メキシコに進出する中国企業が急増

中国からメキシコへの投資額が近年、拡大していますメキシコに生産拠点をつくろうとする中国企業が増えているのです。背景には何があるのでしょうか。

家電や自動車部品 中国企業が急増する街

メキシコ北部にあるヌエボレオン州の州都、モンテレイ。アメリカとの国境に近いこの街の近郊で、工業団地の建設ラッシュが続いています。

中でも増えているのが、家電や自動車部品などを扱う中国企業の進出です。モンテレイ近郊に新たに進出した数は2022年は25件に達し、19年以降、急増しました。

建設中の中国企業の工場。製品はメキシコやアメリカに出荷される

背景に米中対立

中国企業がメキシコを目指す背景にあるのが、アメリカと中国の対立です。アメリカのトランプ前政権は18年以降、中国への制裁として関税の上乗せ措置を繰り返し発動し、中国も報復関税で応戦しました。

アメリカは、中国からの輸入の6割以上にあたる約3700億ドル分に最大25%の関税を上乗せし、バイデン政権でもこうした政策が引き継がれてきました。

中国からアメリカ市場への輸出が難しくなる中、中国企業が目を付けたのが、メキシコへの進出でした。

なぜメキシコなのでしょうか。メキシコはアメリカと貿易協定を結んでいます。そのメキシコに生産拠点を設け、部品の調達を北米地域内で一定程度賄うなどの条件を満たせば、アメリカに輸出する際の関税をゼロにすることができるのです。

メキシコの地元開発業者 ホセ・ルイス・ベニテスさん
「関税が進出の大きな動機となり、中国で作られたものがメキシコ製になっている。中国企業は成長する重要な場所としてメキシコを見ている」

地元は歓迎 「多くの利益もたらす」

こうした動きをメキシコも歓迎しています。地域の雇用や税収の増加につながるとして、中国企業の最新の動きなどを紹介する開発業者向けの説明会が開かれました。

さらに地元政府はアメリカへの輸出を後押しするため、アメリカ国境への高速道路の整備を進めています。

ヌエボレオン州 地域開発担当 マルコ・ゴンザレス長官
「中国企業は多くの利益をもたらすだろう。この地域の競争力は高まっていくし、魅力を感じて移住してくる人も増えていくだろう」

市場調査会社 マルコス・アルバレスCEO
「この地域への中国企業の進出はこれからも増えて、2025年には新規進出の3分の1を占めるだろう」

日本企業に影響も?

こうした動きをアメリカ政府はどうみているのでしょうか。中国企業に対して特に手は打っていませんアメリカ企業の中には、中国企業が供給する安い部品を当てにしているところもあり、政府の思惑とは別に、中国企業の部品を調達できることを歓迎するところもあります。

今回取材したメキシコのヌエボレオン州は、日本企業もメキシコ向けの生産拠点として進出してきましたが、今後そのシェアを奪われることになるかもしれないという指摘も出ています。
(ワシントン支局 班目幸司)
【2023年6月9日放送】
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