キーパー技研・谷好通会長「変化恐れず」起業30年の信念

優れた起業家を表彰する「アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー」が8日、東京・千代田区で行われました。この式典は20年以上続いていて、ことしは新たに地方の起業家を表彰する部門が設けられました。

新しい部門で表彰された中に、起業30年という愛知県のベテラン経営者、「KeePer技研」会長の谷好通さん(70)がいます。目まぐるしく変わるビジネス環境をどう生き抜いてきたのでしょうか。

谷好通さん

地方から全国へ 事業拡大した30年

谷さんは愛知から全国へと30年にわたって事業を拡大させてきた手腕が評価され、IT企業のトップなどと並んで表彰を受けました。あいさつでは冗談交じりに次のように語り、場を和ませていました。

谷 好通さん
「ふと気がついたら会社がずいぶん大きくなっちゃって、それでこんなところに来ちゃったみたいな」

起業家の賞を主催した「EY Japan」 武藤太一 パートナー
「『地方に元気がない』とか、そんな話を聞くが、実はポテンシャルもこれだけある。しっかりたたえてサポートすることが今、必要だと思う」

洗車の店が“洗車を減らす”サービスを?

谷さんが手がけているのが「洗車」と「車のコーティング」に特化したビジネスです。谷さんはもともとガソリンスタンドを経営していましたが、1993年に洗車の専門店を立ち上げました。

ガソリンスタンドを経営していたころの谷さん

経営方針は「客の喜びを追求すること」。それを実現しようと研究を重ねたのが、車のコーティングです。

頻繁に洗車をするのは負担だと感じるお客さんのために”雨で汚れが落とせる”というコーティング剤を開発したのです。

洗車の店を経営しながら、頻繁に洗車をしなくてもよくなるサービスを提供したのは、なぜなのでしょうか?

谷さん
「洗う気にならないくらいきれいにコーティングしておけば、『やってよかった』と思うものは、また店に来るじゃないですか。ビジネスというのは相手に喜んでもらってなんぼでしょう?」

コーティング技術 競合他社とも共有

さらに力を入れているのが技術力の向上です。客が、全国どこでも質の高いコーティングを受けられるようにと、自社の技術を、競合他社も含めて年間延べ4万人に共有しているといいます。

コーティング技術の研修。「クロスに持ち替えて3回目」などと声が飛ぶ

競合他社にも教えてしまっていいのでしょうか?その理由を聞いてみると・・・

谷さん
「みんなでやったほうが、おもしろいしね。ちゃんと、もうけてますから。それは大丈夫ですけどね」

積極的にコーティングの技術を共有することで、直営店だけでなく、技術認定店が全国の約6400か所に広がっています。事業の拡大につながっているのです。

激動の自動車業界「自分を変える」

自動車業界はEVシフトが進むなど激動の時代を迎えています。事業の今後をどう考えているのでしょうか?

谷さん
「車をきれいにすること、きれいに保ち続けること。で、それが(EVの)充電を一緒にできたりとか。世の中の変化に沿って自分たちを変えていって、貢献できるような姿に変わっていける一助になればいい」

今はコロナ禍もあり、車の内部をより清潔に保ちたいと考える人が増えていて、そういったところも力を入れているそうです。常に新しいニーズに応えていくことが、成長の背景にあるのかもしれません。
【2022年12月19日放送】
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