移住者の起業支援で町おこし

人口の減少が見込まれる徳島県鳴門市は、移住者を受け入れるだけでなく新しいビジネスを立ち上げてもらうことで地域の活性化を図ろうとしています。自治体の後押しを受け、起業して「らっきょう」の加工品を開発しようと挑むチャレンジャーの姿を通じて、その動きを追いました。

移住した鳴門市で起業したい 7人が新ビジネス提案

徳島県鳴門市で9月、ビジネスコンテスト「NARUTO BOOT CAMP(ナルト・ブート・キャンプ)」が開かれました。

鳴門市に移住して起業を目指す7人が新たなビジネスを提案。「空き家を活用した外国人向けの一棟貸し宿」「障害クリエーター支援サービス『よーいドン』」などと題してプレゼンが行われました。

発表内容は投資家から審査を受け、目にとまれば、必要な資金を得るチャンスにつながります。

参加者の一人、藤井隆行さん(51)は20年以上勤めた東京の製紙会社を早期退職し、鳴門市に移住しました。

鳴門市に移住した藤井隆行さん

特産の「鳴門らっきょ」を栽培する農家のもとで勉強しながら、加工品の開発を目指しています。

特産のらっきょう
加工品の開発を目指す

藤井隆行さん
「ひとえに、らっきょうが好きだから。『どうしたらこんなおいしいものができるんだ』っていう好奇心から(移住して鳴門市に)来た」

今後20年で3割近く人口減? 市の危機感強まる

人通りの少ない商店街

鳴門市は今後20年で3割近い人口減少が予想されています。危機感を強めた行政は、藤井さんのような移住者を呼び込もうとビジネスコンテストを企画しました。

鳴門市商工政策課 藤瀬 蔵 課長
「間口の広い鳴門市になってほしいし、外から来た方がうまくビジネスができるように支えるのが大事と思っている」

金融機関などと相談の場設定

市はコンテストに向けて参加者に手厚い支援を行いました。取材した日は、らっきょうの加工品開発を目指す藤井さんの事業計画について、金融機関などに協力を依頼し専門家に相談する機会を設けました。

藤井さんは懸案だったというマーケティングについて相談しました。すると、「目立たないといけないので、らっきょうの季節にらっきょうのコーナーができるぐらい、今から仕込んでいくほうがいい。1回バイヤーさんと“壁打ち”したほうがいい」などと具体的なアドバイスがありました。藤井さんは「やること、しっかりやらんと」と気を引き締めていました。

ビジネス具体化へ 地元経営者と交流の場も

ビジネスコンテストに優勝して喜ぶ藤井さん

そしてビジネスコンテスト当日。アドバイスも参考にしながら臨んだ藤井さんは、見事、優勝しました。

発表では、「鳴門らっきょ」の商品を開発して発信したいという思いを強く訴えました。開発のこだわりを「鳴門産らっきょうの特徴である、“小粒でシャキシャキ”を生かしたマイルドな酸味のもの。そして漬け液も徹底的にこだわる」と説明しました。

審査する投資家は「すごくワクワクして伺った。『鳴門らっきょ』をブランド化することで、全国1位を目指せるんじゃないかとすごく可能性を感じた」と語っていました。

藤井さんは商品のニーズや販売先を調べるなど、ビジネスの具体化を探ることになりました。

藤井さん
「もう、うれしい、素直にうれしかった。徳島県鳴門市の良さを出しつつ、みんながワクワクする商品を作っていければいい」

移住者に長く定着してもらうためには、立ち上げたビジネスを軌道に乗せてもらうことが重要です。鳴門市は今後も、起業を目指す移住者と地元企業の経営者との交流の機会を設けるなど、継続的な支援を行っていきたいとしています。
(徳島局 能智春花)
【2023年10月27日放送】
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