足利銀行破綻から20年 地域経済の活性化を目指す

栃木県最大の地方銀行の足利銀行は、バブル崩壊後に多額の不良債権を抱えて2003年に経営破綻し、その後の地域経済に影響を及ぼしました。それから20年。当時の反省から、地元企業のコンサルティング事業など地域経済の成長につながる事業に力を入れています

コンサル専門の行員 融資先の現場を回る

宇都宮市内のバネ製造会社を訪ねた足利銀行の行員。企業のコンサルティングを中心に行う専門部署に所属していて、みずから融資先の現場を回り、企業の課題などを聞き取っています。

銀行は近年、こうしたコンサルティング事業を新たな収益の柱として、部署の再編や人員の強化を進めています。

足利銀行 法人コンサルティング部 原田 直 上席審議役
「銀行の本業は貸し出しや預金だが、お客様の本業のところで何か役立てることはないかということ」

経営破綻経て「地域にコミットする」

こうした取り組みの背景にあるのが、20年前の経営破綻です。この銀行はバブル期に不動産業などへの融資を拡大した結果、バブル崩壊後に不良債権化して経営が悪化しました。

経営破綻時の記者会見
当時の日向野善明頭取は「心より深くおわび申し上げます」と述べた

銀行は一時、国有化され、経営不振が続く企業との取り引きが見直されたことなどから、地域経済が縮小する一因ともなりました。

清水和幸 頭取
「大きな反省を当時したので、それを是正したいということで、地域にきちっとコミット(密着)して、地域の成長にわれわれはベット(注力)していく。そして一緒になって努力していくことが、もう一回立ち戻って重要なんだと思っている」

清水和幸頭取

地域商社通じて商品開発も

銀行は、地域経済の活性化のため新たな取り組みを始めました。取材した日、足利銀行出身の地域商社の担当者が、地元産業の一つ、益子焼の窯元を訪ねました。

地域商社(左)と打ち合わせる窯元。「粘土に黄色い顔料を入れてみた」

銀行は2022年、県内企業と共同出資で地域商社を設立しました。地元にネットワークがある行員も出向しています。商社が担うのは、地元の事業者と連携した新商品の開発や、販路の確保などです。

地域商社では今、益子焼の新商品として、新幹線をモチーフにした箸置きを窯元と開発中です。

商社が鉄道会社にかけあって権利関係の契約を結び、人気のあるデザインの検討ができるようになったといいます。

益子焼の窯元 櫻井逸郎さん
「共同制作者だと思って、本当に一緒にやっている」

足利銀行が出資する地域商社 美藤文人 社長
「この地域の魅力をさらに発信していけるようなものを、最初からわれわれも関わらせてもらって、地域の発展に貢献していきたい」

この銀行は、今後も企業の課題解決を担う人員を増やして、経営を支援するコンサルティング事業を強化していきたいとしています。
(宇都宮局 宝満智之)
【2023年12月13日放送】
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