初めての経営 Uターンで事業承継!

東京で会社勤めをしていた静岡県出身の女性が、故郷にUターンしてガラス雑貨店の事業を引き継ぎました。その挑戦から浮かび上がる事業承継のポイントとは?

不安もあった事業承継

静岡県の代表的な観光地のひとつ「浜名湖」。そのほとりにあるガラス雑貨店はアクセサリーや置物などをそろえ、週末には観光客や地元の人でにぎわっています。

経営者の袴田久美子さんは、事業承継を支援する公的機関を通じて3年前に事業を引き継ぎました。

東京都内でPR会社に勤めていた袴田さんは、商品の売り出し方などこれまでの経験が生かせると考えていましたが、初めての経営には不安もあったといいます。

袴田久美子さん

「売り上げを上げていく工夫をしなきゃいけない、経営には自信がなかった」

事業継続がポイント 商工会議所が支援

そこで頼ったのが地元の浜松商工会議所です。事業を軌道に乗せるための地域の重要な相談窓口になっています。

袴田さんが商工会議所に提出した事業計画書には「経営のビジョン」や「顧客のターゲット」が記されています。

商工会議所の担当者が真っ先に指摘したのは「需要がない商品を抱えていないか」や「集客アップの取り組みが適切か」といった課題の洗い出しでした。

浜松商工会議所 新海悟さん

「創業するだけであれば誰でもできてしまう。継続させることが大きなポイント」

袴田さんは約4000あった商品を半分ほどに減らし、コストの削減に乗り出しました。

さらに地元の人にもリピーターになってもらおうと「体験工房」というコンセプトを打ち出しました。

アクセサリーに手軽に文字を刻む機械や撮影スポットを設置して、集客を少しずつ安定させていきました。

「事業は地域と切っても切り離せない」

袴田さんは事業を始めるのになぜUターンしようと思ったのでしょうか?もともと東京で独立したいという思いがありましたが、経営者の話を聞くうちに「地域」と「事業」の結びつきを強く感じるようになったといいます。

袴田さん

「(オーナーは)自分の事業がいかに“地域に貢献するか”、“社会的な意義があるか”を熱く語る方が多く、事業は地域に切っても切り離せないという思いが強くなってきた」

袴田さんは幼いころ、浜名湖をよく訪れていたといいます。当時と比べて今は観光客が減り静かになりましたが、なんとか地元に貢献したいという気持ちが、この場所での事業を決意させたといいます。

日本一の生産量・ガーベラの商品化に挑む

袴田さんがいま進めているのが、浜松市が日本一の生産量を誇る花・ガーベラを活用した商品化です。

ドライフラワーにした置物を試作するなど、地域の特産物をアピールしていきたいと考えています。

地域のガーベラ生産者でつくる「浜松PCガーベラ」の山本素志さんは「浜松は日本一の(ガーベラ)産地だが、ガーベラを知ってもらうきっかけになれば」と話します。

袴田さん

「事業をするなら自分の思いのある土地だと、当たり前に思っている。事業に思いを乗せていこうと思ったら、地域に思いがあったほうがよけいに乗る」

袴田さんは2月に行われた事業承継のイベントで「事業にはリスクもあるが、自分の判断で挑戦できてやりがいがある」と話していました。

Uターンによる事業承継の例はほかにも、東京で航空・宇宙分野の生産に携わった男性が、地元の石川県に戻って部品メーカーを引き継ぐケースなども出ています。地域の活性化にもつながるUターン人材の事業承継、その可能性に注目です。

【2022年3月31日放送】