脱炭素でエネルギー企業が変わる? インフラ生かし新サービス

化石燃料は今後、脱炭素の流れで確実に需要が減っていくと予想されています。石油元売りやガソリンを卸すエネルギー商社などエネルギー企業に求められる役割が大きく変わる中、これまでの設備やシステムを活用した新しいサービスが生まれ始めています。

石油元売りが道路の破損調査 ガスボンベの配送ルート活用

石油元売り大手「出光興産」がガスを供給している、茨城県鹿嶋市のLPガスの営業所。市から委託を受け、6月から道路の破損を調査するサービスを始めました市内のほとんどの道配送ルートになっているため、くまなく調査できます

配達前、運転手の男性が車内にスマートフォンを設置しました。「自動的に路面の穴だとか、ひび割れだとか、異常な箇所を感知する」と説明してくれました。

車内にスマートフォンを設置して…
配送に向かう

AIが穴などの道路の異常を見つけると、撮影して、画像を位置情報とともに記録します。

道路上の異常箇所を記録する

その情報を見て、道路を管理する市が速やかに補修につなげることができます。

損傷のレベルによって色分けされている
穴などを速やかに補修

これまで市では、月に1回のパトロールや市民の通報をもとに道路の状況を確認していましたが、把握できていたのは全体の2割程度でした。それが8割近くを確認できるようになったといいます。

鹿嶋市政策推進課 茂垣 論 課長補佐
「今回、効果が一定水準認められたことから(サービスの)導入に至った」

この石油元売り大手は今後、全国に展開している強みを生かして、ほかの自治体にもサービスを広げていきたいと考えています。

石油元売り大手 電力・再生可能エネルギー事業部 稲塚 久 主任
「社会の課題やニーズを捉えて事業創出につなげる。日本全国の道路維持管理に悩む多くの自治体に、ぜひ利用いただきたい」

ガソリンスタンドでEV販売サポート エネルギー商社が実証実験

数が少なくなったガソリンスタンドを活用しようという動きもあります。ガソリンを卸しているエネルギー商社「三菱商事エネルギー」が実証実験をしているのが、海外製のEV=電気自動車の販売サポートサービスです。

実証実験が行われている神奈川県横須賀市のガソリンスタンドを訪ねると、ある海外メーカーのEVが置かれていました。このメーカーは国内の販売店が東京や大阪などの9か所に限られています。そこで商社側からメーカーに声をかけ、各地のガソリンスタンドを通して実際に試乗できる機会を提供し、EVメーカーから対価が得られるようにしたいと考えています。

試乗した女性客は「身近なところで試乗できるというのは、とてもありがたい」と話していました。

EVを試乗する客

この商社は将来、全国のガソリンスタンドを生かして、あらゆるメーカーのEVの整備や充電ができるサービスステーション網を築きたいとしています。

エネルギー商社 リテール事業部timy推進課 吉田和永 課長補佐
「これから確実にEVユーザーが増えて、それに応じて(ガソリンスタンドを)さまざまなサービスを提供できるトータルカーライフサポート拠点として機能させていきたい」

既存のガソリンスタンドや配送網は日本全国をカバーしているので、活用の可能性はいろいろとありそうです。ほかにも、アクセスしやすい場所にあるガソリンスタンドを物流の拠点として活用する取り組みも行われているそうです。今あるものを生かしながらサービスの多角化を目指す動きが進んでいきそうです。
【2023年8月28日放送】
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