パキスタンでは2022年に大規模な洪水が起きて以降、経済の混乱が深刻になっていて、デフォルト=債務不履行の可能性も指摘されています。人々は急激な通貨安とインフレに見舞われ、暮らしが圧迫されています。
出稼ぎ希望者7割増の研修施設も
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パキスタンの首都イスラマバード近郊にある、職業訓練を行う施設。雨の中、国外へ出稼ぎに行くことを希望する多くの人が集まっていました。
訪れる人は連日300人を超え、その数は2022年より7割ほど増えているといいます。施設では建設作業などの研修が行われ、研修生の就職をあっせんしています。研修生の1人に話を聞くと「家族を置いて1人で海外に行くのはさみしいが、現状を変えるためには行くしかない」と話しました。
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施設の担当者 アウラングゼーブ・ダニアルさん
「このような経済状況では、出稼ぎ希望者はさらに増えるだろう。減ることはないと思う」
平均的収入でも…家計苦しく
パキスタンでは23年2月以降の物価上昇率が前年比30%を超え続け、市民の暮らしは苦しくなる一方です。
不動産会社で働くワシーム・アフマドさんは、月収が日本円で2万2000円ほどで、現地では平均的な収入の家庭です。しかし食料品の値上がりが家計を直撃しています。
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出費を抑えようと、子どもたちを私立の学校から公立に転校させました。
ワシーム・アフマドさん
「物価は日々上がるのに給料は上がらない。やっていくのがとても難しい。どうしようかと考えて夜も眠れない」
本業の合間にIT業務 “欠かせない収入源”に
経済の混乱が深まる中、ITを駆使して国外の仕事を得る働き方も人気を集めています。パキスタン中部のマンゴー農家のイクラ・メフムードさんは、肥料の価格などの高騰で農業だけでは生活が厳しくなっていました。
そこでイクラさんは22年から、インターネットを通じて欧米の企業から受注するウェブデザインの仕事を始めました。農作業や家事の合間に作業をしています。
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しかし、ネットがつながらないことも少なくありません。パキスタンの地方ではネットへの接続が不安定で、イクラさんは夫とともに通信状況のよい場所を探しながら業務にあたっています。
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この仕事は月収が多い時で700ドルになり、欠かせない収入源だといいます。
イクラ・メフムードさん
「前は思うようにものを買えなかったが今は買えるようになり、とてもうれしい。これからも続けていきたい」
通貨安でインフレ 日本と同じ構図
アメリカの利上げに伴い、世界のさまざまな国の通貨に対してドルが買われています。自国の通貨安でインフレに苦しむパキスタンの状況は、日本と同じ構図です。
パキスタンでは、インターネットを活用して働くフリーランスが300万人~400万人に上るという推計もあります。こうした働き方は現地で外貨獲得の手段として期待されていますが、苦しい暮らしの裏返しということも言えます。
(イスラマバード支局 松尾恵輔)
【2023年6月29日放送】
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