一升瓶が足りない!日本酒の出荷がピンチ!瓶不足をどうしのぐ?業界の策は…

日本酒に使う「一升瓶」が今、全国的に不足しています。販売に深刻な影響が出ていて、酒造メーカーが苦肉の策でしのいでいます。

なぜ不足? 要因にコロナ禍

酒造りが盛んな秋田県横手市。この時期、飲みごろの日本酒を出荷するはずですが、日本酒を詰める瓶が足りず、酒蔵の「日の丸醸造」では一部で出荷を見合わせていました。

出荷を待つタンク内の日本酒。瓶詰めしたいが…

横手市の酒蔵 佐藤公治 社長
「このへんのタンクは本来だと、もう瓶詰めにしたいが、こういう状況なので待っているお酒になる」

なぜ瓶が不足しているのでしょうか?日本酒はもともと消費量が減っていましたが、コロナ禍で飲食店が打撃を受け、瓶の需要が激減したことが大きな要因になっています。

一升瓶全体の生産の4割ほどを占めていたメーカーが製造をやめ、瓶の回収業者が相次いで廃業に追い込まれたことも追い打ちをかけました。

「何倍以上の手間」でも…“苦肉の策”に出た酒蔵

この酒蔵は、瓶を確保するために苦肉の策に出ました。販売用に冷蔵庫にストックしていた日本酒の瓶を取り出し、中の酒をいったん保存用のタンクに戻します。空いた瓶に、季節に合わせて今出荷したい日本酒を詰めることにしたのです。

ストックしていた瓶のふたを開け…
「空け替え」という形で中の日本酒をタンクに戻し始めた

中身をタンクに戻した瓶は専用の機器で煮沸消毒し、酒も素早く作業を行うことで品質に影響が出ないように管理しているということです。

 

佐藤社長
「ふたを開けて、中身を出して、ラベルをはがして、『洗瓶機』で洗って、瓶詰め場に移動してからまた洗ってから瓶詰めということで、ふだんの何倍以上も手間がかかってしまう」

手間をかけて作業を行っても、取材した日に用意できた空き瓶は約2000本で、出荷したい量にはまだまだ足りません。

このまま業者から一升瓶の納入がなければ、7月には約1万6000本の瓶が不足する計算です。

この酒蔵では7月に約1万6000本の瓶が不足?

佐藤社長
「この数年間、業界の皆さん苦しんだと思う。『ようやく動き出したぞ』となったところで今度は『瓶がないぞ』というのは、正直、違う方向からダメージを受けている。本当に不安はいっぱい」

特典で空き瓶を回収する酒蔵も

特典を付けることで瓶の回収を進めようとしている酒蔵もあります。秋田県男鹿市の酒蔵「稲とアガベ」は4月から、この酒蔵の酒の空き瓶を持ってきた客に対し、10%の割引を行う取り組みを始めました。

特典を付けて空き瓶回収を呼びかける投稿

男鹿市の酒蔵 岡住修兵 社長
「ただ単に『瓶を無料で回収しますよ』というだけだと、ちょっとハードルがあるかなと。(瓶不足に)対応できるほど回収できるとは今のところ思っていないけど、みんながちょうどよく、いいあんばいで、いい方向に向かっていければ」

瓶の生産を増やしているメーカーもありますが、業界では元の状態に戻るには2年から3年かかると言われています。コロナ禍で大きなアンバランスが生じていて、早い解消が待たれます。
(秋田局 丹治亮介)
【2023年6月7日放送】
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