リモートで起業 世界とふるさとを結び付けて新たなビジネスを

コロナ禍で場所を問わずに働くリモートワークが広がりました。いま海外からのリモートで、地方の活性化につながるビジネスを始めようという新たな起業の動きが出ています。

シンガポール在住 青森で会社設立

青森市に5月下旬、地元の特産物を活用した新商品の開発を行うスタートアップ企業が設立されました。

この会社を立ち上げた重野由佳さん(38)は青森県出身でシンガポールに暮らしています。3年前に夫と子どもの3人で移り住み、日本の食品の販売に携わってきました。若者の流出が続くふるさと・青森を盛り上げたいと、起業することを決めました。

重野由佳さん
「今の時代はその場所に住んでいなくても(地域の)課題を解決することができると思って」

重野さんは起業するにあたって、日本にいる共同経営者と青森に新たな会社を設立しました。

海外で家族との生活を続けるため青森には移住せず、会社の運営は原則リモートで行います。


特産のりんご 搾りかすで商品開発

会社でいま開発を目指しているのが、青森特産のりんごの搾りかすを使った新商品です。

重野さんは一時帰国して、青森のりんごジュースメーカーを訪れました。メーカーの担当者は搾りかすを見せて「乾燥させて大体500~600キロになる」と説明。搾りかすは年間6000トン以上になるといいます。

重野さんの会社では、処分されるりんごの搾りかすを使った人工の革を作り、かばんや車のシート向けに販売したいと考えています。世界では動物に由来しない革が注目される中、りんごを使った革の製品がすでに商品化されています。

重野さんは、青森産のりんごを使った素材を作り、地域に新たなビジネスを生み出したいと考えています。


リモートで地元経営者と活性化策を議論

さらに重野さんは、地域への貢献策について、同じ問題意識を持つ地元の経営者と議論を始めています。

地元の食品メーカー社長とのオンライン会議で、社長は「地元で(会社を)興したいという気持ちで帰ってきていただけるのは非常にありがたい」と話しました。

年内に試作品の完成を目指し準備を進めている重野さん。“リモート起業”の先駆けになりたいと考えています。

重野さん
「スタートアップ企業が青森に創業して成長することで、起業に対するハードルやグローバルに対するハードルが下がって地域が盛り上がっていけば、すごく面白いなと思う」

若い人の流出は多くの地域で共通の課題です。リモートでふるさとと世界を結び付けて、地域に新たな産業を生み出すことに一役買う。そうした流れが広がっていくといいと思います。
(青森局 記者 吉永智哉)
【2022年6月14日放送】