後継者不足などに悩む中小企業の事業を継続させるため、第三者に売却する「M&A」が増えています。今、税理士が仲介して、より小さな事業者にもM&Aを進める動きが広がっています。
後継者のいない中小企業 「M&A」の選択肢を
奈良県葛城市の運送会社はこれまで個人で経営してきましたが、後継者がいないため、経営を別の会社に譲渡する準備を進めています。
仲介しているのが、税理士の都鍾洵さんです。中小企業や個人経営の企業に特化した「マイクロM&A」に取り組んでいます。
都さんたちは、従業員数が3人以下の事業者や譲渡価格が3000万円以下などの場合をマイクロM&Aとしています。
税理士が「つなぎ役」に
2022年には68の税理士事務所などが加盟する「マイクロM&A士協会」が発足し、勉強会などを開いて仲介に必要な専門知識やノウハウを共有しています。
日頃から会社の経営相談にのっている税理士がM&Aの具体的な条件などを聞き取ることで、仲介料を抑えられるといいます。
税理士 都鍾洵さん
「社長さんとコミュニケーションができている税理士が、つなぎ役になれるんじゃないかと思って始めた」
比較的安価な費用が強み
大阪・中央区で音楽教室を経営する倉田雅夫さんも、顧問の税理士の都さんからM&Aを提案されました。新型コロナの影響で売り上げが激減し廃業も考えましたが、防音設備などの撤去にかかる費用が数百万円に上ることが課題だったといいます。
経営していた2つの教室のうち1つの譲渡先を探したところ、都さんが5件の候補を見つけてくれました。
譲渡先に選んだのは、設備や楽器などをそのまま引き継いでくれるというピアニストの大橋美帆さんです。仲介料は50万円ほどで、廃業するのに比べると費用を安く抑えることができたといいます。
ピアニスト 大橋美帆さん
「講師の先生も生徒さんも全部引き継ぎなので条件的にものすごくいい」
税理士 都鍾洵さん
「M&Aや第三者承継という選択肢を知らないまま廃業している人も多いと思う。(会社に)価値があるのに、それを知らずに廃業しているかもしれない。そこは救うべきなのではないか」
M&Aの仲介は専門の大手企業や銀行なども行っていますが、規模が大きい会社が優先されやすく小さな会社は対応してもらえないケースも多かったそうです。廃業が増えれば、特に地方経済の縮小が進んでしまいます。税理士の小回りのよさを生かした仲介が広がれば、後継者不足を理由とする廃業を減らせるかもしれません。
【2023年7月19日放送】
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