温泉がヒラメに効く!?

温泉の湧出量が日本一、ヒラメの養殖も日本一の大分県で、源泉に含まれる成分をヒラメの養殖に役立てようという取り組みが始まっています。その結果、予想外の効果が!?

“病弱なヒラメ”に悩む養殖場経営者

大分県佐伯市でヒラメの養殖場を経営する木野雄貴さんは、ある課題に直面していました。ヒラメは免疫力が弱く病気にかかりやすいため、稚魚から成長して出荷までにたどり着くのが6割ほどにとどまっていたのです。

木野雄貴さん

ヒラメの養殖場を経営 木野雄貴さん
「お金をかけても半数近くが死んでしまって悪循環。餌代も上がるという最悪な状態だった」

温泉成分の効果に「賭ける」

悩んだ木野さんが目を付けたのが、大分の温泉に含まれる成分で、地元の企業「温泉微生物研究所」が見つけた体長3ミクロンの微生物「RG92」です。80度の強酸性の源泉の中に生息する藻の一種です。この企業の会長の濱田茂さんが藻を見せてくれました。

微生物「RG92」(画像提供:温泉微生物研究所)
「これが温泉に入っている藻」と濱田茂さん

この微生物の生命力に着目して、地元企業が広島大学や順天堂大学などと共同研究を進めたところ、傷口の腫れや化膿を抑える効果があることが判明しました。

さらに、体内へのウイルスの侵入を抑える可能性があることも実験結果から見えてきました。

木野さんは、この微生物をヒラメに使えば何らかの効果が得られるのではないかと考えたのです。

木野さん
「魚が病気で死ぬのを減らしたい。ある意味、賭けですよね」

実験で見えた効果とは?

木野さんは地元企業の協力を得て、2022年3月から養殖場で実験を始め、微生物を混ぜた餌と、そうではない餌をヒラメに与え、違いを調べました。

すると、微生物を与えたヒラメは実験開始から4か月たっても全く病気にかかりませんでした

さらに予想外の効果もありました。通常の餌に比べて食いつきもよくなったのです。

木野さん
「まんべんなく餌を食べて太りもいい。大きさだけでなく厚みもつく。まさかの相乗効果」

シマアジやタイなどでも実験

こうして育てられたヒラメはすでに東京の飲食店でも使われ始めるなど、注目されています。刺身を試食させてもらうと、歯ごたえがしっかりしていて弾力がありました。

微生物入りの餌を食べたヒラメを使う東京・新橋の料理人 鈴木基次さん
「(養殖ヒラメの)みんなが生きているのは、生産者も潤うし、消費者も潤うし、持続可能な養殖だというところにもすごく魅力がある」

この微生物を見つけた会社によると、シマアジやタイ、トラフグ、チョウザメの養殖現場でも実験が行われているそうです。大分が誇る「温泉」と「養殖ヒラメ」の意外な組み合わせが、新たな可能性を広げています。
(大分局 和田弥月)
【2023年9月27日放送】
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