韓国 ブランド品ブームの意外な背景は?

韓国での1人当たりの年間ブランド品購入額(2022年)は325ドルと、アメリカや日本を抜いて世界トップだという調査結果があります。ブランド品の購入が増える背景には、意外な経済的理由があるようです。

高級ブランドが力を入れる韓国市場

「キョンボックン(景福宮)」で行われたファッションショー

韓国の首都ソウルで2023年、世界的な高級ブランドのファッションショーが相次いで開かれました。5月には朝鮮王朝時代の宮殿「キョンボックン(景福宮)」が舞台になり、世界各国からモデルや俳優が参加しました。いま世界の高級ブランドが韓国での商戦に力を入れています。

ソウル中心部で、ブランド品について若者に話を聞くと、ある女性は「かばんや財布、あとはイヤリングとかのアクセサリーを買う」と言います。

また別の女性は次のように話しました。

ブランド品を紹介するユーチューバーも

ブランド好きが高じて気になるブランドを紹介するユーチューバーも登場しました。ソウル近郊に住むユ・チョロンさんは、サイトのチャンネル名が「毎日買う女、生きる女」。チャンネル登録者数は2万人を超えています。

ユーチューバー ユ・チョロンさん
「日常生活で簡単に使える芸術品だと思って魅力を感じている。ブランド品を買うことは自分を幸せにしてくれることの一部だと思う。一生懸命生きて、楽しむために消費している」

ブームの背景に…住宅価格の上昇?

ブランドブームを後押ししていると見られるのが、実は住宅価格の上昇です。韓国では、コロナ禍の金融緩和を背景にマンションの価格が22年までの5年間でそれまでの2倍近く上昇しました。

その後、価格は下落しましたが、一般の人の所得水準と比べるとまだ高い状態が続いています。

住宅価格について若者に話を聞いてみると、ある女性は「私たちの貯蓄金額で将来家を買えるか分からない。いまを幸せに暮らそうと思っている」と話しました。

また、ある男性は次のように話しました。

男性は「今すぐ使える物にもっと多く消費している」とも。

ソウル大学の消費トレンド分析センターのイ・スジン(李粹珍)研究委員は、住宅購入を諦めた人々がブランド品購入に資金を振り向けていると分析しています。

ソウル大学消費トレンド分析センター イ・スジン(李粹珍)研究委員
「お金をきちんと貯めて家を購入できるだろうか?韓国であまりにも住宅価格が急騰した時期を過ごした人の中で、『お金を貯めるよりも、きょう1日を楽しく過ごしたほうがいいのではないか』という意識に変わりつつある」

格差が社会問題に

韓国ではこうしたブランド品を購入できる層がある一方、貧困率はOECD各国で比較しても高い状況が続いています。アカデミー賞の作品賞を受賞した映画「パラサイト半地下の家族」で描かれたように、格差が社会問題になっています。当面の経済運営に加え、こうした課題もあるようです。
(ソウル支局 大谷暁)
【2023年7月20日放送】
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