自治体×民間サイトで事業継承

多くの中小企業や小規模事業者が高齢化する一方、後継者不足が深刻になっています。こうした中、鹿児島県大崎町では、自治体が民間の専用サイトを活用することで事業を受け継いでもらう人を探す取り組みが始まっています。

事業所減少に危機感 廃業食い止めを模索

人口約1万2000の大崎町はこの40年で人口が半減し、300を超える事業所が廃業となりました。

町内でコイ料理の店を50年余り経営してきた牧之瀬幸夫さん(69)も、2020年に廃業を決意しました。人気の店として繁盛していましたが、20年の豪雨で受けた被害で休業。さらに新型コロナの感染拡大で客足が途絶えてしまったといいます。

牧之瀬幸夫さん

「後継者でもいたら変わってきたかもしれないが。われわれも高齢で、この際やめようかとなった」

その牧之瀬さんのもとを、町役場や地元金融機関などの職員が訪ねてきました。町の衰退を食い止めるために事業を残す手だてがないか、相談にやってきたのです。

町の企画調整課の竹原静史さんは危機感を募らせています。

竹原静史さん

「事業所数が少なくなることで町の活性化はどんどん失われていく」

民間のマッチングサイトを活用

人口減少が続く町では後継者がなかなか見つかりません。そこで町が連携したのが、事業継承のマッチングサイトを運営する民間企業でした。

まず町役場と商工会、金融機関が連携して、地元の情報を集めます。そして民間企業が運営するマッチングサイトに廃業を考えている事業者の情報を掲載し、後継者候補を全国から募る仕組みです。

このサイトを運営する企業「ライトライト」は、事業継承の情報を全国に発信することで、地域や世代を超えた新たなつながりが生まれやすくなるといいます。

齋藤隆太社長

「(経営者の)込めてきた思いとかPRできるのは非常に大きなメリット。新しい事業にしていただく」

全国からの応募 自治体からの問い合わせも

廃業を決めた牧之瀬さんのコイ料理店の情報もサイトに掲載されました。すると、これまでに27人の後継者候補が応募。事業継承に向け話し合いを重ねています。

その1人、静岡の20代の男性が牧之瀬さんのもとを訪れました。海外でブームとなっている観賞用のニシキゴイを店の跡地で養殖し、輸出できないかと考えているといいます。町の企画調整課の竹原さんも加わって、牧之瀬さんと話し合いを行いました。

町の竹原さんはこの取り組みについて「町の人たちのためになるのであれば一緒にやっていこう。町民一体となって一丸となって取り組んでいきたい」と話しています。

民間を巻き込んだこのプロジェクトでは、コイ料理店のほかに、サツマイモの加工品を作る会社からも掲載の問い合わせがあったということです。

また大崎町には同じ問題を抱える自治体から問い合わせが多数寄せられ、すでに動き出したところもあるそうです。

(鹿児島局 ディレクター 岡積奈津子)

【2022年2月17日放送】