世界遺産の「熊野古道」。和歌山県を通る「中辺路(なかへち)ルート」では、コロナ禍による観光客の激減で、この3年間で22の宿が閉鎖となりました。観光客が戻りつつある今、宿不足を解消するため無人の宿泊施設が登場しました。ビジネスモデルの成功例となるでしょうか。
古道沿いに無人宿 チェックイン手続きはタブレットで
総距離が70キロメートル以上ある熊野古道・中辺路ルート。そこに登場した無人の宿は、フロントも無人、管理室も無人で、常駐スタッフがいません。
宿泊客は事前にカードで決済を済ませます。宿に到着すると、入り口にある「小屋」の中に置かれたタブレット上でQRコードによる本人確認を行い、入室するための暗証番号を入手して、チェックインします。
フロント対応はカンボジアから
入り口の「小屋」に入ってみると、中にあるタブレットにフロントの担当者が現れ、「はい、チェックインでしょうか」と応対してくれました。
フロントの担当者が対応している場所は、実はカンボジアのプノンペンです。宿を運営する大阪のベンチャー企業「日本ユニスト」が、外国人観光客への対応や人件費を抑えるために、カンボジアの会社にフロント業務を委託しているのです。
また宿の建物を新しく建てるのではなく、古道沿いの空き家を購入してリノベーションすることで、コストをさらに削減することもできました。
ベンチャー企業 大﨑庸平 事業部長
「ひと工夫、ふた工夫を凝らせば、人が24時間いなくても、お客様に喜んでもらえる確信を持っている」
サウナも登場 「成功モデルつくりたい」
無人宿には、家族づれや若者のグループも来るようになりました。
人気なのが、自分たちで行う準備です。宿泊客の女性は「自分たちでやるからハプニングもあったり、失敗のほうが思い出に残るので楽しい」と話します。
1月には新たにサウナも登場しました。宿泊客はまき割りから始めます。
宿泊客の男性は「ワクワク感が段違い。火をおこすところからやって」と話します。
ベンチャー企業 大﨑 事業部長
「この地域で、無人運営でも宿をやっていけるという成功モデルをつくったうえで、オープンソース(無償)で公開して、日本の地方を盛り上げていきたい」
この無人の宿で何か困りごとがあった場合はどうするのでしょうか。食材の調達や掃除は、会社が地元の住民にアルバイトとしてお願いしていて、困りごとの対応にもあたってくれるそうです。観光地を地域全体で盛り上げていく一つのモデルになるかもしれません。
(和歌山局 押尾駿吾)
【2023年1月25日放送】
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