EV=電気自動車のバッテリーに欠かせないリチウムなどの重要鉱物。EUではこうした資源を一部の国に依存していることへの危機感が高まり、安定確保に向けて取り組んでいます。ただ、課題も見えてきました。
安定確保へ「供給の多様化」議論
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IEA=国際エネルギー機関は、重要鉱物をテーマにした初めての会議をフランス・パリで9月28日に開きました。
重要鉱物を安定して確保するため、日米欧の主要な消費国や資源国などが協力していくことで一致しました。
IEA ビロル事務局長
「一つの国、一つのエネルギー、一つの企業に依存するのは常に危険なことだ。(重要鉱物の)供給は可能な限り多様化するべきだ」
リチウム加工・精製 中国が65%占める
ヨーロッパではEVの普及が加速しています。そのバッテリーに欠かせないリチウムの需要は、世界でこの5年で3倍に増えています。しかし、その加工と精製の65%を中国が占めているのが現状です。
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EU目標「消費量の10%以上を域内で」
こうした状況からどう脱却するのか。EUは3月、「重要原材料法案」を発表しました。リチウムなど16種類の鉱物を「戦略資源」と位置づけ、消費量の10%以上を域内で生産するなどの目標を設定しました。
こうした目標に沿う形でフランスやドイツなどでリチウム採掘の計画や構想が進んでいます。
「欧州最大の鉱脈」 ポルトガルの農業地域に採掘計画
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一方で開発には課題も見えてきました。ポルトガル北部のバローゾ地方では、地質に大量のリチウムが含まれることが明らかになっています。ポルトガル政府は5月に環境への影響評価を承認し、今後採掘が開始される予定です。
ポルト大学 ルイ・ミゲル・モウラ教授
「ヨーロッパ最大の有望なリチウム鉱脈だ」
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しかし、地元の人たちからは猛烈な反発が起きています。この地域の農業と放牧は豊かな水を使った固有の農法が評価され、世界農業遺産に認定されています。農業者は採掘によって川の水などが汚染されるのではないかと心配しているのです。
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地元農家の一人
「山を粉々にして環境に影響が出ないわけがない」
また別の地元農家は「水はリチウムよりもずっと大事だ」と話しています。
環境保全と両立できるか?
ポルトガル政府は、環境保全と鉱山開発を両立できることを示したいとしています。
ポルトガル環境庁 ラカスタ長官
「ポルトガルは明らかにヨーロッパの戦略の一部を担っている。リチウムを持続可能な方法で開発できれば、ヨーロッパは確実にその恩恵を受けるということだ」
脱炭素のためのEV製造には鉱物の確保が必要ですが、それが地域の環境を破壊してしまうおそれがあるというジレンマ。ヨーロッパ各国は環境の保護も声高に主張してきただけに、どうバランスをとるかが難題です。
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重要鉱物の確保は日本にとっても重要な課題で、アフリカのザンビアなど資源国との関係を深めるなどして安定確保を図ろうとしています。
(ヨーロッパ総局 有馬嘉男)
【2023年10月5日放送】
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