サーモン養殖にじゃがいも!? 

食の安全保障の重要性が増す中、北海道では輸入に頼らず道内でサーモンを養殖しようという取り組みが始まっています。ただ、原材料価格の高騰などによる餌代の上昇が課題です。

そこで注目されているのが、北海道が国内生産量1位を誇る特産品「じゃがいも」。どういうことなのでしょうか?

餌代が1.4倍に 泊村のサーモン養殖

漁業が盛んな北海道泊村は、2021年から漁港に設けた「いけす」で実験的にサーモン(生食用のニジマス)の養殖を始めました。

昨シーズンは約6000匹を出荷し、今シーズンは2倍の約1万2000匹を養殖する計画です。

養殖しているサーモン

餌の原料にはカタクチイワシなどから作られる魚粉が使われていますが、価格が高騰しています。泊村では2年前と比べて餌代が約1.4倍に値上がりしました。

魚粉を使ったサーモンの餌。価格高騰が課題だ

泊村産業課 寺谷志保 主幹
「経費の大体半分ぐらいが餌なのでたいへんな部分があるが、餌のやり方や、量を節約するような工夫をして、何とか黒字・事業化に持っていきたい」

「じゃがいも」を餌の原料に?

そこで、魚粉の代わりとして「じゃがいも」が注目されています。でんぷん工場には生産が盛んな9月~10月、1日当たり約1600トンのじゃがいもが運び込まれてきます。

注目したのが、じゃがいもからでんぷんを取ったあとの搾りかすです。この中にはわずかながらたんぱく質が含まれています

これまでは畑のたい肥にする以外に使いみちがありませんでしたが、北海道立総合研究機構の専門研究員の小山達也さんは、魚粉の代替品として利用できないかと考えました。

研究に取り組む小山達也さん

小山さんによると、最初は廃液という形で液体状ですが、乾燥させて粉状にします。この粉末に魚の食いつきをよくするアミノ酸を加えて、試作品の餌を作ります。

実験の結果は?

小山さんは試作品の餌がサーモンの生育に有効かどうか、何度も実験を重ねてきました。魚粉を使った従来の餌と、魚粉の50%をじゃがいも由来のたんぱく質に置き換えた試作品の餌を使って、魚の成長の度合いを測定。淡水のいけすで約2か月育てて比較しました。

試作品の餌を与えて成長度合いを調べる

その結果、従来の餌では体重が平均145グラム増えたのに対し、試作品の餌ではそれを上回る平均150グラムの増量になりました。従来の餌にも引けを取らない成長効果が得られました。

北海道立総合研究機構 小山達也 専門研究員
「北海道のじゃがいもを材料にした餌で価格も抑えられ、しかもおいしい。そんなサーモンを皆さんに提供できればいいなと思っている」

餌も国内でまかなうことができれば国際情勢に左右されず、じゃがいもの廃液の使いみちが広がり、一石二鳥です。

現在使われている試作品の餌は、配合を変えながら今後も実証試験を続けていくということで、企業とも連携し実用化に向けて研究を進めていくということです。
(札幌局 尾國将大)
【2023年11月7日放送】
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