“海事産業はグローバルビジネス” 伯方島の高校生が体験

海事産業の集積地として世界に知られる愛媛県今治市は、造船・海運などさまざまな業種がつながり発展してきましたが、今深刻な人手不足に悩み、危機感が広がっています。

グローバルな海事産業の魅力を若い世代に知ってもらい、将来の担い手育成につなげようと、今治市の伯方島の高校生たちを海外の現場に派遣する研修が行われました。

働く世代10年で2割減 海事産業の集積地に危機感

今治市では、働き手となる世代が10年で2割近く減少するなど深刻な人手不足に悩まされています。

伯方島で唯一の高校、県立今治西高校伯方分校でも、卒業と同時に進学や就職で地元を離れる生徒は少なくありません。

海事産業の魅力を知る海外研修に参加した一人、阿部縁さんは「海運系の道に進もうとかは、あまり考えていないけど、身近な人たちがどんな仕事をしているか知りたかったので参加したいと思った」と話します。

研修に参加した高校生の阿部縁さん

地元産業の魅力伝えたい 地元企業がサポート

今回の研修を、費用を含めてサポートしたのは、約150隻の船を所有する伯方島の船主で、海外の企業と取り引きがある阿部克也社長です。

伯方島の船主 阿部克也社長
「地元企業のコネクションを使っていただいて、海外の状況を肌身で感じてほしい」

阿部克也社長

「スケールの大きさ」 海外で体験

研修で伯方島の高校生6人が訪れたのは、韓国の造船の町、木浦(モッポ)です。高校生たちは世界第4位の建造数を誇る造船所を訪ね、自動化された最新の溶接技術など、巨大な船が建造される裏側を見せてもらいました。

溶接技術を見学

また日本ではほとんど造られていないという巨大なガス運搬船も見学しました。参加した阿部縁さんは「こんなところまで体験できていいのかな」と感激していました。

生徒たちは首都ソウルも訪れて現地の海運会社の役員たちから歓迎を受け、今治と韓国の密接なつながりを説明してもらいました。

海運会社のゼネラルマネージャーは「日本の運送を支える海運は、瀬戸内の小さな島でも今も健在。自分を誇りに思って大きな夢を見てください」と歓迎の言葉を述べました。

地元の産業と世界との強い結びつきを肌で感じた高校生たち。阿部縁さんはスピーチで「地元の主要産業である海事産業のスケールの大きさを知り、地域活性化のきっかけを見つけられた気がします」と述べました。

研修に参加した阿部縁さん
「きょうの体験は死ぬまで覚えていると思う」

研修をサポートした船主 阿部社長
「この仕事なら一生かけてもいいなと、次の世代とか、私どものあとを継いでいただく方が増えていったらいい」

研修した生徒たちが通う高校では今後、海事産業に関する授業を取り入れることが検討されているということです。

船舶 「モーダルシフト」でも注目

船舶は、トラック中心の輸送手段を変えていく「モーダルシフト」でも改めて注目されていて、こうした地道な取り組みを通じて将来の担い手の育成が期待されます。
(松山局 木村京)
【2023年11月8日放送】

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