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アメリカ・カリフォルニア州で4月、ファストフード店の従業員の最低賃金が、時給16ドルから時給20ドル(日本円で3100円余り)に引き上げられました。この業界の最低賃金がほかの業界より低かったことが背景にあります。
ところが、店によっては、せっかくの賃金上昇が雇用の減少につながるという皮肉な結果を招いています。なぜなのでしょうか?
「生活が少し安定」ファストフード店従業員
ロサンゼルスにある大手ハンバーガーチェーンなどの求人広告には、時給20ドルか、それを超える水準が提示されています。
最低賃金の引き上げは、州内のファストフード店約3万店舗で働く55万人以上の人々に大きな影響を与えています。
その一人で、サンフランシスコ近郊に暮らすカリーナ・セバーリョスさんは、2人の娘を養うシングルマザーで、2つの店の仕事を掛け持ちして生計を立てています。
時給がこれまでの16ドルから20ドルに上がったことで、家計にゆとりができたといいます。
ファストフード店で働くカリーナ・セバーリョスさん
「ほっとした。生活が少し安定し、日々の支出にプレッシャーを感じなくなった」
経営には痛手も…商品価格据え置く店
一方、最低賃金の引き上げはファストフード店の経営者を追い詰めています。カリフォルニア州はアメリカで最も人件費が高い州の一つで、賃金のさらなる上昇は経営に痛手です。
ピザレストランのチェーン店をフランチャイズ経営するアミール・サマディさんは、インフレが続くなか、商品の値上げは客離れにつながると懸念しています。
ピザレストランをフランチャイズ経営 アミール・サマディさん
「店の利益が減りつつある。客に食事を楽しんでもらうためには、価格を据え置くしかない」
人員削減に踏み切った店も
人件費削減のために苦渋の決断をした経営者もいます。
サンノゼでスムージーなどの販売店を営むブライアン・ホムさんは、賃金の上昇を受けて、商品の価格を5%~10%値上げしました。
それでも経営が成り立たず、3~4人で回していた朝の時間帯のシフトを2人に変更。さらに人員の削減にも踏み切りました。
スムージー店を経営 ブライアン・ホムさん
「新規採用もやめざるをえない。さらに厳しくなれば、家族だけで店を回すことになるだろう」
カリフォルニアから撤退する店も
カリフォルニア州での事業コストの上昇を理由に、この地域から撤退する動きも出てきました。
6月3日には、メキシコ料理のファストフードチェーンが州内の48店舗の閉鎖に踏み切ることを明らかにしました。
「多くの人が仕事・労働時間失っている」との指摘も
専門家は、経済へのさらなる悪影響を懸念しています。
南カリフォルニア大学ビジネススクール ション・ヒアット准教授
「カリフォルニア州は全米で最も失業率が高い。法律が施行され失業率は上がり続けている。ファストフード業界では多くの人たちが労働時間や仕事を失っている」
(ロサンゼルス支局 佐伯敏)
【2024年6月13日放送】