“役員の女性比率30%”へ 日本企業に求められることは?

政府は「女性版骨太の方針」を掲げ、東証のプライム市場に上場する企業の役員について、2030年までに女性の比率を30%以上にすることを目指しています。いまピークを迎えている株主総会では、女性取締役を登用する動きが広がっています。

比率「30%以上」という目標に向けて、課題は何か、いま日本企業に何が求められるのか、安藤隆キャスターが解説します。

「数合わせ」でなく「働きやすい環境づくり」のきっかけに

「30%以上」という目標について、女性の活躍推進に詳しい、日本総研創発戦略センターの小島明子スペシャリストは次のように話し、前向きに受け止めています。

日本総研創発戦略センター 小島明子スペシャリスト
「責任あるポジションに女性が入ることによって、女性だけでなく、職場環境全体に、働きやすい環境づくりをしていこうという意識が広がっていくと考えるので、“数合わせ”という賛否両論あるかと思うが、高い目標を掲げることによって企業の取り組みをよりいっそう進めるきっかけになる」

“数合わせ”ではなく、どういう人が役員になり、どう会社を変えようとするのかが問われることになりそうです。

社内から女性取締役登用はまだ少数

いちばんの課題は、社内で女性幹部を育成し取締役に登用する企業がまだ少ないことです。

6月に株主総会を開く東証プライム上場企業で、これまで女性取締役が1人もいなかった企業は245社あり、その半分にあたる120社が女性取締役の登用を計画しています。

120社のうち114社は社外から弁護士や大学教授などを女性取締役として招くとしていますが、社会取締役を何社も掛け持ちする人も多く、なり手不足が課題です。

女性が一般職から管理職、経営幹部へとキャリアパスを描けるようにするには、社内からの取締役の起用が大事ですが、そうした企業は6社にとどまっています。

初登用の女性役員 「正当に評価され手を挙げやすくなった」

社内から女性取締役を起用した企業の一つ、東京・港区の金融サービス会社の「マネーパートナーズグループ」では、16日の株主総会で、梶川理恵取締役が女性の取締役として初めて選任されました。

梶川さんは大手証券会社を経て17年前に入社しました。当時は勤続年数の長い男性が要職を占めていたといいます。

梶川理恵取締役

金融サービス会社 梶川理恵取締役
「(入社)当時、当社にも女性役員はいなかった。すべて男性だった。私自身がそう(役員に)なるというのは本当に考えずに入社した」

この会社は2年前、業績の悪化を理由に、年齢や性別、勤続年数を問わない実力重視の登用へと大きくかじを切りました。

金融サービス会社 福島秀治社長
「能力があるのに埋もれてしまっている人が相当私は多いと思っている。そういう人に能力を発揮できる場だとか、時間だとかを提供できれば、結果的に私たちの成績も上がっていく」

年齢や性別、勤続年数を問わず登用

梶川さんは今回、営業部門の責任者としての実績が評価され、取締役になりました。

梶川取締役
「ちゃんとやったものは報われる、正当に評価してもらえるということがあって、手を挙げやすくなった。女性とか若手社員の積極的な活用とかを、私自身もっともっとやってみたい」

社内からの女性取締役を増やすには?

社内から女性取締役を登用する企業を増やすにはどうしたらいいのでしょうか。

日本総研の小島さんは、キャリア研修などの教育支援の充実、そして出産など働き方に制約があってもどんな責任のある仕事ができるのかを一緒に考えること、さらに、ライフイベントに合わせたキャリアのサポートをする仕組みが必要だとしています。

多様な考え方を経営判断に取り入れることが、企業の成長につながると指摘されています。企業には、女性幹部を育成する環境を整え、経営陣の構成を多様化していくことが求められてます。
(経済部 仲沢啓)
【2023年6月21日】
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