円安だけじゃない“アジア通貨安ショック” 相次ぐ値上げや日本への余波も

円安が進んでいますが、通貨安ショックは「円」だけにとどまりません。

アジアの通貨のドルに対する下落率(年初比)では、フィリピンの「ペソ」が約15%、タイの「バーツ」が約13%などと大きく値下がりしています。その影響は、意外な形で日本にも及んでいます。

ドル高バーツ安 両替所には行列が

タイの首都バンコクの両替所で、両替しようとする人たちが列を作っています。両替の需要が高まっている理由は、急速なドル高バーツ安です。

ドルをバーツに両替する需要が高まっている

いま高値のドルをバーツに両替すれば現地で使えるお金が増えるとして、次々と外国人観光客が両替しているのです。

外国人旅行客の一人は「ドルをいいレートで両替することができた。ハッピーです」と笑顔を見せました。

バーツ安はさまざまなモノの値上げにつながっています。タイ料理のある食堂は、創業以来初めて一律の値上げに踏み切りました。通貨安によって、調理用のガスの価格や豚肉の仕入れ価格が値上がりしているからです。

客の一人は「輸入されている商品は全部値上がりしている」と話します。

フィリピン乗り合いバス 通貨安の影響で3割値上げ

マニラ市街を走る乗り合いバス「ジプニー」

フィリピンでは、通貨安が、輸入に頼る燃料価格を押し上げています。首都マニラで通勤や通学の足として欠かせない乗り合いバス「ジプニー」は、2022年の初めには約22円だった初乗り運賃が、いまでは約29円と3割上昇しました。

バスを使っている学生の一人は「政府には燃料代を下げてほしい。私たち学生も苦しんでいる」と語っていました。

円安ドン高 技能実習生が「日本を避ける」動きも

一方、ベトナムの通貨「ドン」は、ドルに対する下落率(年初比)が約4%と比較的下落が抑えられています。

これに対し日本の「円」のドルに対する下落率は約25%。これは「円」が「ドン」に対しても値下がりしていることを意味します。

この円安ドン高が、ベトナムから日本に向かう技能実習生に影響を及ぼしています。ベトナムは日本での技能実習生を最も多く送り出している国です。

首都ハノイで職業訓練などを行う教育施設では、これまで約8割の人が日本を行き先にしていました。しかし今、日本が避けられ始めているといいます。

円がドンに対して2割ほど値下がりしており、日本で得た収入が実質的に目減りしてしまうためです。

ハノイの教育施設で職業訓練を行う人たち

行き先を日本から台湾に変更した人は「日本についても調べたが、円安が進んでいるため難しいと判断した」と話しました。

技能実習生を送り出す機関のブイ・スアン・クアン会長
「彼らは日本に行くかどうかとても迷っている。日本行きを希望する人は明らかに減っている」

アメリカの利上げをきっかけとした通貨安。影響がさまざまな形で出ていました。
(アジア総局 影圭太、マニラ支局 酒井紀之、ハノイ支局 鈴木康太)
【2022年10月13日放送】
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