馬田さんは、失敗を恐れず挑戦しやすくするセーフティーネットのような環境づくりも必要だと話していました。
【2024年2月21日放送】
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