「果物の王様」とも呼ばれるドリアン。中国では、クリームのような濃厚な味わいに加え栄養価が高いとして人気です。輸出元の東南アジアでは栽培が盛んになっています。
一方、生産国の1つベトナムでは中国向けの輸出が増えることに懸念の声も上がっています。なぜなのでしょうか?
輸出額7倍以上 ほぼ全て中国向け
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ベトナム南部のティエンザン省では、特産のドリアンが収穫期を迎えています。
ドリアン農家の男性
「ドリアンから得られる収益は非常に高い。両親も家族もみんな喜んでいるし、今シーズンは7トンくらい収穫できそうだ」
栽培が広がるきっかけは、中国のドリアンブームです。消費が拡大する中、ベトナムは2022年に中国への輸出を許可されました。
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ベトナム南部ベンチェ省にある果物の貿易会社を訪ねると、収穫されたばかりのドリアンが床一面に並べられていました。
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ベトナムのドリアンの輸出額(ベトナム税関総局による)は、2023年に21億ドルと前の年から7倍以上に増加。そのほぼ全てが中国向けだということです。
果物の貿易会社 グエン・ディン・トゥン会長
「私は中国市場に期待している。中国の人口は多く、消費量も多いからだ」
コーヒー豆から転作する農家 「利益2倍以上」
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現地ではほかの作物からドリアンに転作する動きが急拡大しているといいます。ダクラク省に向かい、農家のニアさんを訪ねました。ニアさんは特産のコーヒー豆を30年間生産してきましたが、いま代わりにドリアンの栽培に乗り出しています。
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理由は高い値段で売れるためです。コーヒー豆に比べ利益は2倍以上だといいます。
ベトナムのドリアンの農地(農業農村開発省による)は2023年に約13万ヘクタールと、前の年に比べて約20%増えたということです。
農家 ニアさん
「この地域はコーヒーの木しか植えていなかった。でもほかの人がドリアンをたくさん植えているのを見て、私もそれにならった」
政府は“警告” 過度な中国依存避けたい?
ベトナム政府はドリアンへの転作に警戒感を強めています。国営放送は2023年3月16日放送のニュースで「農業農村開発省と自治体は、供給が需要を上回る予測不能な事態を避けるため、この問題に警告を発してきた」と伝えました。
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ベトナム政府による警告の背景には、さまざまな国や地域の農水産物の輸入を禁止する中国の動きがあります。
中国は過去に、南シナ海で領有権を争うフィリピンからのバナナの検疫を強化。フィリピンではバナナが輸出できず多くが廃棄されました。
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同じく領有権を争うベトナム政府も、過度な中国依存を避けるねらいがあると見られています。
ベトナムの農業団体は、中国の一方的な輸入停止に備える必要があると指摘しています。
ベトナム青果協会 グエン・タイン・ビン会長
「中国が困難を引き起こしたり規制が厳しかったりして輸出の障害となる可能性がある場合、国は別の市場を見つける必要がある」
中国は東京電力福島第一原発の処理水の海洋放出に反対して、日本産水産物の輸入停止措置を一方的に行っています。
貿易の制限で相手国に圧力をかける中国のやり方は「経済的威圧」とも指摘されています。それが貿易の環境を不透明なものにしていて各国に影響が及んでいるようです。
(ハノイ支局長 鈴木康太 )
【2024年2月8日放送】
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