韓国 なぜ増える“ユニコーン”企業

「ユニコーン」といえば伝説の一角獣のことですが、ビジネスの世界では未上場のベンチャー企業のうち10億ドル(約1100億円)以上の時価総額が見込まれる優良企業を指します。非常にまれで貴重な存在だとして、こう呼ばれています。このユニコーン企業がいま、韓国で続々と誕生しています。背景には何があるのでしょうか?

夜に注文・朝に届く “超速”通販がユニコーンに

朝7時、韓国・ソウルの住宅に宅配の荷物が届きました。中に入っているのはサラダなどの生鮮食品や飲み物など。このネット通販「カーリー」が今、若い女性を中心に人気となり、利用者は1000万人以上になります。

その最大の特徴は「速さ」です。都市部では夜11時までに注文すれば、翌日の朝7時までに届くといいます。

数年前からこの通販を利用しているソン・ジヨンさんは「配達が速いのがいい。生鮮・冷凍食品をよく注文する」と話します。

この通販では魚介類なども取り扱っています。鮮度を保つために3.5度の低温で運搬できる独自の配送網を構築していて、食材の品質を落とさず消費者に届けているといいます。

7年前に立ち上がった事業は順調に売り上げを伸ばし、2021年にユニコーンにまで成長しました。

創業者 キム・スラさん

「(帰宅後)翌朝食べるものがないと気づく。子どもがいるお客様の立場なども考えて、いいサービスになると思った」

大規模投資でベンチャーを後押し

韓国のユニコーン企業は政府の集計によると15社あり、5年間で3倍に増加しました。21年はニューヨーク市場に上場した企業もありました。

こうした動きを後押ししているのが政府の支援です。ムン・ジェイン政権は「中小企業庁」を「中小ベンチャー企業省」へ格上げしました。

その建物の中には一風変わったスペースがあります。ある会議室では、椅子がなんとブランコ。ほかにも子どもの遊び場のようなユニークな会議室もあります。柔軟な発想が必要だと、遊び心のあるつくりになっています。

21年には公費を投じてファンドをつくり、民間の資金も呼び込んで、日本円で7300億円余りに上る過去最大規模の投資をベンチャー企業などに行いました。

創業したばかりの企業も支援対象に加えたほか、見込みのある企業を選抜して経営ノウハウを伝授するプログラムを運用するなど、工夫を重ねています。

クォン・チルスン  中小ベンチャー企業相

「大企業発の革新よりも、小さく瞬発力のある技術力を持ったベンチャーによって技術革新が起き、社会を変えていく」

若者の就職難解決も目指す

いまユニコーンを含む韓国のベンチャー企業で働く人は約73万人に上り、サムスンなど財閥系4グループの合計よりも多くなっています。

韓国では若者の就職難が社会問題になっていて、その解決のためにもユニコーン企業の育成が重要な取り組みになっています。

日本でも政府が5か年計画を立ててベンチャーの事業拡大などの支援を強化しようとしていて、その成果が問われることになります。

(ソウル支局長 青木良行)

【2022年2月4日放送】