事業承継のカギ 地域の金融機関の手厚いサポート

後継者が見つからないという理由で廃業を迫られる企業があとを絶ちません。兵庫県豊岡市では、地元の金融機関である信用金庫の手厚いサポートで事業を引き継ごうという取り組みが行われています。

地元ならではの情報量で売り手と買い手つなぐ

兵庫県豊岡市で40年続く洋菓子店のオーナーの真狩和雄さん(70)は、体力の限界から引退を考えていますが、後継者が見つからず頭を悩ませてきました。

洋菓子店の社長 真狩和雄さん
「だんだんと仕事が無理になってくるので、若い人に継いでもらいたい」

真狩和雄さん

そこで、ネットで事業承継を仲介するサービスを利用しました。特徴は、地元の信用金庫が手厚く支援する点です。

地域の企業と深いつながりのある信金が、事業を売却したい企業の経営状況や地域での評判などを、買い手側にきめ細かく提供してサポートします。さらに実際に引き継ぎが成立した場合、事業計画の作成などの実務も担います

信金の強みは地元ならではの圧倒的な情報量です。「但馬信用金庫」の松原健一さんは、事業の引き継ぎに関わる企業ニーズなど最新の情報が最大の武器になると考えています。

事業承継をサポートする信用金庫 事業支援部 松原健一さん
「信用金庫が地域のハブになればいいんじゃないか」

豊岡の飲食店 東京のホテル経営者が承継

豊岡市の飲食店の元オーナー水嶋通さん(68)はことし初め、信金のサポートで、東京でホテル業を営む芳村英郎さんに事業を託しました。新オーナーの芳村さんが準備を重ね、店は再びオープンできました。

新オーナーのもとで再オープンした飲食店

水嶋さんは当初、事業の引き渡しに不安を抱えていました。そんなとき、事業を引き継ぐ方法を細かくシミュレーションするなど信金が何度も相談に乗ってくれました。

飲食店 元オーナー 水嶋通さん
「小さな店だった時から信用金庫にはお世話になっている。横にいてくれるだけですごく心強かった」

水嶋通さん

新オーナー 芳村英郎さん
「(豊岡市の)出石という町は初めてだった。よそ者は拒否されるんじゃないかという部分はすごくあった。でも、入ってくると皆さん温かい方ばかりですごく安心している」

芳村英郎さん

信金は引き継ぎが成立したあとも、事業に関わりそうな地域の人を紹介するなど、つなぎ役になることを目指しています。

事業承継をサポートする信用金庫 松原さん
「今まで必要とされていたことがなくならないようにお手伝いすることは必要なことだと思って、サポートしていきたい」

松原健一さん

問われる 引き継ぎ先を“目利き”する力

事業承継をネットで仲介するこうしたサイトはさまざまあり、登録する企業が多い一方、本当に適した引き継ぎ先を探すには“目利き力”も重要になっています。地元に根差し手厚いサポートができる信金が果たせる役割は、大きいと見られます。
(神戸局 井上乃晏)
【2023年11月15日放送】
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