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「ホワイト水素」とは、自然界に高い濃度で存在することが判明した水素のことです。
水素は二酸化炭素(CO2)を排出しないエネルギー源として活用される一方、人工的に製造する際のコストの高さが課題となっています。そこで世界各地に埋蔵されていると見られるホワイト水素を発掘し、エネルギーとして商用化しようという新たな動きが起きています。
圧倒的に低い製造コスト
オーストラリア南部のヨーク半島。ここで、3年前に設立されたスタートアップ企業がホワイト水素の発掘を進めています。
90年以上前に使われていた、石油やガスの古い採掘現場で、パイプを使ってサンプルを採取。そして2023年、86%もの高濃度のホワイト水素を発見しました。この地域が消費するエネルギーを長期間まかなえる量でした。
ホワイト水素の魅力とされるのが、圧倒的に低い製造コストです。発掘している企業が独自に試算したところ、1キログラム当たり1ドルと、従来の水素の5分の1~10分の1のコストで生産できる可能性があるといいます。
発掘を進める企業 ニール・マクドナルド 社長
「より安くクリーンなエネルギーこそが世界に求められている。天然水素(ホワイト水素)はその最前線に立つことができる」
世界各地に埋蔵?
ホワイト水素は主に、地下にある水と、花こう岩や玄武岩などの火成岩が化学反応を起こして生成。それが石灰岩などの地層によってブロックされることで、世界各地に埋蔵されていると見られています。
オーストラリアの国立研究機関 ダミアン・バレット 博士
「どれだけの水素が商業的に生産可能か見積もるのは難しい作業だが、商業生産が可能な水素の埋蔵量は、何十年、何百年分にあたる可能性がある」
各国が発掘調査乗り出す
このホワイト水素が秘めた可能性に世界各国が注目しています。
ビル・ゲイツ氏などの投資家から9100万ドル、日本円で約140億円を調達したスタートアップ企業も調査に乗り出しています。
日本も情報収集を開始
日本もホワイト水素の情報収集に動き出しています。独立行政法人 エネルギー・金属鉱物資源機構の担当者が2024年3月半ば、オーストラリア・パースから車で2時間ほどの、ある一帯を訪れました。
この場所では、オーストラリアの国立の研究機関が定期的に水素の濃度を測っています。
通常は何も検出されませんが、ここでは期待を感じさせる結果が出ました。
独立行政法人 エネルギー・金属鉱物資源機構 末廣能史 企画課長
「日本もまだまだ追いつくチャンスがある。どうやれば開発できそうかが、ある程度見えていないと、企業は(投資に)踏み出せないと思うので、貢献するような情報を集めたい」
専門家「見通しが立ってからでは取り残される」
高濃度の水素が自然界に大量に眠っているならばすぐにも使いたいところです。ただ、日本総合研究所の加藤有コンサルタントは、▼実際に採掘できる量や▼採掘にかかるコスト、▼商用化までの時間などについて、見通しが立っていない面があるとしています。
一方で加藤コンサルタントは次のように指摘しています。
新たなエネルギー源として期待が高まるホワイト水素。日本としても取り組みを急ぐ必要があるようです。
(政経・国際番組部 安 世陽)
【2024年4月19日放送】