スリランカ非常事態 外貨がない!エネルギーがない! 

南アジアのスリランカは観光で年間4000億円以上を稼いでいました。しかしコロナ禍で外国人観光客が激減して外貨不足に陥った結果、エネルギーが輸入できなくなり、厳しい経済状況に追い込まれています。

「5日並んで燃料買えない」

スリランカ南部にあるレストランでは、人々が食事を楽しんでいるさなか、店の明かりが落ちました。店内に響く「オォ~、ノ~」という声。2月下旬から続く計画停電です。

計画停電は国内の大半の地域が対象で、場所によっては1日10時間以上も電気が止まります

レストラン経営者
「みんなイライラしている。来週の停電の予定さえ分からない」

スリランカではガソリンなども足りなくなり、給油所は車の列が途切れません。

スクールバス運転手
「5日間も並んでいるのにまだ燃料を買えない」

外国人観光客が激減 外貨不足深刻

背景にあるのが、石油を海外から買うために必要な外貨の不足です。観光産業が国の支えになっているスリランカ。コロナ禍が直撃し、外貨をもたらしてきた外国人観光客がピーク時の10分の1以下に落ち込みました。

外貨準備の残高が2021年の1年間でほぼ半分に減り、輸入がこれまでどおりにできなくなってしまったのです。

不足しているのは石油だけではありません。あるパンの販売店は、商品が入るはずの棚が空っぽでした。ガスの輸入が滞ってオーブンが動かせないため、休業を強いられているのです。

パン店オーナー
「非常に怒っている。ビジネスが崩壊してすべて失ってしまった」

「沈む船から抜け出す」 海外で仕事探す人も

混乱はエネルギー以外にも広がっています。特産の紅茶の産業にも影響を与え始めているのです。

家族で紅茶農園を経営しているアクシタさんは、茶葉の栽培に欠かせない肥料の値上がりに苦しんでいます。

財政悪化を背景に自国の通貨ルピーが下落したことなどで、輸入品の肥料の価格は1年前の約5倍になりました。

生産コストが大幅に増え、紅茶を作っても赤字の状態です。一部の畑では栽培をあきらめざるをえませんでした。

アクシタさんは家計を支えるため、中東で仕事を探すことにしています。

アクシタさん
「農園を続けても収入は得られない。沈む船に乗り続けることはできないので抜け出すしかない」

ロシアによるウクライナ侵攻でインフレが加速していることを背景に、スリランカの混乱はさらに深まっています。2022年4月1日には全土で非常事態宣言が出されました。

こうしたエネルギーや物価の問題は、程度の差こそあれ、私たちが暮らす日本をはじめ世界全体が直面する課題となってきています。
(アジア総局 記者 影圭太)
【2022年4月8日放送】