旅行×お手伝いで宿泊費が無料に 地方の人手不足解消や観光活性化も

費用をかけずに思い出に残る旅をしたい人たちと、人手不足の解消や魅力発信につなげたい地方のニーズを橋渡しするサービスが注目されています。

旅程の一部でアルバイト

神戸市から電車で約1時間。自然豊かな人口約7万5000人の兵庫県三木市に10月、2人の若者がやってきました。

2人は8日間滞在し、そのうち4日間、地元の「ながしお農場」でアルバイトをして、農作業を手伝いながら土地の人たちと交流します。

佐賀県に住む大学4年生の品川真衣花さんは、枝豆の選別を担当。「もうちょっとテキパキできるようになりたい」と意気込みます。

品川真衣花さん

そして広島県に住む大学3年生の藤原彩花さんは、イチゴに肥料を与えます。「結構楽しいです」と話す藤原さんに、農場の人は「飲み込みも早いし、すごくいい」と笑顔を見せました。

藤原彩花さん

受け入れ先の人手不足を解消 宿代はタダに

農場ではこの時期、収穫などの農作業に人手が足りていませんでした。

ながしお農場 永塩有 代表取締役
「繁忙期においてはプラス5名くらいは必要になってきて、都合よく来てくれる人なんてなかなかいない。地域の魅力を発信していただけるような、相乗効果みたいなところも期待できる」

この旅では、交通費は自費ですが、農場の経営者の自宅で空き部屋に泊まるため、宿泊代はかかりません

自由時間には、馬と触れ合える地元の公園「三木ホースランドパーク」や、名所の「黒滝」など、地域のおすすめスポットで観光を楽しみます。

「どこ、そこ?」の地域に人が訪れる仕組みを

新しい旅を仕掛けたのは、東京・渋谷区のベンチャー企業「おてつたび」です。人手が足りない地方と、働きながら旅をしたい人を仲介しようと4年前に立ち上げました。

これまでに2万7000人以上が利用し、受け入れ先は農家や旅館など全国850以上に上ります。

代表を務める永岡里菜さん(32)は、三重県南部の尾鷲市で生まれました。千葉県の大学に進学した際、周囲の友人は尾鷲のことをほとんど知らなかったといいます。この経験から、特別有名な観光地でなくても人が訪れる仕組みが作れないかと考えたそうです。

代表を務める永岡里菜さん

ベンチャー企業 永岡里菜 代表取締役
「『どこ、そこ?』と言われてしまう地域にも、お手伝いという新しい目的をつくることによって人が当たり前のように訪れて、その地域を好きになって帰ってもらえる世界。そういう仕組みをつくりたい」

人と地域、人と人を旅で結ぶ

兵庫県三木市にやってきた2人は、農場の人たちとバーベキューを楽しむなどすっかり溶け込んだ様子です。食事では自分たちが選別した枝豆もいただきました。

佐賀県の大学4年生 品川さん
「三木市という場所すら知らなかったのに、いろんな人と出会うことができたので、すごく充実した1週間だった」

広島県の大学3年生 藤原さん
「『この人に会いたいから』というので訪れることもできると思う。一度関わった人と、また深い関係が築けたらいい」

この仕組みと似たようなサービスはほかの企業でも行われています。取材したサービスは、20代に加えて、子育てが一段落した人や定年退職した人など、幅広い年代の人たちが利用しているということです。従来の旅では得られない「プラス」を求めて今後も参加する人が増えていくかもしれません。
【2022年11月4日放送】
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