インバウンドを呼び込め!酒造り体験型ツアー

日本を訪れる外国人観光客が新型コロナ感染拡大前の6割近い水準にのぼるなど、海外から日本を訪れる旅行客の回復が期待されています。

海外からの観光客に、日本ならではの体験をしてもらうツアーを開発して、インバウンド客を呼び込もうという動きが生まれています。

酒蔵に泊まり酒造りを体験

東京から新幹線で1時間余りの長野県佐久市で新たに行われているのは、本格的な日本酒造りを2泊3日で体験できるツアーです。取材した日は、フィリピンやブラジル、香港などからの外国人観光客がこのツアーに参加しました。

杜氏に酒造りを教えてもらうツアー客たち

観光客には杜氏がつきっきりで酒造りを教えてくれます。出来上がった酒は後日、ツアー参加者に配送され、商品としても販売されます。

宿泊するのも酒蔵です。地元で300年以上の歴史がある酒蔵の一部を改装し、宿泊施設にしました。滞在中は、さまざまな種類の地酒を飲み比べすることもできます。

酒蔵の一部を改装した客室
さまざまな地酒の飲み比べも

“その土地でしかできない体験”を提供

このツアーを始めたのは、地元の「KURABITO STAY」の社長、田澤麻里香さんです。田澤さんは大手旅行会社に勤めていた経験から、地域を観光で盛り上げたいと考えました。

田澤麻里香社長

その地域でしか体験できない独自のツアーを提供することで、インバウンド客を呼び込むことができると考えたといいます。

酒造りツアーを行っている会社 田澤麻里香 社長
「“キラーコンテンツ”を作って、本当にいいものを、付加価値を上げて、ビジネスとして持続可能な地域のツーリズムをつくれるのではないか」

食事は朝のみ 昼・夕食は地域で

田澤さんは、シャッターを閉じる店が目立つようになった地域全体の活性化を目指しています。そのため宿で提供する食事は朝食だけです。

宿で提供する朝食

昼食と夕食は、ツアー客に英語が書かれた飲食店の地図を渡して食事に出かけてもらいます。地元の人との交流も楽しんでもらうねらいです。

取材した日、ツアー客は地元の和食店に向かいました。この店では外国人をもてなすため、ビーガン(完全菜食主義者)などにも対応した新メニューの開発に取り組んでいるそうです。店主は「海外の方がいらして新しい風が吹けばいい」と話しました。

地元の和食店で夕食を楽しむツアー客

ツアーの最終日には、参加者に酒造りの修了証が手渡されます。フィリピンからの観光客の一人は「とても充実していた。とても価値のある体験だ。忘れられない体験の一つになった」と話しました。

酒造りツアーを行っている会社 田澤社長
「宿泊ができて、地域への滞在が延びる。体験ができることで地域への愛着が湧いて、『誰かに紹介しよう』とか『また来たい』という気持ちを高めさせることができる」

全国から視察も

こうしたツアーは、観光庁が実施している、インバウンドの回復をねらったプロジェクトで支援事業に選ばれ、全国から視察に来ることもよくあるそうです。

外国人から見れば観光ですが、日本人から見ると、各地に根づく伝統や産業や文化を外国人に楽しんでもらうことで価値を再発見し、後世に残していく取り組みでもあると思います。
(国際放送局 服部真子)
【2023年4月6日放送】
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